甘い台詞をきみの口から「あ」
それきりしばらく固まった。
うぅ、と小さく呻く加州を、鶴丸は「続きは?」と急かす。
「うー、じゃなくて、何て言うんだ?」
後ずさる加州を追い立てるようにずいと身を乗り出し、鶴丸は加州の顎に指をかけた。
「啖呵をきったのはきみじゃないか。焦らす作戦かい?」
「べつにそういうわけじゃ……」
「じゃあ早く、ほら」
顔を背けて逃げようとしても、そう簡単にはいかない。不服そうな加州に向けられた清らかな天使のような笑みは、当の加州には意地の悪い悪魔にしか見えなかった。
こんな事態に陥った原因が加州にあるというのは、概ね本当だ。
夕餉の後、居間のテレビで審神者と数振りの刀たちが映画を観賞していた。古い洋画、しかも恋愛映画。鶴丸もなんとなくその場にいたが、一緒に観ていた刀に言われたのだ。
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