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    naibro594

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    naibro594

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    🌹と🔧工房パラレルのダンムル(⏰🌇)
    ぶっ倒れて、目が覚めて、その後の話。
    ようやくたくさんお喋りできて嬉しンテと、やる仕事がない分付き合ってはくれるム。

    #ダンムル
    #🔧軸

    嗚呼、愛しき工房の日々44.

    ダンテは抜かりなく、体調が戻るまでのムルソーの休暇を『会長命令』として用意していた。彼が最低限でも起きられるようになればすぐに復帰しようとするのは目に見えていたからだ。
    案の定、期日の近いものや自分が窓口の案件があるからとふらつく体で身支度を始めようとしたムルソーをダンテは最大限に手足を突っ張らせた渾身の力で引き戻し、結局のところはダンテを代理としながらも体調の落ち着いている時に説明や引き継ぎをする、という形で妥協することになった。
    心配を隠さないムルソーにダンテはにっこりと笑ってみせる。彼しかできなかった仕事を彼以外もできるようにする、どのみちやらなければいけなかったことだ。
    毎日細かく家と工房を行き来しながら、彼は甲斐甲斐しく世話を焼いた。
    高く積み重ねられたクッションに頭を預け、どうにか食事できるくらいの角度を得たムルソーは、最初のスープの一口目で小さく美味しいと呟きダンテを心底喜ばせた。
    口にあったようで嬉しい、そんなに口にあったのならとスープを置いて工房に戻っても、どうしてかムルソーはほとんど手をつけずにダンテが様子を見に戻ってきたときばかり食べようとする。
    理由を尋ねても首を傾げるばかりで、彼自身も上手く理解できていないようだった。

    特に眩暈が軽くなるまでの数日、ダンテは起き上がれないムルソーの横によく寝そべってたくさんの話を試みた。
    「ねえ、次は私の仕事を手伝ってよ。どうしても私だけじゃうまく行かないことがあるんだ」
    「はい。今工房に残してしまっている案件が全て終わってからでよければ」
    「ううん。最重要だよ。今すぐ、この瞬間からがいいな」
    最重要ですか、と呟いたムルソーにダンテは隙を与えず言葉を続ける。
    「うちの工房で一番仕事ができて、一番無理しちゃう人がもう倒れてしまわないようにサポートしてほしいんだ」
    「はい。それでは以降、回していただければその方の業務を一部私が……」
    冗談まじりに言っても伝わらないだなんて。
    ダンテは思わずふきだした。
    「もう! 君のことだよ、ムルソー!」
    本当に自分のことだとは思っていなかったらしく目を見開いてかたまったムルソーの額を笑いながらトンとつつく。
    「私はただ、自分の仕事をしているだけです」
    「うん、知ってる。自分の仕事だからって、一個も私に手伝わせてくれなかったからね」
    彼の中ではそれは『普通』で、何一つ特別なことではない。だからこそ他の数倍も仕事をこなしながら、他を見下すこともなく、驕ることもなく、こなしつづけて、倒れてしまった。
    「しかし……結果として、私の行動があなたの仕事の妨げになったということですね。申し訳ありません」
    枕からずり落ちるように顎を引いて頭を下げるムルソーの肩を黒手袋がそっと抱く。
    「ううん、謝るのは私の方だ。……間に合わなくて、ごめんね」
    「そんなことは……」
    幸いなことに、ダンテには自分がしてきたことの方向性は間違ってはいないらしいという手応えはあった。より良くして続けていったのなら、その延長線上に、ちゃんと彼の改善もある。
    「これからもっと君をサポートしたいんだ。工房のためでもあるんだよ、だから……いいかな」
    「……はい、ダンテ」

    ⭐︎⭐︎⭐︎

    ムルソーが復帰して数日、ダンテは工房での休息環境の改善にも力を入れていた。
    仮眠室の寝具を一新し、2段ベッドの上下にカーテンをとりつけ、中の利用の有無がわかるマグネットを作り、個人での耳栓やアイマスクの使用を推奨する張り紙まで用意した。いくらか話し声は聞こえてくるし,昼休みはともかくとしても他の時間は制作チームの作業音がここまで響いてくることもある。
    さて、最も利用する男はそうまでした仮眠室で連日昼寝させても眠そうだ。昼食をとりながら向き合っているムルソーのぼんやりとしたエメラルドを眺める。
    <ムルソー。君の仮眠の効率を上げたいんだけど。君が最近一番よく眠れたのっていつで、何をしたときだった?>
    「…………そうですね……」
    しばし考えこみ、咀嚼を終え飲みこんでからゆっくりと口を開いたムルソーの言葉にダンテの思考は思わず止まる。
    「…………あなたに目を覆われ、手を握っていただいた時でしょうか」
    何だって?
    思わず阻害されて外からは見えていない耳を疑うも、ムルソーはいたって真面目な顔をしている。そもそも冗談を言うような男ではない。
    「あの時が一番、目覚めが良かった。発熱していましたが、あなたの手は心地よいものでしたし」
    黒手袋に包まれた手を開き、幾度か握って、開いてみる。
    特に特別な力があるわけではないのだが、それで彼がよく眠れるというのならば試してみる価値はあるだろう。
    「じゃあ…………ちょうど食べ終わったし、試してみる?」
    「はい」
    同じサイズではあるはずなのに、二人で寝転ぶと仮眠室のベッドは自宅のそれよりぎゅうぎゅうに感じた。
    すみません狭いでしょうと抱き寄せられ、自分のものより広く厚い胸に認識阻害の時計がめり込む形で顔が埋まる。
    どうにか体を回転させ、腕枕のように体の下を通り腰に添えられていた手に触れて、もう片方で目を覆うもあまりにも体勢に無理がありすぎる。
    <…………ごめん、さすがにちょっとこれは辛いかも>
    「いえ……目の方は外して大丈夫です。手だけで……このまま…………」
    顔を髪に埋められて、額にムルソーの吐息がかかる。
    ぎゅ、と手をに力をこめればゆるく握り返される。
    <…………マジかぁ>
    ややあって深くなっていく呼吸。静まりかえった仮眠室に、かちりという針の音だけが一つ響いた。
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