呼ばれた気がして、遊作は空に視線を彷徨わせた。
見回したところであるのは白く塗りつぶされた天井と壁、はめ込みの窓と開かないドア。
「遊作?」
今度ははっきり呼ばれて振り返る。尊が物憂げにじっと見ていた。
「また、誰が呼んでるの」
遊作は首を振った。
気のせいだ、と付け加えてもその表情は曇ったままだ。尊は不安なのだ。
「大丈夫。ぼくは尊をおいていったりしない」
「……うん」
呆れるほど繰り返したやり取りをまた繰り返して、手を差し出す。
「仁を待たせてる。そろそろ始めよう」
「そうだね」
差し出された手を握り、尊はようやくいくらか表情を和らげた。
*
遊作と尊、仁の三人は長いこと小さな部屋に閉じこめられていた。
三人とも面識はなかった。ある日突然連れてこられた。
何かの研究施設のようだが詳細は分からない。閉じこめられている自分たちがここのモルモットであることだけが確かだった。
部屋は長方形で、白い壁。濃い色の毛足の短いカーペットが敷かれている。
壁と同じく真っ白に塗られたドアがひとつ、当然開かない。古びた真鍮のノブは回るが押しても叩いても動かない。耳を澄ませても何か聞けたこともない。
跳ね上げ式の窓がひとつ、もちろん開かない。覗いたところで外側にレースのカーテンが掛かっていて、昼夜しか分からない。荒天であったことがないので向こうは外ではないかもしれない。
他にあるのは木製のテーブルと三つのイス、壁沿いに置かれた丸い座面の小さな木のスツール。三人の子供が寝られるほどの白いシーツのベッド。
朝になれば、朝食と午前の課題が部屋の隅のスペースに用意されている。
それを片づけ昼になると、昼食と午後の課題が用意されている。
それを片づけ夜になると、夕食と夜の課題が用意されている。
それを片づけ眠りにつき、朝になればまた朝食と課題が用意されている。
ずっとそれの繰り返しだ。
課題は様々だ。「伏せたカードの模様を当てる」「スプーンを曲げる」「手を触れずにものを動かす」「その場からものを消す」、似たような物が少しずつ中身を代えて出される。三人に同じ物であったり、まったく別の物を与えられる。
だれか人が来る、ということはない。だがモニターはしているようで、時間内に終わらなかったり規定の回数こなせないと食事や睡眠時間が削られるペナルティが課せられる。だから三人は肩を寄せ合い懸命に課題をこなす。
ここに連れてこられてからどれだけの時間が過ぎたのか、いつ終わるのか確かめるすべはない。
*
仁は、壁に背を預けぺたりと床に座っていた。いくらか顎を上げ、どこか遠くの何かを見ている。
「仁」
呼べば、こちらを見る。
手招けばゆっくり立ち上がり、こちらへ来る。
「座って。始めよう」
尊が言って、イスに座らせる。
仁は話さない。自発行動しない。
ここに放り込まれた当初はこんな事はなかった。普通に名乗り、混乱して泣いている遊作を慰めてくれさえした。
色々な話をしたし、脱出しようとできる限りのことを一緒に試したりもした。過去や未来の話もした。大好きなお兄さんがいて、きっと探しているから帰らなければと言っていた。
もうかなり前の事だ。
ある日の課題で、事故があった。実際何が起きたのかは説明する人間がいないので遊作も尊も正確なところは分かっていない。
ただ普段と違うことが起きて──それから遊作も尊も、仁の声を聞いていない。
並んだ12枚のカードを一瞥して、仁は迷い無く三枚めくる。返したカードには全て五芒星が描かれている。
「仁は透視が得意だよね」
尊が二枚、めくる。返したカードは両方四角形。少し迷ってめくった三枚目は丸だった。
「三枚同時はまだ難しいな」
ぼやいて、尊はカードを戻して混ぜ直す。
「次、遊作ね」
差し出されたカードの束を並べ直す。
来た当初は4枚のうちから一枚当てる、という作業だった。そのころに比べれはずっと複雑なことができるようになっている。
