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    Hino

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    Hino

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    🥀お盆に強制里帰りさせられる大尉の話

    しおらしかったのは最初だけで時が経つにつれ、いつもの調子を取り戻し最近はとにかく五月蠅い。

    生前散々振り回されていたではないか。今に始まった事ではない。
    そう自分に言い聞かせて早数か月
    「息抜きしたい…」
    やはり無理だ。
    ふと東洋の風習を思い出す。
    藁にも縋りたいとはこういう事だな、と考えつつ材料を揃えに向かった。







    「大尉、こちらをご覧ください」
    「なにこれ」
    エリクはナスに割り箸を刺した物体を指さし
    「しナんじゅ・スたいんです」

    真顔のまま答える。



    「は?」
    「略してしナスたです」
    「は?????」

    気でも触れたのかと言わんばりの目でこちらを見るな。
    お前に言われるのは心外だ。

    「どう見たってナスに割り箸さしただけじゃん!」
    「いいえ、しナスたです。貴方の愛機です。」
    「シナスタ四足歩行してないケド?!」
    「MA形態です」
    「エリちゃん頭大丈夫?ヤな事でもあった?」
    「お前と一緒にいるのに疲れたんだ!!察しろ!!お盆だけでも現世に帰れ!!!(たまには羽根を伸ばしてきてください)」
    「エリク中尉、本音と建て前」
    「では大尉!!良い休暇を!!!」
    火事場の馬鹿力というやつか無理やりしナスた(精霊馬)にゾルタンを押し込む。
    「俺様誰にも呼ばれるわけねーぞ!!」と言われた気がしたが知らん。
    私の平穏のためにどっかに行け。
    こうしてゾルタンの里帰りは始まったのである。





    「どこ行けって言うんだよ…」
    現世に戻されたのはいいが帰る宛がない。
    家族や友人と呼べる人間はいないし自宅は恐らく綺麗さっぱり片付けられているだろう。
    モナハンのクソ野郎の所などごめん被る。いや、調度品の一つや二つでも壊しに行くか。







    一方その頃
    「うん、こんな感じかな」
    昔ミシェルがこういう死者の弔い方もあるって言ってたな、と懐かしみながら手製の精霊棚を設置してみた。
    自己満足ではあるけれど友人たちがこの時期だけでも帰って来てくれたら嬉しい等と考えてヨナは手を合わせた。







    「ヨナは意外とマメよね」
    「本当は期待してたんでしょう、ミシェル」
    「からかわないでよ、もう!」
    ヨナの思惑通り幼馴染達は来てくれていた。

    …もう一人想定していないお客も訪ねて来たが。

    「あいつなら準備してるだろ…」
    ひとしきりストレス発散してきたゾルタンもヨナの元へ来た。
    先客の二人がなんで?という顔で見てくる。



    「なんでアンタがここに来るのよ」
    「うるせー!ほっとけ!」
    力任せに廊下の手すりを殴りつけるゾルタン。
    霊体でも柵が殴れるんだ、鉄製なのにちょっと歪んでるし強化人間怖いわ…なんてミシェルは考えていたが、そんな事をすれば当然大きな音がするわけで部屋の中から「何だ?!」とヨナの驚く声が聞こえてくる。
    リタは全く気にしていないようだったが。
    「ミシェル、行くところなかったんだよ、あんまり言わないであげよう」
    「…(ぐす)」
    「(容赦なさすぎるわリタ)」
    まもなく扉が開きヨナが慌てた様子で周囲を確認する。





    (見えてはいないだろうが)玄関でたむろするのも邪魔、という意見は一致し全員で中に入る。
    この時点でヨナは友人+αが部屋に来ているとは思ってもないのである。





    「今のは何だったんだ…」
    部屋の前の柵が歪んでいたのは誰かが植木鉢でも落としたのだろうと思いこんでヨナは中に戻ってきた。
    来訪者達は思い思いに部屋の中を見学していたりする。
    「ふぅん、ヨナは私の教えた事ちゃんと覚えてたのね」
    「おかげで私たちこっちに来れたもの、二人には感謝しないといけないね」



    ゾルタンは入ったはいいが大変居心地が悪そうに部屋の隅に突っ立っている。
    そりゃそうだ。生前の関わりなんて戦闘だけである。
    死ねば溶け合えるなんて言った気はするがお盆にヨナの家にお邪魔するなんて想定していない。
    そんなゾルタンを見て女子二人は疑問を口にする。



    「貴方が精霊馬なんてもの知っているとは思ってなかったのだけど誰かに吹き込まれたの?」
    「エリク中尉がしナスただの俺の愛機だの抜かして無理やり送り出されたんだよ」
    「…これ四足歩行よ?間違えてない?」
    ぷちん。ゾルタンの中で何かが切れた。だいたい切れてるとか言ってはいけない。
    「だったら!二足歩行に!!すりゃいいだろ!!!」
    ずかずかとお供え物に近づくと精霊馬(ナス)を手に取り割り箸を刺し直し乱雑に机の上に戻す。
    雑に扱ったせいでまた音が立ちヨナがビビる。


