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    Hino

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    Hino

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    AC6/G3×621♀長編。多重ダムの話で全然G3出てこないよ〜。

    野良犬疾走日和 1-4『これよりベイラム専属AC部隊レッドガンによる作戦行動を開始する
    突入しろ!役立たずども!!』
    聞き慣れたウォルターのものとは毛色の異なるミシガンの号令でACが動き出す。ルビコンに来てからずっと一人で任務に当たってきた621にとって、両隣にキャノンヘッドとヘッドブリンガー二機の味方が居るという状況は不思議な感覚だった。直前の最終ブリーフィングでミシガンが放った『愉快な遠足』を額面通りの意味で受け取り緊張とは別の胸の高鳴りを覚えていた。

    今作戦はチーム戦、ヴォルタをリーダー役として進行する。開始の合図と共にガリア多重ダムを臨める山岳地帯から三機は勢いよく滑走し始めた。
    「レイヴン、お前と俺で戦線を上げていくぞ!イグアスは周辺の索敵と支援射撃を...」
    ヴォルタの指示が下るより先に621は誰よりも前に突出し、イグアスはそれと競う様に前へと飛び出していく。気分が高揚していたのは621だけではなかった。
    解放戦線側のMT部隊のレーダー補足範囲に踏み込み、視認したらしい地上部隊の機銃がこちらを向く。事前打ち合わせではヴォルタと621のミサイルで弾幕を形成し隊列の乱れを誘い、崩れた箇所から各個撃破を狙う算段だった。だというのに早速隊列が乱れたのはこちら側だった。
    「お前らァ!!仕事を増やすんじゃねぇ!!殺すぞ!!」
    怒号と共にキャノンヘッドのミサイルポッドのハッチが解放される。オートロックが完了する数秒すら惜しい。マニュアルエイムで固定砲台周辺に弾がばらけて着弾するよう設定しヴォルタはトリガーを引く。ほぼ同時に621の駆るACとヘッドブリンガーからもミサイルが発射される。奇しくも同じ型のミサイルを積んでいた二人のミサイルが着弾する。運悪く直撃したMTから火柱が上がり、当たらなかったミサイルも地面との接触で広範囲に土煙を発生させる。視界不良に陥った解放戦線の前線部隊に追撃と言わんばかりに飛翔速度が緩やかなキャノンヘッドのスプリッドミサイルが到達、炸裂した。分裂した弾頭一つずつの威力は低くとも装甲の薄い機銃を黙らせるには十分だ。
    敵機が視認できないのはレッドガン部隊も同じなのだが621とイグアスは冷静にスキャンを走らせた。土煙の中から敵影を補足しオートロックを駆使し的確に残党へマシンガンを浴びせていく。スキャン機能が二機より劣るキャノンヘッドはレーダーでおおよその位置を把握し隊列から離れ状況確認をしようとしている機体に肉薄し至近距離からショットガンをお見舞いした。山から降りてきた強い風が視界を遮る白煙を押し流す頃には、立っている機体はレッドガン部隊の者達だけだった。
    一瞬の沈黙。が、制圧が完了したと判断した621とイグアスは目標の変電施設へ向かおうとする。チームで動いた事のない621が集団行動のタブーを犯すのは仕方ないにしても、イグアスまでそれに引っ張られてはヴォルタもたまったものではない。
    「イグアス!少しは落ち着け!」
    「ハッ!野良犬の世話をしろってか?やってられっかよ」
    多重ダム襲撃にアサインされてからピリついていたイグアスの不満がここにきて爆発しかけている。今朝の621の直接対峙で少しは冷めたと楽観視していたが戦場に出て再燃したらしい。元々集団行動が不得手なイグアスは組める隊員が限られるくらいには気難しい男である。ポッと出の独立傭兵が末席とはいえ番号を貰い、しかも強化人間の世代も同じとなれば初対面の印象は最悪だ。五花海の野郎はこれを予感していたのだろうとヴォルタは思っていた。
    「関係ねぇ、俺たちで終わらせればいい。そうだろ?」
    そうこうしている間に621は二つの目の変電施設に迫り、再装填の完了したミサイルを発射していた。イグアスが舌打ちしたのがヴォルタの耳に届く。頭に血が昇っているのは明らかだ。
    「よう、野良犬。お前のような木っ端は知らんだろうが俺達レッドガンは『壁越え』にアサインされている。この仕事は慣らしだ」
    イグアス自身、お前はレッドガン部隊でも何でもない、部外者なんだという威嚇程度の認識で口走っている。ほんの少しでも理性が残っていれば機密漏洩になりうると気がつけたが後の祭りだ。
    「こんの、馬鹿...!!」
    『G5!おまけとの交流に余念がないようだな...ついでに仲良く刺繍でもしてそのよく回る舌を縫い付けておけ!!』
    通信機越しだというのに身震いする迫力のあるミシガンの声に一同は閉口した。流石のイグアスも肝が冷えたのか静かだ。
    「ししゅう?縫い物のこと?遠足のあとで教えてくれる、のかな?」
    そんな中621だけがこの場に似つかわしくない話をしていた。ハンドラーがわざとらしく咳払いをする。
    スクール行事の遠足に来ているような幼い言動とは裏腹にACの操縦は熟練兵そのものでちぐはぐさが際立つ。行動を共にして数分しか経過していないがズブの素人ではないのはよく分かった。難なく二基目の変電施設が堕ちた。

    『遠足はここからが本番だ!気を引き締めてかかれ!』
    「チッ...いちいちうるせぇな」
    イグアスの文句は尽きないがようやくチームらしい統率が取れてきた。ヴォルタが高耐久の装甲を盾にラインを押し上げ、追従する621がタイミング合わせて弾幕を張る。更に後方のイグアスが撃ち漏らしを潰して前進していく。そうやって多重ダムの最奥まで辿り着く。最後の変電施設前にACを視認する。
    「聞こえるか、略奪者ども!我々ルビコニアンが屈することはない!」
    解放戦線側のMTが突っ込んでくる。声を掛け合うことはせずともレッドガン部隊は散開しつつ敵機を囲むよう位置取りをする。盾待ちのヘッドブリンガーが正面を陣取り相手の攻撃を誘い、621が側面に回る。教本通りの敵機を中心にしたL字のフォーメーション。
    「即席の割には悪かねぇ、な!」
    視認出来ていない方向からの攻撃に対応できるパイロットはほぼいない。ヘッドブリンガーに向け放たれた弾はイグアスの動体視力を待ってすればシールドを展開するまでもなくクイックブーストで回避された。相手のアラートを鳴らすために小刻みにマシンガンの引き金を引き続ける。本命は別だ。
    目の前のヘッドブリンガーにばかり目を奪われていた相手の視界に影が射す。頭部のカメラを向ける。
    大写しで独立傭兵のACのメインカメラの光と視線が合った。
    「おそいよ」
    振りかぶった左手のパルスブレードが解放戦線のACに叩きつけられる。肩パーツごとコアに大穴が開く。バチバチと露出した電気回路から派手に火花が散った。おそらくジェネレーターに誘爆する合図だ。621はバックブーストをふかして距離を取る。ノイズまみれの広域通信がから断末魔が上がった。
    「そこの独立傭兵...!!殺し、奪うだけの企業に与し戦士としての誇りはないのか!?」
    「...?わたしはたのまれた仕事、終わらせるだけだよ」
    「略奪者、どもめ...ッ!!」
    同じ言語を話しているはずなのに噛み合わない会話。抜けていて何を考えているのか分からない621は今や得体の知れない気味の悪さを覚えた。
    「ミシガンの野郎、何を拾ってきやがった...?」
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