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    Okoze

    @jkanaemill

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    Okoze

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    私が考えるに最高の死神は4たろ。
    その姿で現れて☆いんを攫って行って☆
    という欲望のままに書きました。そのまんまです。

    ※徹頭徹尾 承花です。

    死神視界の端に真っ白な何かが翻った。

    下校途中に踏み入ったのはいつもの隠れ場所。
    市営の美術館と隣接した公園はもともと武家屋敷だったらしく古くて大きな木立に囲まれていた。
    その片隅にある常緑樹の小さな茂みに、屋敷の台座だったろう積み石がしてある。
    生い茂った庭の草木は手入れされ刈り取られてもすぐに邸跡を覆い隠してしまうので、僕にとっては都合が良かった。
    そっと潜んで身を隠す。
    詰めていた息をゆっくり吐き出すとようやくまともに呼吸できるような心地がした。
    くるりと翠色の帯が体を巻いてくる。
    僕にしか見えない大事な友だち。

     ここなら大丈夫

    誰にも見えないのに隠れているのもおかしなことなのかな…
    でもこうしないとダメなんだ。
    隠さなくっちゃ。
    誰にもわからないように。

    お腹の奥に黒く染みるような重さを感じる。
    季節の変わり目になると度々やってくる例の痛み。
    原因不明。
    お医者さんに処方された頓服薬は胃薬だかなんだかわからない謎の白い粉で、母さんを安心させるためだけに飲んでいた。
    全然効かないのに。

    梅雨明け間際のじっとりとした空気の中、気を逸らすために図書室から借りてきた重たい図鑑を開く。紙の匂いがして胸がスッとした。
    色鮮やかな異国の海の生物たち。
    深海の太古の面差しを残す動物とも植物ともいえないような絵図を追っていく。
    「うみ…ゆり」
    「それが好きなのか」
    突然かけられた声はひどく低く響いて、びくりとして振り返るも誰もいない。ふと目の端に蒼く大きな影がよぎったように思ったが一瞬で消えてしまった。
    消えてしまった?
    いつも見つからないようにして伸ばしている翠色の友だちも気が付かなかったのに。そんなこと今まで無かった。
    人ではない何か。
    図鑑を閉じてぎゅっと抱えなおす。お腹の奥の痛みが戻ってきて身をかがめてやり過ごす。

    僕。ずっとこんななのかな。

    ぐーっと増した鈍痛を宥めるように翠色の帯が体に巻きついていく。僕を隠す翠色の小さな繭。
    視界を遮るみどりの隙間にひらりと白いものが翻った。

    こんな鈍い痛みはいらない。
    もういっそのことどこかへ連れ去ってほしい。

    たとえば
    死神とか

    「苦しいのか」
    さっき聞いたのと同じ声。どこかいたわるような優しい響きに だいじょうぶです 小さく返事する。
    狭い視界に何か大きなものが近づいてくる。ふと翠色の友だちの帯を解いていく蒼い指が見えた。その先に白くて大きくて綺麗な人が立っている。

    見つかってしまった

    頭の片隅に浮かんだのはそんな言葉で、裏づけするかのように大きな人の手が伸びてくる。見上げると驚くほどに整った目鼻立ちと濃い翠色の瞳がじっと覗き込んできて息がつまった。ひどく優しい手つきで頭から首のあたりを撫でられて、その掌の温かさにほっとする。いつもなら払いのけるのに…おかしいな。やっぱり人じゃないのかも。離れていく温度が寂しくて眉間に皺が寄る。次の瞬間。体が宙に浮いた。手にしていた図鑑が滑り落ちる。
    あ。と一声つく間も無く太く大きな腕に抱きかかえられていることに気がついた時には先ほどの掌の温かさよりずっと近くに分厚い胸があって、びっくりした。
    僕の不満を感じ取ったのかどうかはわからないけれど、ぎゅっと抱きしめてくる腕の力強さは求めていたものでーーーーそんな自分を認めって苛立ちが募る。
    「あの…」
    離してください。そう言おうとして体を離そうとするのにびくともしない。
    「体が冷えているな」
    責めるように言われて余計なことを!きっと見返すと抱きかかえたのとは別の腕が頭を撫でてきた。ふりほどけない。
    白いコートと同じ色の帽子の下、綺麗な顔立ちがじっと見つめてくる。無表情なのに何故か心配されているのが分かってしまった。
    不思議だ。
    何だか気が抜けて身を任せる。いつもなら攻撃的になるはずの友だちもさっきから身を潜めたままで、僕の左手の辺りに翠色の糸だけが巻き付いている。
    敵では無いんだな。そう思った。

    大人しくしていると大きな体がゆらりと向きを変えて歩き出す。
    背中越しに見えたのは僕の荷物をまとめて抱え上げた蒼い巨人で、丁寧に図鑑を鞄に戻すと手渡してきた。
    「あ ありがとう」
    僕を片手に抱いたまま歩みを進めるその人の白いコートの裾がふわりと揺れる。さっきの蒼い巨人は僕の友だちと同じものなんだろうな。

    それなら仕方ない。
    見つかってしまったもの。

    さっき手渡された鞄がずり落ちそうになるのを抱え直して、腹の奥に燻っていた鈍痛が消えているのに気がついた。




    死神ってこんなに綺麗で大きくて…
    優しいんだな。

    すりと温かな首元に寄りかかって、僕は瞳を閉じた。
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