亡霊騎士の話(仮)轟々と黄金樹が赤く焼け落ちる様を冷めた心で見下ろしていた。
狭間の地の生ける者達からの怨嗟の声も雑踏でしかない。一身に向けられた憎悪もまるで他人事のよう。
数多くの戦技を身につけ、心得のない魔術や祈祷も修めたが結果はこの様。
どんなに足掻いても唯の褪せ人の枠から抜け出せない事実だけが積み重なっていく。これまでも、きっとこれからも。
全てを壊してしまえば気も晴れるかと思ったが残ったのは虚しさだけだった。暴君は静かに王座を降りた。
叶わない願いを抱いてもそれをどうやっても捨てきれない。人気のなくなった円卓に輝く大祝福を前にその放浪騎士は仄暗い誓いを立てた。
ある時を境にリムグレイブではとある噂が囁かれるようになった。『ストームヴィル城には亡霊騎士が巣食っている』というものだ。狭間の地なぞ幾らでも生ける屍が彷徨いているのだから怪談には事欠かないのだが、どうやら違うのだ。
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