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    Hino

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    Hino

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    🥀Sweet Time

    仕事終わりに同僚とコンビニへ向かう。明日は休み、帰りがけに軽い宅のみでもしようかと買い出しに来た。店内に入り各々飲み物やおつまみを吟味し始める。ヨナは二人でシェアしやすいかな、とナッツを手に取る。ゾルタンは総菜が置いてあるコーナーを見ているようだった。迷いなくスモークチーズやら揚げ物を籠の中にほおっている。
    食料品は十分と判断したのかゾルタンはヨナの方へ移動してきた。


    「何飲むか決まった?」と聞けば「給料日前だから虚無の酒」と即答されたが、彼の財布の中と身体が心配でならないためやんわりボトルタイプのアルコールを提案した。
    「ヨナちゃんの奢りってことで」
    「分かってるよ」
    「よろしい」
    ニィ、と笑ったゾルタンが可愛いので良しとしよう。



    あとは会計だけになり二人でレジに並ぼうとしていた所、ゾルタンの視線がデザート棚を捉えている事に気が付いた。そういえば休憩室でミシェル達が新作のコンビニスイーツが今週から店頭に並ぶとか話してたな。棚のポップを確認すればまさにそれだった。
    「デザートも買う?」
    他意はなかったのだが彼はレジの方へ視線を戻し
    「別に要らねーよ」
    あっさり断られてしまう。パステルカラーで見た目が可愛い、実に女子向けのスイーツ。
    男性が手に取るには些かハードルが高いように思えた。
    ゾルタンの事だ、俺の前でそれを食べたいとは言い出せないんだろう。顔には出さないようにしているが名残惜しいのは伝わってくる。
    気にするなと言っても頑なに断る事は目に見えている。彼に気遣いさせずに甘い物を食べてもらうには。ミシェル達はコンビニスイーツの他にもう一つ気になる情報を口にしていたっけ。




    荷物を抱えていない手で目の前の人物の肩をたたく。身体を向き直した彼に一言。
    「ゾルタン、今日の宅飲みは控えめにしよう」
    「なんだよ急に」
    ヨナはおもむろにスマホを操作し目的のページを開く。


    「明日は一緒に出掛けよう」
    表示されている画面を彼に向ける。
    目が見開き動揺しているようだが務めて平静を装っている。
    「へぇ…意外。ま、ヨナちゃんが行きたいなら付き合うぜ」
    口元が緩んでいるのには無自覚なのだが。
    「そういう事にしておくよ」
    ヨナの言葉にムッとしたゾルタンがその頬をつねる。
    全く、素直じゃないんだから。





    あくる日。集合場所の最寄りの駅に二人はいた。
    時間はお昼より少し早いくらいだったが、連れが見るからにそわそわしているので店舗の開店時間とともに入店する。昨日は結局おつまみを食べるだけ食べてアルコールは一杯だけ。というよりゾルタンが飲ませてくれなかった。言い出したのは自分だが彼がここまで本気で調整するなんてとヨナは苦笑した。

    恐らく同じ目的で来ているのであろう他のお客は女子同士、またはカップルといった顔ぶれだった。男性同士はヨナとゾルタンだけ。これは男性一人で入店は勇気がいる行為だ。昨日の反応から知ってはいたけど躊躇っていたのは丸わかりである。


    店内に入ればますます男性2人きりが際立つ、淡い色を基調にした内装が目の前に広がっていた。
    シンプルではあるが随所に女子受けの良いインテリアが散りばめられていて、他に入店している女子グループは楽しそうな声を上げて何枚も写真を撮っている様子だった。
    店員に案内された席も綺麗なレース生地のクロスがかけられ、テーブル端にはシュガーポットや小さな鳥を象ったカードスタンドにオススメメニューが載っていた。


    メニューだけをチェックしていたヨナは想像よりファンシーな見た目の店内に向かいの人物の顔色を伺う。誘う店舗を間違ったのではないかと心配で。
    だが予想外にゾルタンの表情は普段見せないようなもので「こんなに顔緩むんだ...」と新しい一面を見たような気がした。
    ヨナが戸惑っている間にゾルタンはグランドメニューを流し見しメニューホルダーへと用無しとばかりに立てかけ、別紙になっている目的のメニュー表をテーブルの上に広げた。

    「で、ヨナちゃん今日はお腹の調子どうよ」
    「結構食べれそうかな」
    「ふーん、そう」
    何故か俺の体調を確認するゾルタンの目がいつも以上に輝いている。まるで子供が親に欲しいものを買ってもらえた時のような。
    「じゃあ、これ余裕だろ。イイだろ?」


    白くて細長い指がさした先にあったメニュー表の写真はこの店舗で1番大きな、1mオーバーのパフェだった。


    思わずメニュー表とゾルタンの顔を何度も視線が往復してしまう。確かにこの店舗に来たのは特大パフェ目当てである。一応女子向けの通常の1.5倍サイズの取り扱いもあり、1人用から複数人で注文するサイズまで設定してある。
    てっきり50センチくらいのーーそれでも2人で食べるには大きいーーパフェを注文するものだと思っていた。
    まさか最大サイズを躊躇いなく選んでくるとは。
    コンビニスイーツを我慢していた彼はなんと慎ましいものだったか。
    「...食べ切れる?」
    不安が口から零れ出る。するとゾルタンの顔が曇って「悪ィ、ちょっとサイズ小さいのにするか」とシュンとさせてしまった。
    そんな顔させたくて誘ったわけじゃないのに。先程までのゾルタンでいて欲しいから今日はここまで来たのだからヨナの答えは決まっていた。
    「いいよ、1番大きいの頼もうか」
    対面の彼は珍しく毒気の一切ない笑みだった。