カードをめくりながら遊作は考える。
ここに自分たちを閉じこめている観察者たちは、一体何を期待しているのだろう。
終わりの見えない日々に、何も思わないわけじゃない。
二人の存在と、一人の声。
その三つだけが遊作を支えていた。
*
夜の課題が終わる頃には大抵三人とも疲れ果てている。
着替えてベッドに潜り込むと、たいていすぐに夢も見ないで寝てしまう。
仁の寝息を聞きながらとろとろ微睡む遊作に、尊が囁くように言う。
「遊作、もうあの声は聞こえない?」
眠りの淵にいた遊作は、んん、と寝ぼけた声しか出なかった。
「……そか」
尊は、おやすみ、と呟いてシーツを引き上げた。
ここに連れてこられて、少しした頃だろうか。
遊作は、誰かの声が聞こえることがあった。
『きみ……ねえ、きみ』
優しい声だった。こちらを気遣う、同じ年頃の子の声だった。
最初は気のせいだと思った。仁も尊も聞こえないと言っていて──しかし途切れながらもはっきりとこちらへ呼びかけていて。
『三つ、考えるんだ』
『きっと助かる』
『あきらめないで』
何度も励ましてくれた。
だが、ある時を境に声はぱたりと聞こえなくなった。
まどろみながら遊作は思い返す。
たぶんあの声の主は自分たちと同じような境遇で──でもきっと、仁と同じような事になってしまったのではないか。せめてもう一度あの声がまた聞こえたら、せめて無事が分かればいいのに。
だが、聞こえなくなってずいぶんたつ。
──尊は、何を言おうと
『きみは、だれ?』
遊作は跳ね起きた。
「え、なに……?」
「尊」
常夜灯もない黒一色の室内で、遊作は手探りで尊を探し、その手をつかんだ。
「声、聞こえたのか」
「ちがくて」
尊が宥めるように、自分をつかむ遊作の手をもう片方の手で撫でる。
「きっと、僕のかんちがい」
囁いて腕を引く。それに従い遊作はベッドに戻った。
「ごめんね、寝よう」
尊がシーツを頭の上まで引き上げる。内緒話の格好だ。
シーツの下で遊作に顔を寄せて、尊が囁く。
「今日さ──なんだか呼ばれてる感じがして」
「それは」
「たまに、遊作どこか見てるだろ。あの時そんな感じしてるんじゃないの?」
「……」
遊作は開いている手で反対側の仁の腕に手を絡めた。
「そうだよ」
頷けば、尊はやっぱり、とつぶやいた。
「ずっと前に遊作が言ってた子?」
「アイツと違う、と思う」
「じゃあ」
「もしかしたら、仁の」
遊作は一層声を落として言った。
「あの時の誰かかも」
尊が小さく息をのむ。
*
仁の身に起きた事故──とも言えない何か。
あの日、朝から彼はどことなく落ち着かない様子だった。ずっと呼ばれているような感じがする、とぽつりと言っていた。遊作と違って言葉が聞こえるわけでもない、気配のような感じだと。
実際何があったわけでもなく、途中までは普段通りだったのでそれほど気にしていなかった。
だが。
「きみは、だれ?」
不意に、仁が言った。
その言葉に遊作と尊が仁を見たが誰もいなかった。仁が誰かに触れようとするように空に手を伸ばしていて──そのままイスから床へ崩折れた。慌てて二人は課題を放り出し、駆け寄ったがもうその時には仁は何の反応もしなくなっていた。
尊が何度も名前を呼んで、遊作は懇願した。誰か、仁がおかしい、助けて。
その後二人は気を失って、気がついたらベッドの上で仁は居なくなっていた。
遊作と尊は泣いた。恐ろしい想像しかできなかった。
何日かして、朝起きると仁は戻ってきたけれど、今のようになってしまった。
自分たちはどこまでもただの実験動物だった。多少瑕疵があったところで使える限り使い潰そうという観察者の意志で仁はここへ戻された。
そう言う意味では彼らにとって、これは事件でも何でもなかったかもしれない。
*
「誰だと思う?」
「分からない」
遊作は、二人をつかむ手に力を込める。
「でも、答えちゃダメだ」
「……うん」
