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    はねみな

    ( ╮╯╭)<ほどよく

    ☆quiet follow
    POIPOI 51

    はねみな

    ☆quiet follow

    🐉🔥
    だらだら_(:3ゝ∠)_

    チャンスだったのに 好きで、すごく好きで。気持ちと視線があの人の方ばかり向いてしまう。気づかれるかな。気づいてるかもしれない。気づいてくれたらいいなと思う。
     ――どうかしたかい?
     そう、そんないつもの声で、いつもの優しい視線で聞いてくれたら、
     ――うん、カブさんのこと見てた。
     いつもより甘い声で言えるかもしれない。
     ――ずっと、カブさんのこと見てた。
     いつもより真っ直ぐな目で見つめることができるかもしれない。
     なんて、他人任せな都合のいい妄想をだらだらと繰り広げていたら、いつの間にか控え室に集まっていたメンバーはぱらぱらと散り始め、都合よくオレとカブさんが残された。
    「お疲れさま」
     ロッカーを閉め、バッグを肩に掛けたカブさんが声を掛けてくる。慌てて同じ言葉を返し、ドアを開けて出て行く背中を見送り、
    「まあ、そうだよな」
     そう都合よくいかない現実にため息を吐く。
     見てるだけじゃダメだし、妄想するだけなんて不毛だ。待ってても何も始まらない。
     それはわかってるんだけど。
    「なんかきっかけとかあればなあ」
     どこまでも他力本願な自分に、またため息が出る。オレってこんな臆病だったっけ。否、慎重と言ってくれ。だって嫌われたり、嫌な顔をされたり、フラれたりしたら、しばらく使い物にならなくなるのは確実だ。積み重ねてきた年月分、ダメージもきっと大きい。
     気づいてくれないかな。それで、ちょっとでもオレのこと、気にしてくれないかな。
    「はー、つら」
     ロッカーの中にため息とぼやきを放り込んでいると、
    「大丈夫かい?」
     聞こえるはずのない声がして、反射的に顔と身体を向けた先、
    「か、かぶさ」
     帰ったはずのその人がドアの前に立っていた。
    「なんだか疲れてるみたいだったから、心配で」
     小走りに近づいてきたカブさんが、手を伸ばしてオレの額に触れてくる。
     ひえ。
     なに?
     これ夢?
     現実?
    「熱はないみたいだね、頭痛は? 吐き気とかは?」
     ぶんぶんと頭を横に振る。よかった、とカブさんは本当に安心したように肩を落とす。
    「キバナくんが頑張り屋なのは知っているけど、あまり無理をしないようにね」
     え。
     そうなの?
     オレって頑張り屋なんだろうか。
     きょとんとしながら低いところから見上げている目を見つめると、
    「頑張ってるよ、とっても」
     カブさんは笑顔を浮かべながら、また手を伸ばして、今度は頭を撫でてくれた。
    「じゃあ、本当にお疲れさま。変なこと言ってごめんよ」
     軽く頭を下げ、カブさんは背を向ける。頭にはまだ撫でてもらった感触が残っていて、オレはぼーっとしてしまって動けない。
     そのまま何もできず、何も言えないまま、ただ背中を見送って、ドアは閉まった。
     閉まってしまった。



    「オレさまのバカーーー!!!」
     控え室に叫び声が響いたのは、たっぷり数分が経ってから。
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