15 アル空と鍾魈「無相の氷、削りに削ったら大量のかき氷ができたりしないかな……」
稲妻にて、素材集めのため無相の炎をかれこれ十回連続で討伐していた空がぼやくと、パーティに組まれていた魈、鍾離、アルベドが各々反応を示した。
「氷とはいえ食べるようなものでもあるまい? ……そのようなことを考えるとは、疲れ過ぎているのではないか?」
魈は若干の心配をみせつつ嘆息して、
「そうかもしれないな。戦闘も続いたし、少し休むといいだろう。それにしても面白い発想だな……コアとそのまわりを覆う氷とで味の変化はあるのだろうか?」
鍾離は考察を始め、
「中心の方がエネルギーは凝縮されているだろうし、変化はあるかもしれないね。どちらも削るとして、あれだけの大きさがあればかき氷はたくさん作れるだろうけど……配るにしても、同じだけシロップも必要だね」
アルベドは食べる前提で返事をする。
「そっか〜シロップもいるよね。俺、イチゴ味がいいなあ」
疲労で地面に座り込む空に、アルベドは水を差し出す。魈は周辺に魔物や武士がいないか見張り、鍾離は魈とは反対側で同じく辺りに注意を向けつつ会話に参加していた。
「俺は食べるなら抹茶味に興味がある。稲妻には白玉やあんこをのせたかき氷もあると聞いたし、ぜひ食べてみたいところだ」
「ああ、それはとっても美味しいよ! 先生なら気に入る思うな」
アルベドから受け取った水を飲み喉を潤したところで、空の声がぱっと華やいだ。一度綾華やトーマに案内された甘味屋で食べたことを思い出して、俺もまた食べたいもんと頬を緩める。
「……かき氷など、雪を固めて食べるのとそう変わらない気がするが」
「それはだいぶ違うからね……? うーん、魈はほうじ茶味とかいいかも。先生と一緒の抹茶も捨てがたいけど」
「ならば抹茶だな。鍾離様と同じで問題ない」
「ああ、はい……」
言い切る魈に生ぬるい視線を向けたあと、空はアルベドを見上げて首を傾げた。
「アルベドは何がいい?」
「ボクは君と食べるならどんな味でも構わない。イチゴでもメロンでも、何を選んでもきっと美味しいと思うから」
空から水の入ったボトルを引き取ったアルベドは、自らもボトルに口付けて喉を潤す。とても自然な流れでとんでもないことを言われた気がして、空が硬直していると、話を聞いていた魈と鍾離は目配せをする。
「……無相の炎がそろそろ復活します。近づけばあれも溶けるでしょうか」
「力技だな……そんなことせずとも、そのうち発熱が始まって、勝手に溶けていくさ」
とりあえず俺たちは待っていようと鍾離に言われ、魈は素直に頷き再び周囲に目を向けた。
背後では空の名前を呼び続けるアルベドと、ほんとそういうとこずるい!、と喚きはじめる空の声が響いていた。