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    ゆめの

    @x_yumeno_x

    浮唯中心で唯受を書いています。

    カップリングごとにタグを分けていますので、参考にしてください。

    少しでも楽しんでいただければ幸いです。
    よろしくお願いします🙇‍♀️⤵️

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    ゆめの

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    スタオケ、5年振りの京都芸術ホールでの公演。
    曲目はラフマニノフのピアノ協奏曲第3番。
    ピアノソロはなんと御門浮葉。
    そして、コンサート終了後、浮葉はある決意をする

    ★現時点でキャラストには一部しかえがかれていない設定について、私の妄想と考察と願望を詰め込んだ話ですので、ご注意ください
    ★書いた人は、「浮葉さん、ピアノに転向するのでは?」と考えています
    ★糖度低めです(ごめんなさい)

    ##浮唯
    ##モヤモヤする結末
    ##華爛

    いつか見た未来5年振りとなるスターライトオーケストラの京都芸術ホールでの公演。
    その中心にいるのはピアノソリストを務める御門浮葉であった。
    彼が弾いているのはラフマニノフのピアノ協奏曲第3番。
    大胆でありながらもラフマニノフらしく随所に繊細なメロディーが切り刻まれた曲の魅力を持て余すことなく御門はその指先から紡ぎだしていく。
    彼がステージに登場したときからその容姿に心奪われていた観客であるが、曲が進むにつれて今度は彼が産み出すメロディーに魅了され、そして最後の一音がホールに鳴り響いたと同時に観客は総立ちになり、惜しみない拍手を送ってくる。
    それは御門が単に容姿や経歴といった話題性だけではなく、人を惹き付ける演奏をしていることを示していた。
    そして場がいったん落ち着いたのを見計らい御門はおもむろにピアノを弾き出した。最初はそっと鍵盤を見つめながら。次に天を仰ぎながら。


    「いやー、さすが御門。ピアノは相当ブランクがあるっつーのにあれを弾き上げるなんてな…… 才能あるヤツが努力を惜しまないと、化け物みたいな演奏をするといういい例だな」

    主催者側が用意したというレセプション会場。指揮者である一ノ瀬銀河はビール片手に本日の主役である御門に賛辞の言葉を投げ掛けてくる。その言葉に悔しそうな色が滲み出ているのは、彼もピアノと深く関わっており、実力の差をまじまじと感じたからであろうか。
    スタオケあるいは朝日奈唯との出会いを通じて、止まっていた御門の時間は動き出した。
    そのことをきっかけにグランツ交響楽団に所属したり、黒橡として精力的に活動していたが、高校卒業と同時に学生の身分を失ったためグランツの活動を終えた。
    そして、2年前に突如黒橡は活動休止に入った。
    その後の御門の動向は世間に知られることはなかった。
    当初は様々な憶測がネット上で飛び交ったが、それもほんの数ヶ月の間だけ。
    その後、黒橡がもたらした熱狂はウソみたいに冷め、まるで黒橡の存在自体が幻であったかのように世間の関心は薄くなった。
    そして、彼の存在自体を世間が忘れていた頃であった。御門浮葉が海外の著名なピアノコンクールで最優秀賞を受賞したというニュースが飛び込んできたのは。
    どうやら御門家の資産を取り戻す一方、御門は彼自身の学費も人知れず貯めていたらしい。そして、御門家の騒動を知るものが少ない土地で音楽家になるべく研鑽を積んでいたらしい。ただし、それはオーケストラで吹いていたクラリネットではなく、父親との思い出が何より根強く残っているピアノで。

    「一ノ瀬先生、それを言うのであれば、あの破天荒なオーケストラの演奏をまとめ上げた唯さんももっと褒めて差し上げるべきかと思います」

    御門は銀河の言葉を軽く受け流しながらそう口にする。片手には赤ワインのグラスを持ちながら。
    御門は数時間前のホールでの演奏をあらためて思い出す。
    京都、ラフマニノフ、そしてピアノ。
    それらの要素で最初は緊張していた御門であるが、曲が進むにつれて無意識に高揚していたのだろう。演奏が進むにつれ、普段は表面に出ることが少ない情熱が飛び出すのを感じた。
    そしてオーケストラのメンバーもそれを感じ取ったのだろう。
    トロンボーンやトランペットを中心に煽り立ててくるようにすら感じたが、それでいながら暴走しなかったのは、唯が弓でみんなをまとめあげていたからであろう。御門はそう感じていた。
    そう、初めてスターライトオーケストラのコンサートミストレスとして出会ったときは、まだ迷いがある弓であったが、彼女もコンミスを務めていく上でやはり成長し、そして変化していたのだと思う。
    確固たる信念を持ちながらも、個性豊かなオーケストラのメンバーを束ね、そして温かく包み込む、そんなコンミスへと成長したように御門は感じた。

