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    ギギ@coinupippi

    ココイヌの壁打ち、練習用垢
    小説のつもり

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    ギギ@coinupippi

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    ココイヌだけどココは出て来ない。
    またモブが出張ってる。
    パフェに釣られてイヌピーがJKからココの恋愛相談を受ける話。
    逞しく生きる女の子が好き。

    #ココイヌ
    cocoInu

    特大パフェはちょっとだけしょっぱい。乾青宗はその日の夕方、ファミレスで大きなパフェを頬張っていた。地域密着型のローカルチェーンファミレスの限定メニュー。マロンとチョコのモンブランパフェは見た目のゴージャス感と、程良い甘さが若者を中心に人気だった。
     そのパフェの特大サイズは3人前程あり、いつかそれを1人で食べるのが小学生からの夢だった。しかし値段も3倍なので、中々簡単には手が出せない。もし青宗がそれを食べたいと口にすれば、幼馴染はポンと頼んでくれたかもしれない。そうなるのが嫌だったから青宗はそれを幼馴染の前では口にしなかった。
     幼馴染の九井一は、青宗が何気なく口にした些細な事も覚えているしそれを叶えてやろうとする。そうされると何だか青宗は微妙な気持ちになった。嬉しく無いわけでは無いのだが、そんなに与えられても返しきれない。積み重なって関係性が対等じゃなくなってしまう。恐らく九井自身はそんな事まるで気にして無いだろうが、一方的な行為は受け取る側をどんどん傲慢に駄目にしてしまうんじゃ無いかと思うのだ。
     九井はその点、理性的で自身をしっかりと持っている男だから見失わないだろう。だが青宗は甘やかされればその分だけしっかり寄り掛かってしまうタイプだと自覚がある。なんせ末っ子長男なのだ。姉の赤音が生きていた頃はとにかく甘やかされていた。両親も年取ってから生まれた青宗をそれは甘やかしていた。昔の話だけど…
     つまり、青宗は甘やかされるのを享受するととことん甘やかされてしまう。そうされる事に抵抗が無いし、際限なく我儘になっていく自信がある。自分に関しては甘すぎて何でも許してくれる幼馴染もその内そういう青宗を見限るかもしれない。イヌピー調子乗ってない?って、いつもは優しい眼差しが氷みたいに冷たい視線に変わるのを想像するだけでぶるりと震えそうになる。
     なので、青宗は特大マロンとチョコのモンブランパフェが食べたい事をずっと九井にも周囲にも隠し通して来た。それがとある事から食べられるかもしれないチャンスが巡って来た。代わりの条件は面倒臭い事なのだが、特大マロンとチョコのモンブランパフェは絶対食べたい。
     凄く面倒臭いがそれさえクリアすればマロンとチョコのモンブランパフェを食べられる。だからその日青宗は、いつも一緒に居る九井に用事があるとだけ告げてこのファミレスに1人やって来た。
     携帯電話のメールには奥の席で待つ旨が記されている。それを頼りにファミレスの扉を潜れば店員に1名様ですか、なんて確認される。待ち合わせしてる、と短く答えれば店員は心得たように頭を下げて立ち去っていく。

    「イヌピーくん、こっち!」

     歳の頃は青宗と同じくらい。近隣の高校の制服を着た女子高生がこちらに手を振ってくる。ぱっつんに揃った厚めの前髪の下のバサバサのつけまつ毛が瞬きする度に不自然に揺れていた。チークは濃いめのピンクでグロスにテカリと光る唇。姉もあんな感じで唇をテカテカさせていたっけな、と思い出す。脂っこい物でも食べたのかと親切心でティッシュを差し出したら拗ねられたのだ。
     待ち合わせていた女子高生の向かい側の椅子に腰を下ろした。来てくれてありがとう、と軽い感じで言われて頷いた。

    「パフェ頼む?私もケーキ食べちゃおうかな」

    「特大のやつだぞ」

    「わかってるって」

     笑った彼女は店員を呼び寄せると、青宗の言うとおりに特大マロンとチョコのモンブランパフェとミルクレープを注文する。飲み物はセットのアイスコーヒーにした。甘い物を食べるにはコーヒーは合うと教えてくれたのは幼馴染だった。
     コーヒーなんて苦くて飲めない、と言った幼い青宗に珈琲牛乳が美味しいと教えてくれたのは姉の赤音だったかもしれない。