    注文から数十分、テーブルの上に特大のパフェがそびえ立っていた。飲み物も注文しておりヨナはコーヒーを、ゾルタンはティーポットで提供されるタイプの紅茶だった。このティーポットもまぁ可愛いこと。ゾルタンの私物に絶対ないと断言できるガラス製のソレは大変に写真映えの良いものだった。
    パフェ本体もカラフルなフルーツに洋菓子、アイスと生クリームがこれでもかと天高く積み上がっている。

    「アイス溶けちゃうから食べようか」
    「あー、待って」
    早速食べようとするヨナにゾルタンが待ったをかけた。何かと思えばスマホを取り出し何枚も角度を変えて写真に収めていた。外見から誤解されがちだがかなりマメなゾルタンである。普段は入店できない店舗だからこそ記録を残しておきたいのだろう。
    「周りの人達がやってるみたいに俺たちも一緒に写真撮ってく?」
    ヨナに悪気はない。だから目の前の彼がめちゃくちゃに動揺している点には気づかない。
    「嫌かな?」
    「えーと...あー......撮ろうか」
    断れるわけねーだろと内心呟くゾルタンを尻目にヨナもスマホを取り出し隣に立つ。インカメに設定した画面を確認しながら一枚。2枚目を撮ろうかと構えたがゾルタンがフレームアウトする。
    「ゾルタン?」
    「...写真もういいから食べようぜ。.....あとでいいから今撮ったやつ送ってくれ」
    後半の言葉がやけに小さく、食べ始めまでゾルタンは目を合わせてくれなかった。


    さて食べ始めてからはほぼゾルタンの独壇場であった。パフェを崩しながら「ヨナちゃんこのケーキとブラウニーどっち食う?」やら「俺チョコアイス貰うから」と驚異的なスピードで解体していく。
    ヨナは「ゾルタンが食べたいところ持っていっていいよ」と驚きながらも微笑ましく眺めている。
    半分を切った頃には甘い物を食べ慣れていないヨナが先に白旗を上げるも、ゾルタンは気にせず平らげていった。
    さて会計かと思ったらゾルタンは「完食記念でこれは別腹」といちごのフラペチーノを追加注文する。
    オーダーを取りに来た店員の引き攣った顔はしばらく忘れられないな、と満足そうにしている彼を見て自然と笑っていた。


    帰り道にゾルタンの方から「次ここの店行ってみたいんだけど付き合ってくれんだろ?」とヨナに提案があり、勿論二つ返事で了承してその日は解散した。




    週明けの昼下がり。同じオフィスで休憩していたミシェルとリタがとあるSNSの記事の話をしていた。
    「この間話してたスイーツお店の事、取り上げてるわよ」
    「わぁ凄い!大きいけど見た目が可愛いパフェだね」
    彼女らの横を通る間際、一瞬見えた画面の写真に心当たりがあって「え」と声を漏らしてしまった。
    突然声を上げるものだから2人も驚いてヨナの方を向く。
    「盗み見は感心しないわね」
    「あっ...ごめん、少しその話気になってたんだ」
    しどろもどろになってやっとのこと口から言葉を捻り出す。
    「ヨナもスイーツのこと興味あるの?ならこのアカウントおすすめだよ!」
    リタがスマホを貸してくれた。画面に表示されていたページには「もえる原石」などというアカウント名が写されていて、つい先日ゾルタンが注文した物と同じラインナップのスイーツとドリンクが掲載されていた。
    「(嘘だろ??)」
    後ろめたい事はないのに冷や汗がダラダラと流れていく。
    「毎回素敵なスイーツ紹介してくれるから更新楽しみなの」
    「そっ....そっか!うん更新楽しみだね...ははは...」
    写真をスクロールしていくと、ただでさえ止まらない冷や汗が決壊した。
    首から上はトリミングされているが、仲良くパフェの前でピースサインしている男性2人組はまさしく土曜日のヨナとゾルタン、その人である。
    「(ゾルタンーーー!!!!)」
    「男同士でスイーツってよっぽど仲良しよね、この人達...ってヨナ大丈夫?」
    泳ぎまくる目に止まらない動悸。
    そりゃ内緒にしたいよな!と心の中で合点する。
    「ななななんでもない!!ダイジョウブオレハゲンキ...」
    ハロのような受け答えしかできなくなったヨナの前に、件の人物が通りかかる。


    「何やってんだお前ら」
    今から休憩であろうゾルタンが事情を知らずに近づいてくる。
    垢バレしてるよなんて言えるはずがない。
    誰かが話し出す前にこの場を離れなければ。
    「ゾルタン!!ランチまだだろ!?」
    「おう、今からだけど」
    「じゃあ行こう!すぐにでも!!」
    力一杯ゾルタンの背中を押してその場から離れる。
    「痛ェんだけど!!」と抗議されても知るものか。
    「ミシェルもリタもまた後でね!!」
    「「いってらっしゃい」」
    仲良し男子2人組はとっととランチへ繰り出していった。








    「なんだったのかしら...」
    「案外あの2人の事だと思うよ」
    「リタったらなんの話?」
    「ひみつー」
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