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    midorinooage

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    midorinooage

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    子❄️さんと👊さんの出会い妄想

    小雨がしとしとと町を包み込むような日の事だ。
    薄汚い路地の壁は雨に濡れ色を濃くし、薄いシャツ越しにジットリとその湿気を伝えてくる。
    弾む息を抑え、ズキズキと痛みを訴える体を無視して何処か逃げれる場所は無いかと必死に頭をめぐらせるも壁は高く隙間も無い。
    「おら!もう逃げらんねぇぞっ」
    「ちょこまか小賢しいったらありゃしねえ!……金輪際こんな事できないようにしてやんねぇとなあ」
    「……!!」
    後ろは壁、前にはガラの悪い男が数人、手には棒や剣を持ち、たかがこそ泥の子供一人を追い詰めるには物騒な出で立ちでにじり寄ってくる。
    雨が落ちる路地は狭く逃げ道は無い。
    背に感じる壁の冷たさに、腕に抱える風呂敷袋をギュッと抱き締めれば、呆れた笑いが男たちから漏れた。
    「おいおい、なんだその顔?まるで俺達が泥棒みたいじゃねえか」
    「みたいじゃねぇ!泥棒だろうが!!」
    子供が大事に抱える袋にはお世話になっている家族が大事に育てた果物が入っている。身寄りのない子供を家族のように迎え入れてくれた優しい人達、その彼らが丹精込めて作った物を、目の前の男達は暴力と権力をカサにタダ同然で奪っていったのだ。
    許せなかった。だがその凶行を止めることすら出来ない子供には、こんな方法でしか自分の心を貫くことが出来ず、窮地に追い込まれている。
    自分はもうダメだろう。せめてこの果物だけは無事でいて欲しいと守るように体を縮こまらせたところで、薄暗い路地が更に暗くなった。
    「ここは雨が多いの〜。おい坊主、お前いい傘持っとるじゃないか!ちょっとわしも入れてくれんか?」
    「んだぁ?!?……っげ、海軍……」
    子供からすれば追いかけて来た大人達も充分大きいが、それを見下ろす程の大男が路地の入口からこちらを見下ろしていたのだ。
    その服装は白いズボンにベスト、肩に飾りが着いた白いコートという海兵の制服だった。
    「ちょっと軍人さん、俺達忙しいんだよ。そこのこそ泥から商品取り返さにゃ、旦那に怒られちまう」
    「こそ泥?どいつがじゃ?」
    「そこの汚ねぇガキだよ!ちょっととっちめるだけだから、あんたはさっさとどっか行きな」
    突然の闖入者に子供は助けを求める気はなかった。この街では海軍もこのチンピラ達のボスに言いなりで、こちらを助けてくれることは無い。助けを求めてもその希望は砕かれ、このチンピラを喜ばせるだけだ。
    しかし自分達のボスがこの街を仕切っているからとはいえ、よくこんな強そうな人に偉そうに出来るものだと子供が考えていると「そいつはわしの連れじゃ」とよく通る声が路地に響いた。
    「……は?」
    「だから、そいつが持っとる物はわしが買いに行かせたもんだと言っとるんじゃ」
    唖然とする周りを置き去りに、軍人は懐から財布を出し値段を聞いている。
    突然の展開にさしもの子供も驚きで固まってしまった。
    「耳が遠いんか?いくらじゃと聞いとる!」
    「い、十万ベリー……」
    「たっかいのぉ〜!……お、あったあった、これでいいか?」
    「お、あ、はい、まいど……っっ」
    「な……!!」
    明らかに法外な値段にもかかわらず軍人はあっさりと金をチンピラに渡し、子供の方へ向かってずんずんと歩いてくる。
    「なんで……っっ」
    あんな奴らに払う金なんてないし自分を助ける理由も無い。助けてもらったと分かっているが、嬉しさも安堵もなく子供は激情に顔を歪ませ睨みつけた。そんな威嚇する猫のような子供に、軍人は視線に合わせる様にしゃがみ、ニカッと音が聞こえそうなほど快活な笑顔を浮かべた。
    「傘に入れてくれんか」
    「……!」
    こちらの頭に大きな手を置き、ゆっくり撫でる。それだけの事なのにまだ終わっていない、何故か分からないが子供はそう感じた。この軍人はまだ何かやる。
    差し出された腕に体を寄せれば、軽々と抱き上げられ、今まで体験したことの無い視界が目の前に開けた。
    軍人の影になって見えなかった路地の入口が視界に入る。そこには臨時収入を手に入れ意気揚々とこの場を去ろうとするチンピラ達がいた。
    「図体ばっかりデカくてビビらせやがって、いいカモだったな」
    「あぁいうのは木偶の坊って言うんだよ」
    そんな会話が聞こえ、子供は奥歯をかみ締めた。
    「なんであんなヤツらが……っっ泥棒はアイツらなのに……!!」
    悔しさで視界が滲む。だが今の自分に何が出来るのかと、無力さで腕の力が抜けそうになるのを必死にこらえた。
    「わかっておる。アイツらで最後だ」
    「え、」
    何を、と見上げた軍人の顔は何者にも砕けない強い意志で前を見据えており、その横顔はただ彼の正義を語っていた。
    「その金はっ餞別じゃ!!!」
    言うや軍人は拳を振り抜いた。
    路地の入口に向かい空気が吸い込まれていくような感覚に慌てて白い服を握る。と、次の瞬間暴風が入口近くにいた男達を吹き飛ばした。
    それが軍人の拳圧だと気づいた時には、路地の先の大通りに居たらしい海兵達がチンピラを取り押さえていた。
    「おっ、雨が強くなってきたな。傘借りるぞ」
    未だ状況が飲み込みきれず固まったままの子供を抱え、軍人は鼻歌交じりに往来へと向かった。
    路地の壁に切り取られた細い空の向こうには、微かに虹がかかり始めていた。
    これが、クザンとガープの出会いの物語である。



    「なんだ?こいつ、金握りしめて」
    「あーっそれわしの金!この子から果物買おうとしたら盗られたんじゃ〜」
    「えっ」
    「もー何やってるんですかガープさん〜」
    「いやぁ悪いのう、ほれこれはお前さんのもんじゃ」
    「えっ」
    「なんじゃ、売ってくれんのか?」
    「あっありがとうございます!!!」
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