    「今日はフツーの服なんだね」

    「パフェこぼして汚したら困るからな」

     いつも着てる白の特攻服。デザインも色も格好良くて気に入っては居るが汚れが目立つ。返り血なんて落ちないしクリーニングも出せないと九井がいつも呆れた顔して青宗に愚痴ってくるのだ。そこにチョコや生クリームの染みなんてつけてたら更にうるさい小言を言われる。
     それに特攻服で特大パフェを食べてる姿を誰かに見られるのも嫌だった。特攻隊長だの殺人部隊だのと言いながら可愛いパフェを頬張っていたら舐められる。でもパフェは食べたいから青宗は適当に私服を着てきた。これなら多少染み付いても大丈夫だろう、と。九井から貰った一体幾らするのか解らないシャツだが、彼の事だからそれなりに高い物なのだろう。

    「あ、そのアクセ。ブランド物じゃん。イヌピーくんそういうの興味無さそうだと思ってたのに好きなんだ?」

    「どこのかは知らねぇ。貰いもんだ」

    「だよねぇ、それペアで売ってるやつだし」

     青宗の左腕のシンプルなシルバーのブレスレットを目敏く見つけ指摘されたが、そういう物に興味が無いから高インだろうぐらいにしか思って居なかった。
     別に強請ったわけでは無いのだが、記念だからと渡されたから断れ無かった。確かにペアの物だ。よく解るもんだな、と青宗は目の前の顔見知りの女子高生に少し感心した。

    「特大マロンとチョコのモンブランパフェでございます」

    「そっちです」

     女子高生の世間話に適当に相槌を打っていたら、店員が二人掛かりでやってきて重たそうに青宗の目の前にパフェの器を置いた。青宗の顔よりも大きなそれには生クリームやフルーツ、それからメインのマロンのモンブランとチョコが盛られている。
     これは凄い。夢にまで見たは大袈裟だが、子供の頃から食べて見たかった大きいパフェを前に青宗は表情にこそ出ないがワクワクした。柄にも無く携帯で写真も撮ってみる。あとで九井に送ってやろうか。

    「マジ大きいんだけど。一人で食べれんの?」

    「いける。朝も食べないで来たからな」

    「ガチじゃん」

     そんなに食べたかったのか、と笑われたが青宗はそんなものは気にしない。握ったパフェスプーンをモンブラン部分に突っ込ませると口を開けて頬張る。栗の風味とチョコのほろ苦さ、それにふわふわの生クリームが混ざり合い絶妙な味が口内に広がる。

    「そんなにあんだから一口ちょうだいよ」

    「やだ。俺が全部食う」

    「まぁ良いけど。パフェ分は付き合って貰うからね」

     次々と口に頬張りながら約束は約束だからと頷いた。女子高生はそれでさ〜と、まず学校の同級生の話から始めた。彼女の中学からの同級生が黒龍に居る。それも青宗率いる特攻隊の中にだ。その男の事は顔を見てもあまりピンと来なかったのだが、ある日街中で休日に遭遇した時に青宗へ挨拶をして来た。その時に一緒に居たのがその女子高生だった。
     怖いもの知らずな年頃である女子高生は、同級生の男が止めるのも聞かずに青宗に話しかけてきた。最初はうぜぇ、と無視していたがめげずに彼女は声を掛けて来た。ココくんと仲良いんでしょ?と聞かれた時に幼馴染の名前が出た事で青宗は足を止めてしまった。
     そこからは押し切られる形で連絡先を交換させられた。電話は無視したがメールは勝手に送られてくる。大体が今ランチ〜だの、プリクラ撮ったから見て〜だのとどうでも良い事ばかりだったからスルーしたのだが。
     彼女の狙いは青宗と仲良くなる事では無かった。どうやら彼女は幼馴染である、九井の事が好きらしい。何処で会ったのかと気になってメールで聞けば、クラブでナンパされた、と返って来た。思わず舌打ちしたら近くに居た九井に何かあったかと聞かれたが、なんでもねぇと不機嫌に返した事もあった。そういえば。
     ナンパと言っても、聞いてみればVIP席に女を数人置いておく為だったようだ。青宗はクラブだのうるさくて人が多い場所は嫌いだから行かないが、九井は偶に取引相手とそういう所で会っている。
     そこに適当に声を掛けた軽そうな女を数人居させて、相手が気に入った女が居れば仲介したりする事もあるらしい。詳しくは知らないが、女側にも幾らか金は入るようだ。
     そして目の前の女子高生もその時、九井の取引相手に連れ出されそうになったが怖くて逃げ出したらしい。そんなつもりじゃなく、ただVIPに入って遊んでみたかっただけなのに…と泣いていたら九井がタクシーで送ってくれた。それから偶にクラブで会うときは話したりドリンクを奢って貰ったりしているらい。

