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    naibro594

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    naibro594

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    遅刻1分前ギリギリなラブレターの日🔧ダンムル。
    とても短い。
    アンケありがとうございました!

    最初の2行はふと書き留めて端材として保管してたやつだったのだけれど、こんなドンピシャで使えるの書くとは思わんかった。

    #ダンムル
    #🔧軸

    ラブレターの日警告。このメールには彼の愛が含まれている。
    ──開いたならば、恋しさが抑えられなくなる。


    ダンテは時折出張に出る。
    会長であるロージャについていくこともあれば彼一人がその代理として行くこともあった。
    他の区であっても彼はワープ列車に乗りたがらなかったから、必然的に移動で日数が嵩む。
    最も、内密にかいつまんで話されたW社のからくりを知った上で乗って帰ってこいと言う者もいなかったが。
    あなたがおぞましい目にあうことと天秤に乗せるまでもない、ただ私の焦がれる日数が少し増えるというだけで。

    夕食のとき、<ちゃんと食べてる?>と画面の向こうで微笑むあなたへ手を伸ばしたくて仕方がなかった。
    「はい。大丈夫です」
    彼がいないと食欲の湧かない私を気遣い、極力時間のあう限り遠隔でも食事を一緒にとるようにしてくれている。
    見守られながら私のために作られたものを口に運び、半分ほどはちゃんと味の感じられるそれを咀嚼し、飲みこむ。
    空腹のなくなったところでやめ、じゃあ明日の夜に、とディスプレイの愛しい炎は黒く途切れた。

    何度ダンテが出張に出ても、やけに広く冷え無機質な寝具には慣れることがない。
    二人で寄り添えば柔らかな生き物のように温まって包みこまれる感触さえするもののはずだけれども。
    いつもより遠い眠気を追い、針音混じりの声を夢想しどうにか捕まえて、そうすればすぐ朝がやってくる。
    腕の中は空。カーテンの隙間から差しこむ陽に輝くあの目の朝を告げるのが、明日の朝には与えられるであろうそれがどうにも恋しく胸を焼いた。

    その朝はダンテの側に食事を兼ねた打ち合わせがあり、以降も予定のあうことがなかった。
    今日という一日を終え、私の眠る間に戻ってくることになっている。
    カフェオレ一杯で済ませた朝食を見越したかのように彼からのメッセージを示す特別な音が鳴って、端末へと手を伸ばし、掴む前に予感がした。
    開いて見てしまえば、読んでしまったなら。明日の朝まで時の過ぎるのを待たなければならない事実に、耐えられなくなる気がして。

    いつかのようだと思いながら端末を奥底に隠した鞄を抱え、そのままデスクの脇に置いて勤務に入る。二度、三度、彼の音が鳴る。読みたい気持ちと読むべきではない理性がぶつかる間にどちらも奥底へと沈めてしまって、淡々とすべきことをこなしていく。

    「あんやぁ……お前さん、旦那と喧嘩でもしたのか? 連絡つかないのにパソコンにはログインしてるって旦那が慌ててるぞ」
    「喧嘩の事実はありません。問題ないと伝えてください」
    「なんだよ、直接言えば……ああ、旦那? ムルソーだけどなんでもないって。いや、俺も直接言えばいいって思うんだけどなぁ……あ」
    私の顔を覗きこんだグレゴールが目を丸くし、そして意地悪く笑う。
    「……いや、うん。かけてやれよ。こいつやっぱり旦那がいなくて寂しがってんだ! すごい顔してるよ」
    「………………」

    ああ、せっかく我慢していたのに。
    彼専用の特別なメロディが一拍置いて流れ出す。
    促されるように諸々の下から震える端末を取り出して、表示された彼の名前をそっと指先でなぞる。
    ほんの少し、たった10秒ほどでいいから。心の準備と諦める時間が必要だ。
    あなたからのラブレターは憐れな私の抵抗も虚しくこの耳へと届けられて、私が抱えたあなたへの思慕を無常にも掻き立て溢れさせるのだろう。
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