尊が弱々しく握り返す。
「遊作もだよ」
「分かってる」
「本当に?」
「本当に」
不安げな声にできるだけ優しく繰り返す。
「ぼくにはもう二人しかいないんだ。呼ばれても置いていったりしない」
遊作は、ここに連れてこられる以前の記憶がない。
繰り返す課題のせいなのか、変わらぬ異常な日々に擦り切れたせいなのか分からない。尊が呼んでくれるから、自分が遊作という名前だと覚えていられた。だが、仁や尊のように自分にも待っている親兄弟がいるのか、そもそもどこでどんな暮らしをしていたのか思い出せない。
遊作の世界は目の前の二人と、かつて自分を助けようとしてくれた小さな声の記憶だけ。それより外はあの真鍮のドアノブが阻んでいる。
おやすみ、と囁くと、おやすみ、と返ってくる。
暗闇の中で尊の寝息が聞こえてようやく、遊作は目を閉じた。
*
宵闇の中、まどろみの向こうのどこかで自分を呼ぶ気配がしていた。
あの優しい声と別の、人でない何かが遊作を呼んでいる。
何の確証もないが分かる。尊が感じていたのもきっと同じだ。
仁を二人から奪った何者か、観察者と違う何かが近くにいる。じっと身を潜め機会を待っている。遊作と尊が呼び声に気づくことを手ぐすね引いて待っている。
遊作もまた、待っている。
課題をこなすうちに、少しずつ自分たちは力を付けている。
もう少し力があれば「それ」が何なのか、はっきり捉えられる気がしていた。
あれが自分に手を伸ばしてきたら、その時は逆に捕まえて、きっとこちらへ引きずり込む。尊を守り、仁を取り返して──あの優しい声の励ましを絶対無駄にしない。あきらめない。3つ、大事なのは3つだ。それを守って生きてここを出るためならば全てを使ってやろう。
きっとここから外へ。
***
世界を隔てる壁が壊されたのもまた、唐突だった。
ざわ、と総毛立つような呼ばれるような感覚で目が覚める。もぞもぞ身を起こせば、仁がベッドの上に座っている。
「……」
空を見る目はまっすぐどこかを見つめたまま。
尊は、と見やれば目をこすりながら身を起こしたところだった。
「……尊」
「なんか、ざわざわする」
呟く。
「ああ。何か様子が」
おかしいと、言いかけたその時いきなりどこかでベルの音がした。非常ベルは外から、かすかに、しかし確かに聞こえる。何かが起きている。仁を挟むようにして尊と遊作は身を寄せた。
息をつめる三人をよそに、ばん、とあっさり扉が開いた。
被検体は無事か、というような声と複数の足音に三人は一層に身を寄せ合う。管理者の想定外のことが起きているのだとわかった。
「連中の狙いは被検体だ、確保しろ! 絶対に渡すな!」
ばたばた駆け込んできた白衣の大人たちの姿に、遊作は唇を噛む。
「──いや、渡してもらう」
場違いに静かな声が響いた。
「!」
遊作は顔を上げた。「アイツ」だ、と天啓のように分かった。きゅ、と尊が二人を掴む手に力を込める。
同時に、壁がぐしゃりと砂糖細工のように脆く崩れた。
そこから、一人の少年が姿を表す。
美しい、少年だった。
銀糸の髪に強い意志の輝く淡い色の目。成長途中の肢体はすらりとしていて、その身を包む真っ白なコートが外からの風で翻る。
少年は室内をぐるりと見回す。
「……こんなところで」
忌々しげに呟き、しかしベッドの上の三人──そのうちの遊作を認めると一転して顔を明るくした。
「『きみ』」
「あ……」
「約束を果たしに来た」
微笑する。初めて見たはずのその顔に既視感を憶えて遊作は瞬きした。
「きみは」
「あと少しだけ、まって」
優しく言うと周囲で騒ぐ研究者たちを睥睨する。
「くそ、ここまできて邪魔はさせん!」
「『塔』の詐術師風情が……!」
「詐術かどうか──その身で確かめるがいい」
少年が言って手を振りかざす。ほとんど間をおかず、暴風のような『力』が部屋を駆け抜け白衣の大人たちを簡単になぎ倒す。彼はその『力』を完全に掌握しているようで、研究者たちを襲った『力』は三人の元へは少しも届かない。
