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    yugetsu1341

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    yugetsu1341

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    笹貫さんの話の進捗。ちょっと自信ないのと尻叩きで置いておきます。

    殿をやりたがる刀の話殿(しんがり)。
    単に部隊の最後尾につくことを指すが、撤退戦において軍列の最後にて敵の追撃に備えることでもある。どちらにしても、最後尾というのは気が鋭い者強いてはそれなりに練度がある者が務めないと意味がない。奇襲などにいち早く気づき、そして後退する際は追撃する敵を防ぎながら味方の戦力を温存かつ速やかに移動させる。とても荷が重いこの役をやりたがる刀がいた。
    笹貫である。
    最近顕現した刀で現在進行系で練度上げを集中的にされているというのに、彼はやたらと殿をやりたがった。出陣はもちろん遠征でも。しかしまだ中途半端な練度の彼に殿は無理だということで却下されるのが常だった。
    「ねぇ、笹貫。あんたどうしてそんなに殿やりたがるの?」
    ある出陣から帰還後、手入れ中で寝ている彼に戦術補佐の霧乃は尋ねた。今回の出陣でも笹貫は殿をやりたがり、隊長の陸奥守はさすがに今回編成した部隊の中で一番練度の低い笹貫に任せるのは良くないと思っていた。そこで仕方なく、ツーマンセルならいいだろうと顕現された順番が近い稲葉江と組ませることにした。この二振りが水と油のような性質の合わなさで時折突っかかっているのを見たことはあったが、交友を深めるのもええじゃろという陸奥守の采配だった。
    結果、それが功を奏し、口喧嘩しながらも敵の奇襲に二振り揃って気づいて難を逃れたものの、その後の掃討戦で不意を突かれて笹貫は重傷一歩手前まで持っていかれたのだが。
    「どうしてって……やりたいからじゃダメ?」
    「そんな希望で任命できる役じゃないんだわ。戦術において、一番難しいのって何だか知ってる?」
    まだ顕現して日が浅く、戦術の基本は教えているもののさすがに笹貫は即答できずに考え込む。
    「うーん…防衛戦とか籠城戦?」
    「ハズレ。正解は撤退戦」
    「なんで?逃げるだけなら楽じゃないの??」
    「その逃げるのが大変なのよ。士気はだだ下がり、パニックになって統率も上手く取れずに勝手な方向に逃走しそうな兵らをまとめ上げて、何とか自軍のところまで撤退する。敵が深追いしなきゃいいけど、追撃するところは徹底的に攻めるだろうし、そんな中の殿……どういうことかわかってる?」
    そこまで言うと笹貫は押し黙った。へらっとした笑みは消えて真顔だ。
    「もちろん通常の出陣における殿は主に背後から来る敵にいち早く気づいて対応するのが役目。まあ、この場合は全方位の警戒もあるし、今回は稲葉との二人組で何とかなったからいいけど。だからこそ、半端者に殿など任せられない(・・・)」
    半端者という言葉に悔しそうに顔を歪めた。その時、
    「正論だな」
    突然障子が開いたかと思うと、やってきたのは稲葉だ。稲葉は傷が浅かった為手入れの時間は短かった。ドサッと霧乃の隣に座る。
    「稲葉なんで来たの?」
    「一応隊長だった陸奥守の指示とはいえ組まされた身だ。あれだけ手酷くやられて担いで来たのは我であって」
    「あれぇ、様子見に来てくれたの?」
    先程までの真顔や悔しさはどこへやら、いつもの笑みを浮かべる笹貫。その様子に真面目な稲葉はわずかに苛ついた表情を見せる。
    「その様子だと大丈夫そうだな」
    「こいつ意外としぶといの、稲葉もわかるでしょ?竹藪だろうが、海だろうが戻ってくる刀……本丸(ここ)に戻ってくるまで、絶対折れないでしょ」
    「ああ、それなんだ。補佐」
    突然笹貫に指摘され、霧乃は目を丸くする。稲葉に目で何かあたし言った?と視線で訴えるが、彼は無言で横に首を振った。
    「そのさ、オレが殿やりたいのってここに帰りたいからなわけ」
    「帰りたい?なら、さっさとやって終われるよう先鋒でもやった方がいいじゃない」
    「だから、一番最後でいいんだよ」
    矛盾している、それが率直な霧乃の感想だったが、何か気づいたか隣の稲葉は大きなため息をついた。
    「己の逸話がどこに捨てられても戻ってくる故にか」
    「そう。どこかに行ったら絶対にここへ帰りたいけど、他の皆差し置いて帰るなんて出来ないでしょ」
    「だからって殿やるの?」
    「仮にそういう撤退戦なら部隊長が一番最後なんだろうけどさ、オレが一番適任なんだよ。絶対に戻ってくるから(・・・)」
    やっと話を理解した霧乃は、呆れたと口にした。稲葉も馬鹿者がと呟く。
    「あんたの謎の自信、そこから来たのがよーーくわかったわ。でもさ、そんなに殿やりたいなら最低でも最高練度になるまでスパルタ特別訓練やる覚悟できてるんでしょうね?」
    その言葉に笹貫の顔からサーッと血の気が引いた。苛烈な補佐の特別訓練は新刃である笹貫の耳にも入っていた。それも最高練度まで。一体どれだけ折れた方がマシな厳しい日々が待っているだろうか。
    「あー……それならオレ」
    「補佐、それは我でもやれるか?」
    パスと言いかけた笹貫を遮り、稲葉が補佐に訓練参加の提示をした。
    「え?稲葉はしばらく遠征の方に回して経験積んでもらおう思ってたけど、そっちやるの??」
    「こんな腑抜けと組まされてばかりでは、強くはなれんからな。天下を取る為に我はより強くあらねば」
    「よーっし、稲葉がそこまで言うならメニュー考えとくわ。でも、江のれっすんどうするの?」
    「我はあれに参加してない」
    「えーだって篭手切この前勧誘して……まあ、いいか。とりあえず豊前だけでもいいから声かけといて──」