    「今度は何…えぇ…?」
    机の上をみれば四足歩行だった変形して二足歩行になっている。意味が分からない。
    ヨナは思う。不手際があって幽霊が怒ったんだろうかと。
    実際ヨナに落ち度はないので幾ら心霊現象の原因を考えても無駄である。

    ゾルタンが来てしまった時点で大惨事は確定していた。



    その後もことあるごとにミシェルとリタにつっこまれ続け、その度にゾルタンが暴れて騒音を出し、ヨナがビクビクするという賑やかなお盆が開幕した。(ヨナは全然楽しくない)



    「もういい、今日は寝よう。俺は疲れてるんだ。全部気のせい…」
    今日はよく物の位置が変わったり物音が絶えないけどきっと気のせい。たぶん気のせい。
    頑張って寝るんだ自分、と言い聞かせベッドに潜る。
    ようやく眠りに落ちようという時、部屋の隅に黒い影が見える。
    沈みかけていた意識が覚醒し始める。誰かがいる。
    目を凝らしてみると見覚えがあるジオンの士官服を着た男性。
    それが部屋の隅で体育座りでしょげている。
    「…ゾルタン?」
    うっかり名前を呼ぶとゆらりと影が動いた。
    ゆっくりとベッドの淵まで移動してきたゾルタンの顔は能面のように表情がない。

    「…も俺を…」
    ぼそぼそと呟くゾルタン。
    「な、なにか…「お前も俺を見捨てるのか!!」ちょっと待って!!話がみえない!!って痛っ!!」
    大声を出したかと思えば平手で頭を殴られる。
    やっぱり不手際あったのかな、俺はミシェル達を呼んだつもりだったのに。
    「ダメよ、ヨナがびっくりしてるじゃない」
    「そんなんだから部下に嫌われるのよ」
    「うわあああ!!ミシェル!?リタ!!?」
    声がする方を見れば幼馴染達もいる。
    ようやくヨナは今日の経緯を知る事になった。



    「そっか、大変だったね…」
    自分も生きた心地はしていなかったのだが、それ以上に凹みまくっているゾルタンに余計な事を言えば部屋が壊れる。
    出来る限りお盆の時期は穏便に済ませてお引き取り願いたい。その一心である。
    「俺の事そんなに邪険に扱わなくたっていいだろ…」
    ゾルタンからはジメジメした暗いオーラが湧いているように見える。
    勘弁してくれ、地縛霊にはならないでほしい、ヨナは切実に思う。
    「ゾルタンが良ければ、一緒にいてくれていい」
    ミシェルとリタがそれはまずいんじゃないか、とツッコミたかったのだがヨナが責任を取ってくれるならと口は挟まなかった。
    ゾルタンの顔がいつにも増してキラキラ(で邪悪)な笑顔を浮かべている。
    「ヨナちゃんは話が分かるねェ…」
    ニタァ、とゾルタンが笑ったのはスルーした。




    この後のお盆期間は平和なもので、「じゃあ、来年も忘れずにね」と言葉を交わし来客者は元の場所へ戻っていった。

    …一人を除いて。



    「やぁヨナちゃん遊びにきたぜ!」
    ゾルタンが定期的に家に来るようになった。
    なんでもエリク中尉が送り出すらしい。その気持ちは分らなくもない。

    ヨナの受難はお盆期間を超えても続いていく。
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    MEMO妄想小説2

    鏡舎にて…

    シキは、サバナクローのとある人物から借りた体操服を返しに鏡舎へ。そこでフロイドとジェイドに会う。

    このお話はフロイドとジェイドが出てくるシーンだけ抜き出したものです。
    監督生もここでは出てきません。なんでも許せる方どうぞです。
    シキは借りていた体操服を紙袋に入れて鏡舎に向かっていた。時間はすでに8時を過ぎており辺りは暗く生徒の姿もほとんどなかった。慣れない植物園での仕事を終え部屋に戻って来た後、うっかり眠ってしまい起きたらこんな時間になっていたのだ。学園の生徒でない自分が遅い時間に寮へ行くことは躊躇われたが今日返しにいくと自分が言った約束を破るわけにはいかなかった。

    鏡舎に着くと中を覗き込む。中には生徒達が数人立ち話をしており入りづらかった。
    仕方なく入り口の端で生徒達が帰って行くのを待っていたのだが、出る前に浴びたシャワーで身体と髪が冷えてきた。身体を抱きしめながら前ばかり気にしていたからか,背後に人が立った事にまったく気が付かなかった。

    「ヤドカリちゃん、こんな所でなにしてんの?」

    聞き覚えのある声と呼び名にシキは驚いて振り返った。声の主は思った通りの人物、オクタヴィネルのフロイドであった。フロイドは1人ではなく横には兄弟のジェイドがいた。ジェイドはシキの事を珍しそうに見ている。

    「今晩は」

    思わず困惑の表情のまま挨拶をしてしまったがフロイドはシキのそんな表情にはお構いなしであった。

    「髪の毛 1725