何がどうなっているのか分からず、遊作はただ目の前の出来事を追うばかりだ。
「仁……!」
尊の声に遊作はハッと我に返った。同時に強く腕を掴まれる。
「仁、気がついたの 僕達がわかる」
悲痛に叫ぶ尊と、呆然と振り返った遊作の前で仁が立ち上がる。ゆっくりと目を閉じて、開く。
「──ああ。やっときちんと入れた」
開いた目は緑がかった金色で、遊作は息をのむ。
「さて。キミたちが、二人のオリジンか」
「……誰だ、おまえ」
震える声で尊が問う。遊作にも分かっていた。何かが仁の中にいる。
尊の言葉に《仁》が口の端を上げる。
「怖がることはない。そこの彼がこの箱を覆っていた秘匿装置を破壊してくれたからね、ようやく君たちの回収が可能になった」
「草薙仁を開放して離れろ、ライトニング。キミたちもそいつから今すぐ離れろ──今のソイツはキミたちの友人ではない。おまけにソイツの仲間が近くに来ている」
少年が言いながら真っ直ぐに《仁》に手を伸ばす。
「ダメだ!」
先の光景を思い出し、遊作は《仁》を庇おうとぎゅっと抱きついた。更に尊が二人と少年の間に割って入る。その光景に《仁》は喉を鳴らした。
「私を殺すか。この三人もろともに?」
「クッ──」
「お前も!」
尊が、《仁》を睨む。
「仁を返せ! お前だろ、仁を隠しちゃったやつは!」
『君は、誰?』
あの時仁はもしかしてこいつを見ていたのか。遊作はそこで気がついた。
少年は、ソイツの仲間が近くに来ていると言っていた。
つまり──
「イグニスどもめ……!」
少年が毒づいて何かをした気配があった。だがそれを振り返る前に遊作の視界がぐにゃりと歪む。
『気づくのちょ〜っと遅かったな!』
場違いに明るい声がして、ばちんとスイッチを押したかのように場面が切り替わった。
真っ白な空間に遊作は立っていた。
向かいにそいつが、いた。そいつは遊作を見下ろすような大きさで、人ではなかった。人の形をしておらず、さりとて遊作が、知るどの動物とも形が違った。
全体はなにかのキャラクターのようにも見える。体はやわからそうで黒に紫の模様。頭と思しき部分には耳も髪も鼻もなく、顔の大半を大きな一つ目と大きな三日月形の口が覆う。粘土か何かで作ったみたいな造形だがその目は確かに意思を持って遊作を真っ直ぐに見下ろしていた。
丸っこい体から手の代わりに六本のヒレのような何かが生えている。子供一人なら簡単に捕まえて大きな口でひとのみに出来そうだ。
「アクアたちは先手取られちゃったからな〜間に合ってよかった。ま、ギリギリとはいえやっと繋がれて嬉しいぜ──ゆーさく」
一つ目を細めて三日月の口を釣り上げて、ソレは笑った。そして遊作が呆然と見上げているのを怯えていると取ったのか、笑みを収めて首を傾げる。
「……あー、子供にはこのカッコ、ちょっと怖かったかな〜? ニンゲンにはニンゲンの形か、ちっちゃい生き物の形で話すと良いんだよなあ、確か」
そう言ってふるりと頭を振る。次の瞬間にはその姿は一人の青年に変わっていた。ぴょこぴょこ跳ねる黒髪に、時代がかった服に豪奢なマント。整った顔に愛嬌いっぱいの笑みを浮かべ、身を屈めてて遊作を覗き込む。金色に輝く目の人と違う虹彩が際立った。
「な、ホントはずっと前から気づいてただろ? オレが呼んでるの」
「……」
遊作が頷くと、青年姿のそいつは嬉しげに声を上げて笑った。遊作はじっとソイツを見たまま考える。
「なあなあ、ゆーさく?」
手を伸ばされて、遊作は咄嗟に捕まらないよう一歩引いて見せた。唇を引き結び、じっと見上げる。
「あー、うん。そんなに怖がられると傷ついちゃうんだけどな?」
「……」
しょーがないな〜、と唸って青年はバサリとマントを翻す。
次の瞬間には青年は、両手に乗るほどの小さな紫色の、小人の姿になっていた。
「これならカッコイイし怖くないだろ?」