    「オイも参加すっ!」

    突然笹貫が身体をガバッ!と布団から起こして、補佐の手を取る。
    「オイもその訓練参加させ!!」
    薩摩特有の早口に補佐は一瞬頭が追いつかなかったが、一拍置いて理解しニヤリと笑う。
    「笹貫もやるのね?」
    「男に二言はなか」
    「稲葉と二人でみっちりやるけどいい??」
    「ああ」
    頷く笹貫に霧乃の顔がニヤァ……と明らかに何か企んだ笑みを浮かべる。
    「久々の特別訓練なんて腕が鳴るわぁ。二振りとも後日詳細は追って連絡するから、しっっかり体調万全にしておきなさい。さぁてどこまでブッ込もうかなー」
    とウキウキして霧乃は手入部屋から出ていった。あとに残ったのは水と油な二振り。気まずい空気が部屋内に重くのしかかる。
    「……稲葉、今やるなんて言わなきゃ良かったなぁとか思ってない?」
    「元より我はまだこの人の身体に馴染んでおらぬ。いち早く強くなれる道があるなら、如何に険しくとも行くだけよ」
    「真面目だねぇ」
    「お前もその矛盾した想いを貫きたいなら、せいぜい戦場から自分の足で帰れるようになれ。我などに担がれずに」
    それだけ言って稲葉は立ち上がって部屋を去った。残ったのは笹貫一振り。ふぅと息をついて思い切り布団を被った。
    矛盾しているなんてとうの昔にわかっている。出陣でも遠征でもどこかに出かけたなら必ず本丸(ここ)に帰りたい。今世の自分の帰る場所。竹藪でも海でもない、紛れもない居場所。けれど、いの一番に自分が先に帰るというのも居心地が悪い。自分より小さい、短刀なんかが必死で戦っているのを見ると、新刃であるのも差し引いてもそんな言葉言えるわけがなかった。
    だから、堂々と帰れるように一番最後がいい。例え敵に囲まれても絶対に帰ってこれる。オレはそういう刀だから。例え折れて粉々になろうと、魂だけでも本丸へ。そう笹貫は思っていた。
    「でも、今のオレ……弱いのは間違いないからなぁ」
    特にはなったものの最高練度には程遠い新参者。そんなひよっこに出来るのは負った傷を治すことに専念すること。今のうちにたくさん寝ておくかと笹貫は目を瞑った。

    笹貫の手入れが終わり戦闘も可能になる状態になって間もなく、稲葉と笹貫二振りの補佐による特別訓練が開始された。噂通り訓練は過酷なもので、魔弾の射手である戦術補佐自らが相手をする実弾を用いた異種実戦、本丸の裏山を用いたトラップ満載のゲリラ戦体験、術師でもある審神者も参加しての対攻撃魔術訓練、補佐直下第二部隊が相手の模擬乱戦、更には古代から近現代に至るまでの戦術座学などみっちりと行われた。
    この特別訓練は特に勝つこと、強くなることに貪欲な刀に対して行われ、栄光の第一号である第二部隊以下陸奥守、同田貫、御手杵、獅子王、山姥切国広、大倶利伽羅は口を揃えて、まだ優しい方だ(・・)と言い切った。それもそのはず、稲葉と笹貫のは改良を重ねた最適版。全てが実験だった第一回は試行錯誤を繰り返し、地獄は地獄でも八大地獄を全て踏破したような心地だったと六振りは語っていた。こんな訓練が出来るのも審神者と補佐が軍人であることもだが、この相模国第七本丸のバックに軍部の全面協力があったからこそでもある。
    サポートは稲葉の事もあり江全員で回ったが、訓練が終わるや否や倒れる二振りの介抱に追われた。もちろん、審神者も付きっきりである。書類関係の仕事は事務組の刀たちに任せ、軍部との連絡も初期刀の歌仙と初鍛刀の前田が担当し、稲葉と笹貫に何か異常があれば即状態を確認し処置を行う。そんな日々が数週間続いた。
    二振りの練度はみるみる上がっていくが、その分体力も気力も摩耗した。笹貫は変なこだわりを持たなきゃ良かったかなどと思い、稲葉も内心では余計な意地を張ったかとわずかながら後悔した。しかし、この二振りの根は負けず嫌いである。笹貫は薩摩の刀だからか薩摩隼人の勝ちへの貪欲さが、稲葉は元の主が天下を二度逃した経緯があるからか今度こそ掴むという信念が二振りを突き動かし、余計な後悔など秒で消えた。
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    yugetsu1341

