自分の影の中にE旬くんを閉じ込めている受けのS旬。
閉じ込められている側のはずなのにS旬がE旬に会いに影の中に来ると「いらっしゃい」って薄ぼんやりと微笑んで出迎えてくれるE旬。
「3日と経たずに俺に会いたくなっちゃった?」
「…うるさい」
軽口を叩いてくるE旬にイラつくS旬。
「そう邪険にしないでよ。ここはおしゃべり相手がいないんだ。閉じ込めてる本人なんだから、分かるだろ?」
「……」
とても囚われている側とは思えないほど飄々とした態度を取るE旬を見て、主導権は自分にある筈なのにまるでS旬の方がE旬に囚われているかのような不快感に晒される。
事実、E旬へはS旬が自らの意思で会おうとしなければ会えない状況であるため、S旬がE旬に囚われていると言うのもあながち間違いではないが、S旬は頑なにそれを認めようとはしなかった。
「…お前は、俺に閉じ込められている」
「そうだね」
「……俺の許可なしにどこへも行けないし、誰と会うこともできない」
「分かってるよ」
「っ…!なんでそんなに…!」
「平気そうなのかって?」
主導権を握れない苛立ちが隠せないS旬に、E旬がニヤリと笑いかける。
その顔を見てギクリとしたS旬は、遅まきながらも癇癪を起こしそうになる気持ちをグッと堪えた。
「くっく…必死になっちゃってカワイイね。 俺はね、旬。お前さえいれば他には何もいらないんだよ」
「なに?」
予想外の言葉に警戒を深める。
「お前が俺をココに閉じ込めたのは何故?俺を誰にも見せたくなかったからだろ?」
「それは……お前は俺の、弱かった頃だから…」
「言い訳だな」
言いよどむS旬の言葉をバッサリと切り捨てて、E旬が追い打ちをかけてくる。
「お前は俺を独占したかったんだ。影の中で囲って、自分だけが見れて触れる、そんな場所に俺を連れてきたのが何よりの証拠だ。……お前の望み通りにしてやってるのに、何が気に入らない?」
「……………っ……」
「……ああ、わかった」
苦々しい表情を浮かべて反論の言葉を探すS旬に、E旬が優しく語りかける。
「俺に縋りついてほしいんだな?『ここから出して』と、そう言って泣き付かれたかったんだろ?俺からのお願い事を叶えてやる代わりに、何を要求するつもりだった?」
「そ、…んな、ことは」
愕然としつつもなんとか否定の台詞を口にするが、E旬は一笑に付した。
「言えよ。ここには俺とお前しかいない。『自分自身』になにを躊躇う?」
「……お、れ……俺は……」
「ん?」
「俺……お前に、……、っ!」
気が付くと、必死に言葉を絞り出そうとするS旬の目の前にいつの間にか近付いて来ていたE旬の笑みが広がっていた。
そのまま唇を奪われる。
「……こうされたかった?」
「……ッぁ、!」
顔が離れたかと思いきや次は耳殻をやんわりと喰まれ、吐息が耳をくすぐる。
「ふ、ぅ…!……う、んっ!」
突然、待ち望んでいた状況に置かれて頭が付いてこないS旬は、ふらつく体を持て余して近くにいるE旬に縋りついた。
「…いつまでも、ここでこうしていてもいいんだよ?ずっと側にいてあげる。ずぅっと、ね」
「………ん、……」
自分よりも背が高くなりガタイも良くなったS旬を支えて頭を撫でてやりながら、E旬はうっとりと微笑んで愛おしそうにS旬の事を見つめていたのだった。