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    rani_noab

    @rani_noab
    夢と腐混ざってます

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    rani_noab

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    三角シュガー。6の続き。私はモブ女が出張るBLが好き。

    「お前を呼び出して良かった」
    二日後。タルタリヤのマンションで久々に三人で顔を合わせた。タルタリヤの作った料理は本人の自信通りに美味しく、また家庭料理が多かったため、外食慣れしている佐神も満たされた。素直に賞賛を送れば、当然でしょ、といいながら嬉しそうに笑う。こうしてみれば年相応の青年なのだが、芸能界で何を経験していたのか、時折この青年は底知れない色の瞳をする。
    そういったのは鍾離だ。食事も終わり、泊まっていけば良いじゃんと言いながら酒を出そうとするタルタリヤに丁寧に断った鍾離は、そう佐神に視線を向けてきた。
    俺は来ない方が良かったよ。とは思っても口に出さない。その程度は大人だ。
    「お前の期待に添えて何よりだよ」
    「期待以上だ。なあ、公子殿」
    「まあね。初対面の時にそのまま断っちゃわなくて良かったよ。先生が認めなかったとは思うけど」
    「公子殿が本当に嫌がるのなら無理強いはしなかった」
    親しい者にはかろうじてわかる、愛しさの潜むまなざしを向ける鍾離に、タルタリヤは本当に?と返事をする。
    「じゃあもうちょっと俺の好みの仕事をさせてほしいんだけど」
    「見る人間の好みが極端に分かれる仕事はだめだ。それに怪我をしやすい仕事もな」
    ちぇ、と不満そうなタルタリヤがどんな仕事をしてみたいのか知らないが、どうせスリリングさを味わえるようなものなのだろう。ドラマでもスタントなしのアクションシーンをやりたがっていたが、初めてのドラマということで許可が下りなかった。ウェンティはさせたがっていたが、他のスタッフが必死に止めたのだ。まあ、この人気絶頂のアイドルに怪我をさせたなんてニュースになったら、ドラマに傷がつく。タルタリヤは残念がっていたが。仕方ないだろう。
    仲の良い二人を眺めながら、佐神は鍾離がいれてくれた璃月茶を飲む。鍾離が自分でブレンドしたものらしいが、食事の邪魔をせず、だがすっきりとして口直しに良い。
    「良いのか泊まっていかないで」
    「唯嘉が泊まらないというのなら、俺もやめておこう」
    「やめろその言い方。タルタリヤの圧が強くなる」
    実際泊まっていかないの?泊まっていけば良い思いをさせてあげるよ?という分かりやすい視線を送ってくるタルタリヤに、佐神は首を横に振る。
    「悪いな。やりたいことがあるんだ」
    「それって、珠蘭とのデートじゃないよね」
    思いがけないタルタリヤからの問いかけに、佐神より早く鍾離が反応した。
    「珠蘭?」
    「この前、唯嘉に声をかけてきた女性だよ。ほら、アナウンサーの」
    「ああ。彼女か。声をかけてきたとは?」
    タルタリヤが鍾離にこの前の出来事を話すのに、佐神はあっという間に二人が情報共有をしてしまったのを、なんだか感心してみていた。この二人を敵に回したら怖そうだ。逃げ切れるとは思っているが、より慎重になるべきのようだ。
    「気に入ったのか?お前は行動力のある聡明な女性が好みだっただろう」
    「人の女の趣味を断定するなよ」
    「違ったか?」
    首を傾ける鍾離に、佐神は違わないよ、と返事をする。
    「ずっとタルタリヤにかかり切りだったからな。交友関係を広げようと思ったんだ」
    「じゃあこの後電話するんだ?」
    佐神は首を横に振る。
    「会いに行くんだよ。彼女のおすすめだというバーでな」
    隠した方が厄介だと、どちらにしても厄介だが、そう判断した佐神の白状した内容に、タルタリヤは目を丸くして佐神を凝視し、鍾離はなにやら考えるそぶりをする。
    「お前たちが駄目だと言うなら断るよ」
    「構わない。お前が璃月の生活を楽しんでくれるのならな」
    「まあそうだね。俺は気に入らないけど、唯嘉を縛りたい訳じゃないしね。どっちかっていうとなんで俺や鍾離先生と行かないでいわゆる女子アナと出かけるワケ?って言いたいけど」
    「唯嘉が酒を飲んだらお前を守れないだろう」
    「分かってるよ。先生、俺は拗ねてるだけだから」
    「それも分かっているがついな」
    それから鍾離は佐神に視線を向けた。