    MEMO日中思いついた孫六さんの設定殴り書き。
    めちゃくちゃ弊本丸の設定準拠なので、北欧神話絡みます。
    大神に仕える狼が、戦乙女の護衛になる話。
    孫六さん狼言われる→壬生狼だ→北欧神話でも狼いたなと連想して出来た産物。
    則さにルートの孫六さんにするか、全ルート共通にするか悩み中。
    そして殴り書きなので、設定変わる要素ありまくり。
    戦乙女を護衛する狼の話(弊本丸特殊設定準拠)・鍛刀キャンペーンで天井が出来、ポイントが溜まると顕現できる→つまりポイントが溜まった時点で確定顕現出来る札的なのがこんのすけから配布されて鍛刀すると出来ると仮定しての設定。顕現札には既にその刀の分霊が封じ込められているとする。
    ・孫六兼元に関して思い入れがある、鈴花嬢の叔父(軍部司令部長官・つまり一番偉い人)は顕現札をあるルートで手に入れ、事前に封じられている分霊と対話しある命を任す事にした。まずこの分霊と対話ということ自体、叔父もまた一宮家という名門術師の出自で尚且つ実力主義の軍部、それもあの特務科を長官直属部隊としている程なので、力があるからこそ出来る業である(つまり顕現札に何かするということは、かなりの実力がないと難しい。それほどロックが頑丈)
    2030

    yugetsu1341

    MEMO気づいてたら考えていた。どうなるかは未定。
    いろいろこれから詰めるので設定とか変わるかもしれない。
    名前未定、弊本丸審神者ライバルの設定(政府側)・政府の高官(最高地位近く)の娘。霊力在り。超法規的措置で大般若長光を顕現。本丸を持たない。
    ・戦を何れ終わらせるという軍部と志は同じながら特務科とは反りが合わない。鈴花嬢が英霊に寄り添う戦乙女にして、人に寄り添う魔女なら、孤高の女王。
    ・政府機関に属している割に戦闘能力も術師としての能力も高く、軍部から特務科入りの打診はあったものの、「あんな奴らと馴れ合いごっこなんてごめんですわ」と拒否。生まれが普通とは違い、普通にはない力を持つのに、独りでいることを選んだ。大般若は「お嬢さんにも友達がいればなぁ」と常々思っている辺り、鈴花嬢も霧乃がいなかったらああだったかもしれない。
    ・鈴花嬢を目の敵にしている。似たような境遇なのに親友がおり、本丸を運営しているが、八方美人で一般人(霧乃)を戦に巻き込んでいるし、何よりあんなに寄り添っていて何になるのか。戦乙女?魔女??英雄ごっこは他所でやって、そう、あいつら特務科は英雄気取りが多くて嫌になる。おかげで敵に負けたでしょ?と毛嫌いしている。が、内心その裏返しは羨望なのだと自分も薄々気づいている。にゃーさんもわかっている。実際政府機関で働いていると、高官の娘、審神者の状況改善に努めるもやっかみを受けたり、にゃーさんと並んで遡行軍蹴散らす様に特務科行けば良かったのにと揶揄され、本人自身も威厳がなければこの小娘相手に動いてくれないと高圧的になりがちなので評判も悪い方が多い(もちろん状況改善に努めようとしているのを理解し、認めている者もいる)
    1402

    yugetsu1341

    PROGRESS怪談チャンネルやオカルト系番組を見ていて思いついた話。土佐三振りと審神者と補佐が令和で行われた呪物の展示会で、遡行軍が展示物奪取しようとしているからその防衛を任される話。短編のはずなのにいつも長くなるのなんでだろう(端折りが下手な人)
    呪物展防衛任務の話 時は令和。とある都会の一角に中規模のギャラリーがある。日頃は閑散としているのだが、ここ数日珍しく長蛇の列が出来ていた。開かれているのは動画サイトで人気の怪談師、オカルトコレクター、心霊研究家などが持ち寄った呪物の展覧会。実際に怪異や異変が起きた曰く付きの物や、存在そのものが呪いをかける為に作られた物、古今東西幸運や良縁が来るとあやかられている物など実に様々な物が展示されていた。
     以前から動画サイトなどで実際に起きた出来事や、所持している呪物の解説などが専門チャンネルや番組で取り上げられており今回初登場の物など話題性に溢れたこの展示会は、オカルト、ホラー好きはもちろんのこと、民俗学、文化研究家の著名人やそれらを専攻している学生達、昨今そういった物をテーマに人気を博しているマンガや映画、小説といったエンターテインメントから入り、興味本位や怖いもの見たで来た一般の人など幅広かった。
    4801

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