金色の鬼「ひっ」
私は見てしまったのだ。暗闇に光る黄金の目をした鬼を。
もうすぐ望舒旅館が見えてくると思ったあたりで、怪しげな気を纏ったヒルチャールに襲われた。走って逃げるも石に躓き派手に転んでしまった。振り上げられる斧にもう駄目だと目を閉じたのだが、そこで突如突風が吹き荒れた。数秒経っても襲いかかる痛みがなく、私は恐る恐る目を開けた。すると、ヒルチャールを一撃で倒したであろう角の生えた鬼が、こちらを向いていたのだ。鬼は面を付けていて、その下の顔はわからなかった。しかし、一目見ただけで恐ろしい強さを持つ鬼だと言うことはわかった。
鬼はじっとこちらを見ていたが、しばらくすると顔につけていた面が消え、鬼の顔が一瞬だけ見えた。それまで翡翠色に光っていたと思っていた鬼の目は、黄金の色に変わっていたのだ。鬼に睨まれ今度こそ死を覚悟したのだが、恐怖の方が勝り、私は気を失ってしまっていた。
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