くるりとその場で回って見せて、手を振る。
遊作はぺたりと地面に座って、そいつを覗き込んだ。確かにこの大きさならひと飲みにされる心配はない。
「お前は」
「アイ。──ゆーさくから生まれた、集合的無意識の海を彷徨う生命だよ」
仲良くやろーぜ、と愛想良く言う。遊作は、そうっと手を伸ばして、アイを両手で包みこむようにして触れた。
そうして──
「アイ」
──『力』を込めた手で思い切り握った。
「あだだだだだ! ちょっと、ちょっと待ってゆーさく! ゆーさくちゃん! 優しくして!」
「オマエ、仁にひどいことしたやつの仲間だろ」
「そうだけど! ひどくはないから、いやちょっとライトニングのヤツ強硬手段に出たけどそれは理由があって!」
「やっぱりひどいやつだ」
「あだだだだだだだ違う違うから! 助けてぇ!」
悲鳴を上げるアイに、遊作は少しだけ手を緩めた。
「放したほうがいい?」
「そ、そうだね~、もーちょっと優しくしてくれるとアイちゃん嬉しいかな、なんて……」
「分かった」
頷くと、遊作は『力』を構成し直して丁寧に素早く織り上げる。毎日させられていた課題のおかげで、アイが反応する前に遊作はその『力』で織り上げた箱へ彼をきれいに閉じ込めた。
「──って、何この箱」
ぺちぺちと壁を叩くがびくともしない。
「硬っ! 何だよこれ!」
「お前が見てるのは知ってた。だから捕まえてやろうと思ってずっと準備してた」
「ああ〜……」
アイはガックリとうなだれる。
「嘘だろ……こんな事するとか……」
「それで、どうする?」
遊作はじっとアイを見ながら問う。
「どうするって……あー分かった分かった、今回はオレの負けだよ。無理やりなにかしたりはしない。中止する」
アイは肩をすくめて軽く言う。
「で、ゆーさくとしてはオレをこうやって捕まえてどーする気?」
「オマエには人質になってもらう」
「あのさー、オレが開放しないと、ゆーさくはここから出られないのは分かってるよな?」
「僕たちはずっと閉じ込められてた。何年も。こことどう変わる? 同じだ」
「あ〜、根比べ得意なのな」
アイは唸った。
他に手段が無いわけじゃないが、穏便に遊作を取り込みたかったし時間もない。何より、あの『塔』の白い子供。彼が仲間の邪魔をしたというのはすでに話には聞いていた。
(アイツ、ぐずぐずしてたらコッチもぜってー邪魔しに来るよな)
「……ん?」
ふと気がついて、アイは遊作を見上げた。
「人質って、誰に対するなんの?」
「決まってる。仁とオマエを引き換えだ」
「……」
アイは心中で呻いた。ライトニングは自覚があるのか知らないが、あれで自分のオリジンを気に入っている。果たして自分が人質になるのかどうか──
(これはちょーっと身の振り方考えたほうがいいかなぁ……)
アイはため息をついて、ひとまず世界の隔絶を解いた。
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このあと、ライトニングたちと研究所と乱入者の三つ巴研究所壊滅の超能力バトル始まったりなんだりするんだと思うけど、書きたいとこあと幼馴染だった了見と再会して云々くらいだしオチが見つからなかったので没となりました。
Aiちゃんたちは、正確には超常能力領域の集合的無意識みたいな、なにか(正確とは)。なんかそれっぽいこと言いたかっただけだと思う。
『塔』は了見が所属してる組織。超能力の研究してる。
研究者たちは塔から分裂した過激派。超能力の研究してる。超能力とはなにか、のために子供を攫って研究実験していた。その過程でこことは違う次元に意思を持つ超常存在が生まれる。肉体を持たないが、人の意識に同調することで(入り込むことで)超能力者にできると判明。
とかなんとかメモに設定ぽいなにかを羅列してましたがあまり深く考えてなかったみたいなので、文中色々ふわふわですね…