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    ここのか

    @d9_bond

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    ここのか

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    猫の日ねた了遊(付き合ってない)。
    猫かわいい、な遊作と、遊作かわいい、で様子がおかしい了見。
    オチなんて飾りですよ

    猫の日了遊 了見がいつもの広場のカフェナギを訪れると、カウンターには草薙だけで遊作の姿がなかった。
     今日はシフトのはずだがと思いつつもひとまず注文しようと声をかけると、草薙は愛想よく笑って今はあっちなんだと裏を指した。目当てがばれている。いやもちろんこの店の絶品ホットドッグだって目的ではあるのだが。
     ともあれ言われるがまま裏へ回ると、バンの上り口にかけてひどく嬉しそうな顔の遊作がいた。

     ご機嫌の理由は単純明快で、遊作は猫を膝に抱いていた。
     グレーがかった縞模様で腹と足先だけ白い。真っ赤な首輪をつけていて、優しく撫でられ遊作の膝上を占領しすっかりくつろいでいる。
    「見てくれ、了見」
     挨拶もそこそこに、可愛いだろう、と見たこともないようなふにゃりとした笑みを浮かべて言う。
    「……そうだな」
     確かに可愛らしい猫だった。ぴんと立った三角の耳に大きな淡い青色の目、ピンクの鼻先。縞模様はくっきりと美しく、白い足先が靴下のようでピンクの肉球が絵に描いたように可愛らしい。長い尻尾はカギになっていて先だけ色が濃く、それがまた可愛らしい。
     だが可愛いのはお前もだ、いやお前がナンバーワンだ。了見は真顔のまま心中で呟いた。
     大きな翡翠の目を細め、相好を崩してうっとりとその白い指先でもふもふふかふかを堪能しているその様は、普段の冷徹そうな佇まいがみじんもない。背後に花が咲いているのまで見える(幻覚)、そのギャップがストレートに可愛い。猫が好きだったのか知らなかったがいい情報を手に入れた、猫カフェで釣れるに違いない絶対連れて行こう。可愛いと可愛いの相乗効果は最高だ。あれこれ考えながらも了見は真顔を保つのに尽力した。いきなりそんなことを言ってしまえば、猫にめろめろの遊作だって我に返るだろう。
    「その猫は?」
     世間話で落ち着こうとあたりさわりのない質問をする。
    「迷子だったんだが、さっき飼い主と連絡がとれて今は迎え待ちだ」
    「なるほど」
     店に入れるわけにもいかないが、放っておいてまた迷子になっても困る。幸い客足も今の時間はさほどでもないからと、遊作が面倒を見ていたということだった。
    「なあ了見、おまえ猫は嫌いか?」
    「愛らしく思っている」
    「そうか……?」
     遊作は困ったように眉を下げて膝の上の猫を見た。猫はあごを撫でる指先に目を細め、ぐるぐると喉を鳴らしている。対照的に了見は言葉と裏腹になんでか非常に厳しい目をして見えた。猫が駄目な人がいるのは分かるので、そうといってくれれば移動するなりするつもりではいた。だがそう思って尋ねても了見は首を振る。
     少し考えてから、遊作は機嫌のよい猫を了見に向けそっと抱え上げた。

    「それなら、そんな難しい顔をしないで笑ってほしい……にゃ?」

     腹話術のまねをして、そっと猫の後ろから了見を見る。
    「にゃー……」
    「…………………………」
     了見は真顔のまま心中で叫んでいた。
     にゃー、とは。
     藤木遊作が、にゃー。ちょっと作った声が、浮かべた恥じらいが、こちらを窺う目が、すべてが可愛いんだがなんだというのか。可愛いんだが??? なぜ自分は録画機器をここに持ってきていないのか。いや大丈夫だ問題ない一生記憶しておこう何なら今日という日を記念日にして毎年祝ってやる。
    (しかもなぜ、自分で言い出しておいて照れている)
     抱っこが気に入らなかったのか、猫は身をよじり遊作の膝に戻っている。器用に膝上で香箱座りをしようとする猫を落ちないように支えつつ、遊作は了見にやや咎めるような目を向けてきた。頬と耳を赤くして。
    「な……なんとか言ったらどうなんだ」
    「ああ、そうだな。その猫へ功労賞としてちゅーる一年分を贈呈しようと思う」
    「何の功労だ」
    「可愛らしいからに決まっている。撫でていいだろうか」
    「猫が嫌がらなければ撫でるのは大丈夫だと思うが──まて、なんで俺を撫でる」
    「間違えた」
    「間違えた……?」
     そんなこんなでかみ合わなくなっていく会話は結局、猫の飼い主がやってくるまで続いたのだった。


     後日、保護の礼に店を訪れた猫の飼い主から「応募した覚えのない懸賞の品が猫あてに山ほど届いた」という話を聞いて、遊作はちょっと遠い目になったりしたのだが──それはまた別の話だ。

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