    「俺たちみたいに卒業したメンバーもいるけど、何とか全員集まることができてよかったね」
    「みんなとの演奏楽しかったな~」
    「そうね。テューバをこのメンバーで吹くの久しぶりだったから、足を引っ張らないか不安だったわ」

    国際コンクール出場を目的に結成されてスターライトオーケストラは、22歳を迎えるか学校を卒業した段階で自動的に卒団となる。
    スタオケ発足時に高校3年生であったメンバーは全員昨年春の時点で団員の条件を満たすことができなくなった。そして、唯を始めとするスタオケ発足時は高校生2年生だったものたちも、もう間もなくスタオケから卒業することになる。
    しかし、今回のコンサートの目的は浮葉がピアニストとしてデビューを飾ること。そのため、オーケストラの構成要員に厳格な制限はないため、5年前にこのホールで演奏したメンバーが集まることになった。一部はスタオケのOBやOGとして。
    久しぶりに揃うメンバーゆえ、技術レベルには格差ができ、またテンポの上げ下げも強弱のつけ方も合わなかったところがある。
    だけど、それをまとめあげていく過程は、かつて御門がスタオケの一員として参加したこの京都でこけら落とし公演を思い出させた。懐かしくも、戻らない日々。だけど記憶の中ではいつまでも輝いている時間。

    ワインが思いの外まわったのだろうか。
    感傷の気持ちが膨れ上がるのを感じ、御門は夜風に当たろうかと考える。
    それに今日は会いたい相手がいた。そしてどうしても伝えたい、そして確認したい気持ちがあった。
    御門はここにはいない者の姿を探すためにそっとレセプション会場をあとにすることにした。


    「ここにいたのですね…… あなたも主役のうちのひとりでしょう?」

    夜風に当たりたいと考えているのは自分だけではなかったらしい。
    バルコニーにいたのはコンサートミストレスである朝日奈唯。彼女は白ワイン片手に佇んでいた。
    初めて会ったときはぶどうジュースを嬉しそうに飲んでいた年齢であることを考えると時の流れを実感する。

    「ええ、御門さんとこのような形で演奏できるとは思わなかったので……」

    コンサートミストレスを務める彼女との共演は5年前のこけら落とし公演だけではなく、その後も何度かあった。だけど、間もなく大学を卒業し、それと同時にスターライトオーケストラのメンバーではなくなる彼女とこのような形で演奏できて、どこか浮わついた気持ちになっているのは自分だけではなかったらしい。
    そして、御門がクラリネットではなく、ピアノでの競演となることも。

    ふと御門は通りすぎていった日々を思い出す。
    ピアノとクラリネットの両方でコンクールに出場し、賞を獲るのが当たり前だった頃。それは自分の実力だけではないことを察し、まわりの大人が喜ぶ姿を見て複雑な心境になりながらも、母が嬉しそうに賞状とトロフィーを飾る様子を見て自分も嬉しくなっていた日々。
    様々な事情が重なりピアノから離れることを選んだあの日。
    だけど、彼女と出会い、彼女からもらう言葉がひとつひとつエネルギーになり、もう一度ピアノと向き合おうと決めたあの日。

    「ええ、ありがとうございます。おかげさまで忘れられない演奏会となりました」

    もう一度ピアノに触れることができて、さらには演奏家として活動する道も開くことができた。しかも、その最初の一歩に彼女もオーケストラのコンサートミストレスとして立ち会ってくれた。

    「スタオケはあの頃と変わらず、温かく、まるで春の日差しのようでした」

    コンクール受賞記念のコンサート。オーケストラは在京のプロオケに依頼する話も出たが、御門は真っ先にスタオケの名前を出した。彼らの都合を確認するよりも先に。
    他に候補として上がったオーケストラの中には一時身を預けたグランツもあったが、未来への一歩を踏み出すには、温かく優しく、そして希望に溢れており、何よりもその中心には彼女がいるスタオケの存在が必要であった。
    そして、そんなスタオケだからこそ自分は持てる力をあり余すことなく発揮できたのだと思う。

