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    Hino

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    Hino

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    現パロ褪ロジェ。暑さにやられた知力9の文章をご照覧あれ。

    #主ロジェ
    hostRoger.

    ジジジ...部屋の外、申し訳程度に揃えられた街路樹からずっと聞こえてくる蝉の声が体感温度を上げている気がする。
    青年の課題が終わらないという話からロジェールは築15年の少々ガタの来た安アパートにお邪魔することになった。「自分でやるから」と青年は固辞したのだが「私は一日中自室に籠もってられるほど大人しくはないので」と半ば無理矢理顔を出しにきたのだ。
    ロジェールが指導してくれるなら早めに終わるかもと悠長に構えていたのは1時間前。それなりに整備された部屋であったが備え付けられている家電にまで予算は回っていないようで、この猛暑の中クーラーがご臨終する悲しき目に遭っている。朝まで降っていた雨で湿気は急上昇。太陽が真上に鎮座する頃にはセルフサウナの完成である。
    せめてもの抵抗に部屋の窓を全開にして扇風機を回している。

    当然耐えられるはずがなく2人して大汗を流しながら課題に向かっている。流れ出た水分を補給するため青年は冷蔵庫にあった麦茶を注いできた。
    「はい、麦茶。なにも準備してなくてごめん...」
    申し訳なさげに差し出されたコップを受け取りロジェールは表情を緩ませた。
    「ふふ、趣があっていいじゃないですか。ありがとうございます」
    「良いところ出身のお坊ちゃんみたいな事言う」
    「良いところ出身のお坊ちゃんですからね」
    「そうでしたねぇ!」
    自分の分のコップを机に置きドカッと座る青年。本当に何の縁でこんな男と知り合ったんだっけと疑問に思うほどだ。
    あれは生活費がギリギリで「キャンプして自給自足すれば水道光熱費浮くんじゃね?」と近くの山に出向いた時に、日暮れの茂みから出てきたのが熊じゃなくてロジェールだったのが始まりなのだが…閑話休題。



    日頃のフィールドワークで焼けた肌にうっすらと浮かぶ汗とほんのり紅潮した顔。静かにしてさえいれば教室に佇む高嶺の花そのもの。それが今庶民の生活感溢れる我が家で寛いでいるのだ。

    「なぁロジェール」
    「どうしました?」

    「熱中症ってゆーっくり言って」
    少しだけ暑さで頭が蕩けていたのだ。恥ずかしがればいい。
    青年の意図に気がついたロジェールの頬が暑さとは別の理由で赤く染まった。
    ははは、困っちまえ。いつも余裕のある友人が焦ればいいと思っただけで本当に言ってほしいわけではない。言い淀んでいるのを揶揄ってやろう。

    ふとロジェールが青年の腰に手をまわす。「あっついんだけど!」と抗議するより前に耳に息がかかるほどの近距離まで密着されてしまう。深緑の瞳が揺れて見えた。
    「ねぇ、ちゅー...しよう」
    そう囁くと少しだけ距離を取る。耳まで赤くしておいて悪戯っ子のように笑う彼に結局一本取られる羽目になった。
    ぶちり、と理性の糸が切れる気がした。この男は自覚してやってるんだからタチが悪い。相手が同性だと分かっているのに股座が大変元気になってよろしくないのだ。押し返してやろうとロジェールの肩に手をやったところで不満げな顔が目に映り、遠慮がちな声が発せられる。
    「あの......くれないんですか?」
    「なに?」
    「ちゅー...して、くれないんですか?」
    青年の顔が必死になって表情筋を抑えようとしても口の端がひくつく。それでもロジェールは絶対に自分から次のアクションを起こしたりしない。
    言い出したのはそちらなのだからエスコートしてくださいますよね?と言われているような気がした。
    「...ちゅーだけで済むと思ってる?」
    「どうでしょうね?貴方は怖い人ですから」
    いつもの余裕のある笑みを浮かべているように見えて、その視線の中の熱っぽさまでは隠せない。
    しばしの沈黙。外で賑やかに合唱している蝉の音がやけに耳に残った。
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    tomoe1218

    DONE2020/5/5発行のるろ剣夢アンソロジー「花綵-はなづな-」(@ruroken_ym_x )に寄稿させていただいた斎藤一夢小説です。再録解禁になったので早速。わたしは常に再録したいマンなので……ポイピク使ってみたかっただけなので、いずれ支部にも上げます。アンソロジー、まだ在庫あるみたいなのでよろしかったら〜。素敵なるろ剣夢がたくさん見れます。表紙からやべーですんで……
    【るろ剣】だいきらいなひと【夢】 人は私を小町と呼ぶ。もちろん本名ではないのだけど、いつの間にか定着してしまった。親しみが込められた呼び名だし、嫌なわけではなかったからそのままにしている。
     どうして小町なのか。理由は単純。私が蕎麦処で働く小町娘だから。ただ真面目に働いているだけなのに、蕎麦小町なんて呼ばれるようになっていた。率直すぎて素直に喜べないけれど、町に溶け込めているならそれでいい。
    「はい、天ざる二ツ、お待ちどおさま」
    「ありがとうねェ、小町ちゃん」
     私が働く蕎麦処は小さな店で、寡黙な店主、店員も私ともう一人だけだ。もう一人の店員である静さんは初産を控えていて、いまはお休みを取ってもらっている。なのでいまは実質二人でこの店を切り盛りしていた。幸いというかここは大通りではないし、お客さんも気心の知れた常連さんばかりなのでなんとかやれている。私が蕎麦小町ともてはやされた頃はご新規さんもたくさんいたけど、何度も繰り返し通ってくれるのは親父さんの蕎麦にこそ惚れた人だけなのだ。
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