静かにしていれば本当にイケメンなんだよね、と珍しく事務作業に打ち込むゾルタンの横顔をしばし眺めていた。
集中しているのか全くもってこちらの視線に気づこうとしない。
深い意味はないのだけれどなんとなく、頭を撫でてみたいと思ってしまった。
そろりと手を伸ばし、ぽんぽんと上司の頭部に手を乗せる。
ぴくりと一瞬ゾルタンの眉間に皺が寄ったような気がした。
気にせずそのまま撫で続けると
「…おい、なんのつもりだ」
不機嫌ではないが呆れたような声音が聞こえてきた。
「大尉が真面目にお仕事されているのでヨシヨシしたくなっちゃったんですよ」
「酷ェな、俺様出来る大人だからちゃんとお仕事するっての」
「ではもっと褒めないといけませんね」
怪訝そうな表情を浮かべているゾルタンの頭をぎゅっと抱え、幼子をあやすように更に撫でる。
いやちょっと待て、と言われた気がしたがたぶん幻聴だと思い華麗にスルーする。
「お仕事する大尉、私とっても好きですよ」
「お前なァ…」
「静かにしていればカッコイイ所も素敵です」
「…一言多い」
「誰よりも頑張り屋さんなのも知ってます」
「…」
「大尉?」
反応がないので顔を覗き込もうとするが抱き着かれてしまってその顔を拝むことはできない。
が、耳まで赤くなっているので察してしまった。
いつもは上司がこういう顔をしているのだろうか。
ニヤニヤする口元が戻せなくて、ちょっと意地悪したくなってしまった。
「可愛いですよ、ゾルタン大尉」
わざとらしく囁くと勢いよく真っ赤な顔をこちらに向け、彼なりに力加減はしたのだろうが結構痛いデコピンを食らわせてきた。
「…お前、覚えておけよ!」
「えー、覚えてていいんですかぁ?やったー!後で思い出しちゃおーっと。」
この後、手痛い仕返しをされるのはまた別のお話。