    「ココくんって、めっちゃ格好良いじゃん。同じ歳の男達と全然違って落ち着いてるし、オシャレだし〜正直狙ってる子は多いからさぁ」

     スプーンがカチリと歯に当たる。舌で唇についたクリームを舐めながら、ココは昔から女にモテると同意してやる。そうすると、やっぱそうだよねぇ〜ライバル多そうと嘆いた。
     それから青宗へ、ココくんは彼女とか居る?と投げかけてきた。知らねぇ、でも特定の女は居ねぇだろと答えれば嬉しそうな笑みが返ってくる。嘘はついていないが、そういう顔をされると少しばかり気の毒にも思えた。何せ彼女はこのパフェを奢ってくれるのだから。

    「ココくんてさぁ、女の子への気遣いも出来るし優しいしなんかほんと他の男には無いもの持ってるっていうかぁ」

    「俺はココにあんたの事話すとかしねぇからな」

    「ええ〜ちょっとくらい良いじゃん。ココくんの事好きな女の子が居るとかさ、そういう事イヌピーくんの口から言ってくれたら多少は気に掛けて貰えるかもだし」

    「俺がココに女なんか紹介する義理はねぇし、そんな事したら多分怒らせる」

    「そうなの?ココくん怒るの?優しい所しか見た事無いから想像つかない。まあイヌピーくんは幼馴染だし仲良いからかもね」

     呑気な言葉にフン、と鼻を鳴らしてパフェの続きを口へせっせと運ぶ作業に戻る。美味しいのだが冷たくてこの量は味覚が段々麻痺してくる。時折インターバルにアイスコーヒーを飲む。こんなの九井ならばぺろりと平らげてしまうのだろうな、と思った。
     細身の割に食べる時は本当によく食べる。痩せていると言うよりかは太らない体質なのだろう。水泳もたまにしているから、あれで体力もあるし実は結構筋肉質だったりもする。

    「ねぇココくんの情報とか無い?なんでも良いからさ。好きな人の事ならどんな小さな事も知りたいから教えて」

    「情報たってそんなもんねぇよ。俺よりあんたの方が詳しいんじゃねぇか」

    「そんな事無いから。幼馴染なんだし、なんでもいいから」

    「…ココは、あれでいっぱい飯食う。マックとかセットの3人前くらいは普通に食う」

     ハンバーガーにポテトもドリンクもLサイズを3人前くらい余裕で食べているのを思い出す。それを聞いて意外だと、目を丸くしている。あのスタイルで?!と驚く姿に何となく青宗は得意気な気持ちになった。

    「見た目より実際細くない。結構腹筋とか割れてるし、力も強いぞ。持久力は俺よりもある」

    「そうなの?え〜頭も良いのに、男らしくもあるんだぁ。超良いじゃん」

     いつも付き合わされて、先に根をあげるのはこちらなのだ。嫌では無いが、それなりにこちらも大変なんだがなと思ったがそれは口にはしなかった。
     目の前の女はどうやら幼馴染の事を王子様か何か、美化しているようだ。確かに頭も良いし見た目も良いが外面も良いが、二人きりになれば普通の同年代の男とそんなに変わりは無い。
     目の前で何を想像してるのか、ウットリした顔の女子高生をチラリと見ながらあれで結構スケベだぞ、なんて言っても信じなさそうだなと思う。

    「良いなぁ。格好良いし、リッチな所も最高だし絶対付き合いたい。どうすれば付き合えると思う?」

     その質問に青宗は直ぐには答えず、いつの間にか半分以上減っていたパフェを更に口の中に運びこむとアイスコーヒーで流した。パフェグラスの底をスプーンがカツカツと音を立ててぶつかる。ここまでよく食べたなと自分でも思う。
     携帯電話のデジタル時計を確認すれば、もうここに来てから1時間は経っている。そろそろさっきから数分置きに届くメールを無視し続けるのも限界だろうか。

