【鶴清】大遅刻バレンタイン2024 手のひらに載るほど小さな箱にかけられたリボンを解いて蓋を開けると、これまた小さなチョコレートが四粒入っていた。それぞれ色や形が違う。同封されていたカードとチョコレートとを見比べて、俺はとりあえず左上の丸っこい粒を口に放り込んだ。
「……ふむ」
そして思わず目を瞠った。ほろ苦いそれは舌の上でたちまち溶けていく。なるほど、これは美味い。活気に引き寄せられてふらりと入った店だったが、大枚はたいて買った甲斐があったというものだ。
そう、最初は全くの興味本位で。ただ見物に来ただけのつもりだったのだけれど。
黒い箱にかけられたリボンの赤や箔押しされた図案の、主張しすぎず、それでいて華やかなこの商品が目に留まり、どうも立ち去る気になれなくて結局買ってしまったのだった。
2884