    「この後、用があると言うなら俺は泊まっていこう。その方がお前の負担も少ないだろう。どちらにせよパソコンは持ってきている。どこにいても差し支えない」
    「先生、まさか俺の部屋に泊まってるのに仕事をするつもり?駄目だよ。ちゃんと俺を構わなきゃ」
    「む。だが公子殿、」
    「仲が良くて結構だが、そうと決まったのなら俺は出かけるよ」
    二人の瞳が佐神をとらえる。じっと見つめられて、佐神は視線を逸らすように立ち上がった。
    「ごちそうだま。タルタリヤ。先生も、お茶美味しかったよ」
    「またね。唯嘉」
    「ああ」
    「また明日」
    「迎えに来るよ。時間連絡しておいてくれ」
    「わかった」
    手を振って外に出る。わざわざ見送りには来なかった。
    一つ息を吐いて、佐神は歩き出す。
    仕事の時間だ。
    珠蘭にはいくつか頼みごとをしてある。仲は、きっとタルタリヤたちが思っている以上に、この数日だけで親密になっただろう。
    バーに入って名前を告げると、奥の席に案内される。背の高いソファは個室のように音と視線を遮った。どうやら先についたようで、待たせずに済んだ。
    ほどなくして彼女がやってくる。テレビに出ていたよりも綺麗な腕や首元を見せていてセクシーだった。
    「待たせた?」
    「いいや。待ったとしても楽しみだったから問題ないよ」
    「ふふ。誰にでもそういうこと言うの?」
    「人は選ぶさ」
    「私が選ばれたのなら、嬉しいけど」
    笑ってすぐ隣に珠蘭は座る。いわゆるカップルシートだ。内緒の話をするのには都合が良い。
    ウイスキーとカシスオレンジをそれぞれ頼むと、届くまで他愛ない話をする。バーテンダーが丁寧にグラスを置き、去って行ったのを見送ると、珠蘭は口を開いた。
    「やっぱり、唯嘉が気にしてるあの人が来てから、不穏な噂が流れだしてるみたい」
    前置きがないのは、二人とも今夜の逢瀬に目的があるからだ。
    「どんな?」
    珠蘭は身を寄せてそっと佐神に耳打ちする。
    「あなたの大事な王子様が、ドラッグをやってるってう、わ、さ」
    間近で珠蘭を振り向いた佐神に、珠蘭はくすりと笑う。
    「ドラマのスタッフを中心に出回ってるみたい。そのうち監督の耳にも入るかも」
    「いや。どうだろうな。噂が広まる場所を調整しているかもしれない。というか彼が知ったらむしろ大変だよ。誰!?そんな面白い噂を流したやつ!ボクが突き止める!とか言い出しそうだ」
    突き止めてくれる分には構わないが騒ぎになるに決まっていた。
    「そうかもね。あの監督さん、すごく面白いから。こんな情報で良いの?」
    「ああ。ありがとう。助かるよ」
    「そ。じゃあ私のお願いもよろしくね」
    微笑む珠蘭は華やかだ。一晩のお誘いをしたいくらいだったが、珠蘭が断るのは目に見えていたのでそうしなかった。
    「近々、動きがあるよ。そうしたら社長にも紹介しやすくなる。俺の紹介なら引き立ててくれるさ。君の実力なら後は問題ないんじゃないか」
    「あら嬉しい。そう、きっかけが欲しかったから。アナウンサーだけをして生きていきたくはないから。野心は持たなきゃね」
    「そういうところに好感が持てる。応援するよ」
    「ありがとう」
    にこり、と笑う珠蘭が矢張り脈なしで、佐神は苦笑した。珠蘭とコンタクトを取った際に、彼女が非常に察しが良いことに佐神は驚いた。口には出していないが、タルタリヤとの関係を察しているような雰囲気すらある。恐ろしくて聞けたものじゃない。
    「動きがあるって、具体的にはいつ頃かしら」
    「三日後、撮影が予定通りなら彼は動くだろう。俺が演技をする最後の日だ」
    「じゃあ見に行こうかしら」
    楽しみだと言いそうに笑みを浮かべた珠蘭に、佐神はああ、と返事をする。
    「面白いショーになると思うよ」
    「自信家ね」
    「じゃなきゃこんな仕事、してないだろ」
    璃月の人間で彼女が一番佐神のことを知っているかもしれない。
    金と契約で動くエージェント。交渉次第では、ボディガードや秘書のような仕事もする。
    しばらくは身を隠した依頼を探さないとならないな、と佐神は思う。一生分を遊んで暮らせる金は溜まっているが、仕事で忙しいくらいの人生が佐神には合っていた。
    「ね。あなたのこともっと教えて?」
    いっそ行きずりに近い関係だ。
    口外した方が不利益を被る。それくらいわかるだろう彼女には、少しくらい話しても問題ないだろう。
    佐神は口を開く。
    始まりは、そう。恋をしていた男に、振られたことからだ──。
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