    「なあ、ココの事をあんたが好きになるのも解るよ」

     言いながらスプーンをテーブルの上に放り投げ、ズッと残り少ないアイスコーヒーを全て吸い上げる。それから携帯電話を手に取ると立ち上がった。
     こちらを見上げてくるつけまつ毛の目蓋がバサリと瞬いた。

    「確かに格好良いよな、ココは。でも生憎アイツは俺のだけど」

    「は?」

     青宗の発言にポカンと口を開けて呆気に取られている顔を一瞥すると、ごちそーさん、と軽くパフェの礼を告げた。約束は果たした。女のココへの気持ちを聞いてやる代わりに、特大マロンチョコのモンブランパフェを奢らせる。
     別に誰も九井へそれを伝えるだの、どうにかしてやるだのといった約束まではした覚えは無い。

    「そうだ、ココの事一つ教えてやるよ」

     椅子から立ち上がりながら、携帯電話をぱかりと開いて画面を見えるように傾ける。そこには『ココ』の表示と電話番号が通知されていた。

    「俺が1時間以上連絡入れないと、心配してすげぇメールと電話してくんだよ」

     青宗の言うとおり、応答が無いと一度切れた電話は再び九井からの着信を表示し始める。メールも15件と溜まり出していた。

    「俺の事、閉じ込めたいくらい好きなんだって。可愛いよな、ココは」

     ふ、と笑った青宗は口の横についた生クリームをペロリと赤い舌で舐めとった。その仕種にはとても見覚えがある。あの男の癖だと直ぐに気付いた。
     目の前で突然告げられたあまりの事態に思考がついて行かずに何か言葉を発しようとしても、まるで酸素を求める魚みたいにパクパクと唇を動かす事しか出来なかった。

    「彼女は、居ないよ。ココは」

     それだけ言い残すと、青宗はもうこちらを振り返る事も無くファミレスの出口へ向かって歩いていた。
     何なのだ、一体。どういう事なのか、これはと戸惑いながらその後ろ姿を目で追えばちょうど店の出入り口に知った顔が見えた。九井だった。
     店から出て来た青宗に2、3何かを告げると自然な仕種で指を絡め合うように手を繋いだ。その手首には先程見たペアのブレスレットが嵌められている。
     それを目に留めて、今さっき青宗が言った言葉は質の悪い冗談なんかじゃ無かったのだとじわじわ実感させられてしまった。

    「私って、もしかして好きな男の恋人にパフェ奢らせられたの…」

     自分でそれを口にしてサイアク、と脱力しながらも携帯電話のアドレス帳から一つの連絡先を削除する。
     それから店員を呼び付けると、特大マロンチョコのモンブランパフェを1つ追加で注文した。





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    ギギ@coinupippi

    DONEココイヌだけどココは出て来ない。
    またモブが出張ってる。
    パフェに釣られてイヌピーがJKからココの恋愛相談を受ける話。
    逞しく生きる女の子が好き。
    特大パフェはちょっとだけしょっぱい。乾青宗はその日の夕方、ファミレスで大きなパフェを頬張っていた。地域密着型のローカルチェーンファミレスの限定メニュー。マロンとチョコのモンブランパフェは見た目のゴージャス感と、程良い甘さが若者を中心に人気だった。
     そのパフェの特大サイズは3人前程あり、いつかそれを1人で食べるのが小学生からの夢だった。しかし値段も3倍なので、中々簡単には手が出せない。もし青宗がそれを食べたいと口にすれば、幼馴染はポンと頼んでくれたかもしれない。そうなるのが嫌だったから青宗はそれを幼馴染の前では口にしなかった。
     幼馴染の九井一は、青宗が何気なく口にした些細な事も覚えているしそれを叶えてやろうとする。そうされると何だか青宗は微妙な気持ちになった。嬉しく無いわけでは無いのだが、そんなに与えられても返しきれない。積み重なって関係性が対等じゃなくなってしまう。恐らく九井自身はそんな事まるで気にして無いだろうが、一方的な行為は受け取る側をどんどん傲慢に駄目にしてしまうんじゃ無いかと思うのだ。
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