距離が近づく、肌が触れ合う。じわりと熱が伝わってくる。重ねられた手は期待と欲でそわそわと俺の手の甲を滑っては跳ねる。わかりやすいお強請り。
久しぶりに休日が被って、時間も出来て、気持ちだけなら俺も一緒だ。一緒なんだが。
「無理」
「え」
ぴったりとくっついていた肩を掴んで、ぐいっと引き剥がす。俺の態度に腹が立ったのか、またぐいっと距離を詰められた。近い。背を反らして逃れたが、すぐに背中がソファの肘掛に当たる。あからさまな拒否に、カインがショックを受けている。
「なんでだ。その…久しぶり、だし」
だめか、と声が小さくなっていく。上司である俺にでさえずけずけ発言する跳ねっ返りが、控えめに誘ってくる姿にそそられるものはある。が。
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