    「御門さんも、アンコール、よかったです……」

    目の前にいる唯はワイングラスを置き、おもむろにそう話してくる。

    「父が… 私のために作ってくれた曲です」

    なぜその曲を作ったのか、真意はわからない。
    そして亡き人となった今では永遠に知ることも叶わない。
    だけど、繊細なメロディーがもたらす儚い印象と、一方で左手の動きが現すしたたかさ。
    これらはまるで自分をえがいたかのようにしっくり馴染んでいる。

    「そうだったのですね……」

    唯はそう言ってしばらく沈黙を貫く。
    レセプション会場の喧騒さがここまで漂ってくるが、ふたりはそこに戻ることはせず、ただ互いが隣にいるという事実を堪能している。
    先に口を開いたのは唯の方であった。

    「クラリネット吹いている御門さんもよかったですし、黒橡としての御門さんも決して嫌いではありませんでした。だけど…… ピアノを弾いている浮葉さんはそれ以上に素敵でした」

    彼女は静かに涙を溢していた。
    それがどのような感情から来るものなのか、御門には理解することができない。
    いや、彼女自身、自分の涙の理由がわからないのかもしれない。
    ただ、御門は彼女と出会ってからの日々が走馬灯のように甦る。

    思えば彼女とは縁が切れたかと思っても、また巡り合わせる。そんなことの繰り返しだったかのように思う。
    そして、いつしか彼女は自分が会いたいと思うときに目の前に現れるようになった気もする。
    それがバレンタインであったり、クリスマスであったり。そう、恋人同士がともに過ごすと世間でイメージされる日に。
    いつしかつかず離れずの距離で接してくれる唯の存在がありがたく、御門からも連絡を取るようになった。
    何度も逢瀬を繰り返すうちに、気持ちが重なっているのでは……そんな期待を抱いたことも一度や二度ではない。

    だけど…… 自分の未来にメドがつかない状態で自分が彼女に向ける感情が何であるか知りたくなかったし、彼女のことを考えると自分たちの関係を決定づけることはしたくなかった。
    ましてや彼女との将来を約束する言葉を口にすることはできなかったし、そんなこと許されるはずもないと思っていた。
    ただ、願うことが許されるのであれば、自分の状況が落ち着き、そのときも自分たちの気持ちが同じであれば、そのときは彼女に自分の気持ちを伝え、未来につなげる言葉を口にしたい。そう思った。

    長い時間を掛けて未来への道を切り開くことはできた。
    そして、彼女の気持ちが変わっていないのは、ここにいることが何よりの証。
    御門はすぅっと小さく息を吸い、覚悟を決める。

    「あなたにお話したいことがあるのです」

    そう口を開くと涙で潤んでいた唯の瞳が大きくなる。
    ふと、月夜で照らされる彼女の表情が美しいと思った。
    だけど、彼女をより一層美しいと見せるのは日の光の下。彼女と過ごしてきた時間の中で御門はそれを思い知った。そして、彼女に笑顔をもたらす一番の存在は自分でありたい。そう思うようになった。

    これから告げる言葉が彼女を満面の笑みにし、そして自分自身にも幸せをもたらすことを信じて御門はひとつの言葉を口にする。

    「唯さん、私はあなたと……」
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    ゆめの

    PROGRESSフェリクスオンリー合わせのフェリアン小説です。

    テーマは「アンジュに告白して振られたフェリクスと振ってしまったアンジュのその後」です。
    フェリクスの、そしてふたりの行方をお楽しみ(?)ください。

    ネタは主催のまるのさまに提供していただきました。お忙しい中、ありがとうございます😌
    ※ゲーム内よりもフェリクス様が女々しいので、ご注意ください
    ※後日微修正する可能性があります
    天使が振り向いたその日「フェリクス、私たちはこれ以上仲を深めてはいけないと思うの。ごめんなさい」

    女王試験が始まり50日目。
    自分たちの仲はすっかり深まり、そしてそれはこれからも変わらない。
    そう信じて想いを告げた矢先にアンジュから向けられた言葉。それをフェリクスは信じられない想いで聴いていた。

    「なぜ……」

    なんとか声を振り絞りそれだけを聞くが、目の前のアンジュは悲しそうな顔をする。

    「言えない。でも、私たちは結ばれてはいけないと思うの」
    「そう、わかったよ。君の気持ちは」

    何とかそれだけを伝えてフェリクスは森の湖から離れることにする。
    なんとか歩を進めるものの、本当は今すぐにでもうずくまりたい。だけど、それは美しくない。そう思い、自分を奮い立たせて館へと向かう。
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