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    ギギ@coinupippi

    ココイヌの壁打ち、練習用垢
    小説のつもり

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    ギギ@coinupippi

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    ココイヌ短編。
    お金に困ったイヌピーが怪しい仕事に飛びつく話。

    #ココイヌ
    cocoInu

    永久専属契約!「やべぇ…」

     通帳の残高を見て割と楽観的な方の青宗でもこれは不味いと危機感を覚えた。元々少ない金額とはいえあからさまに目減りしていく数字に項垂れた。
     ドラケンと二人でバイク屋を開業しては良いが、儲かる職業とはいえない。店の方は何とかギリギリ営業して行けては居るが自身の生活の方はままならない。
     相棒のドラケンの方は他に短期のバイトをしたり、育った家の家業を手伝ったりしてどうにかやっているようだ。彼は見た目は大柄で厳ついが、性格は責任感が強く割と社交的で常識もある。簡単に副業を決めてコツコツと働いて生活をどうにかしているらしい。
     一方、青宗の方は社交的とは言えない性格な上ロクな社会経験も無かった。バイトをと探してみても学歴で落とされたり、少年院上がりなのが何処かから漏れて直ぐクビになる始末。過去の自分の行動を今更悔いても仕方ない事ではあるが、なかなかに世の中の世知辛さを感じている。
     そもそも今まで青宗は金の事について深く考えた事が無かった。考えずとも平気な環境に身を置いていたからだ。黙っていても生活に必要な物は用意されていたし、眠る場所だってあった。当時から世話にはなっているとは思っていたが、一人暮らしを始めてみて自分が如何に甘やかされた環境に居たのかを実感した。それも、同い年のずっと一緒に居た幼馴染の男に。
     同情や哀れみからだったのかもしれない。それでも彼はいつも自分の側に居て、青宗のやりたいように支えてくれていたのだ。その有難みを感じる日々だ。
     そんな彼ともついに互いの行く道を違え離れ離れになって数年。生活の不便さはあれど、それよりもずっと隣に居てくれた存在の喪失感にふと寂しさを覚えた。せめて彼は彼なりに幸せにやっていればいいなと思った。
     話を戻すが、端的に言うと青宗は金に困っていた。通帳の残高は何度見ても増えない。家には売れるような物だってない。愛機であるバイクを売るのは最後の最後にしたい。しかし、副業にしたって宛も無い。
     もう食べ飽きた安売りの時に箱買いしたカップ麺だって底を尽きそうだ。電気ガス水道は何とかまだ動いているが、支払いが遅れている。このままでは全部が止まるのも時間の問題であった。
     そんな青宗の家のポストの中に、請求書に混じって1枚のチラシが入っていた。良くあるコピー用紙に印字されたポップな文字。まず目に入ったのは『急募』の文字。次に目に入ったのは耳かき屋、セラピストという聞きなれないワード。
     『耳かき屋さんセラピスト募集 20代前半男性限定 身長177cm 金髪の美人でハイヒールが履けると時給10000円アップ』
     明らかに怪しい。怪しさしか無い上にかなりニッチな募集であった。
     しかしとにかく給料は良かった。『日給50000円交通費支給、送迎もあり。住み込み可』の魅力的な文字に青宗は特に考えもせず書かれた電話番号に電話をかけた。100%採用される自信しかなかった。


     電話に出たのは知らない声で、思っていたそれとは違いガッカリしたが事務的に即採用を告げられ次の週には指定された住所の所までやってきた。都内でも有名な富裕層が暮らす高級タワーが立ち並ぶ土地だ。
     予め聞いていた暗証番号を打ち込み何故か登録されている指紋認証を掻い潜り、エレベーターに乗り込み伝えられていた部屋まで行く。
     インターホンは鳴らさずそのまま部屋に入れとの指示を受けていたからその通りに従った。玄関とロビーだけで既に青宗が暮らす築年数の古いアパートの部屋の大きさをゆうに超えていた。

    「あー、今日から耳かき屋?のバイトで来たものですけど…」

     大理石の廊下を抜けて自動で開いたリビングルームへ足を踏み入れ、広々としたソファに座る家主らしき男に声を掛けた。
     男はノートパソコンの画面に充血して血走った目を走らせながらこちらを見もせず、隣に座るように自分の横をポンポンと叩いた。
     言われるがまま近づいて横に座る。髪型はあまり変わったようには見えないが、顔の輪郭は引き締まり大人っぽくなったように思う。スッと切れ長で涼し気な目は淀み、隈を深く刻んでいた。元々細身ではあったが、少し痩せたような気がした。

    「はあああ、疲れたー」

     ちゃんと飯食ってるのか、あまり眠れて無いのかと聞こうと思うより前にドサッと膝の上に小さな頭が寝転んで来た。そういえば、耳かきする為に雇われたんだっけなと思う。

    「とりあえず、自己紹介からして」

     だらしなく膝の上に仰向けになりながら、青宗の方を見つめてひんやりと冷たい指で頬に触れて来た。雇い主である男にそう言われれば言うとおりにするしかない。

    「乾青宗だ。22歳、バイク屋をやってる。」

    「彼女はいるの?結婚は?」

    「独身だし彼女は居ない」

    「経験人数は?セックスはした事ある?」

    「…プライバシーの侵害じゃねぇか?」

    「高額報酬払うんだからこれくらい良いだろ」

    「経験人数は1人だけ。」

     聞いておいてふぅん、と気のない返事をしながらも口元はニヤニヤとしている。何を想像したのか予想がついて少し腹が立ったから形の良い額を指で弾けば痛っ!雇い主に暴力かよ!と抗議を受けたが、セクハラには屈するつもりは無い。

    「じゃあ、好きな奴はいる?幼馴染のイケメンとか」

    「別に。もう好きじゃない」

    「ええ〜んな事ねぇだろ」

     本当はずっと忘れられ無いとかだろ、と調子の良い事を宣うのが憎たらしいと頬を抓ってやった。痛ぇ、直ぐ暴力振るうの変わってねぇなとかなんやかんや騒いで居るが無視した。
     それよりもこちらは仕事をしに来たのだ。仕事をせねば金も貰えない。

    「そういうあんたはどうなんだ?どうせ女取っ替え引っ替えでだらし無い下半身なんだろ」

    「偏見じゃん、俺が一途で健気な男だって知ってんでしょ」

    「知らねぇー」

    「遊んでる余裕あるように見える?」

    「酷い隈だ。寝る間も無いくらい忙しいのか?」

    「可哀想でしょ、もっと慰めて」

     雇い主に請われれば仕方ない。青宗はよしよしと膝の上の頭を撫でてやり、それから目の下の隈も撫でる。気持ち良さそうに目を閉じる顔は変わらず幼くて愛おしいと思う。

    「ココは、いつも頑張り過ぎる。そんなに頑張らなくたって良いんだぞ」

    「…ココって誰、彼氏?」

    「ああ。まだ別れてなければそのはずだ」

    「でもそいつ、どっか行っちゃったんだろ?そんな薄情な男忘れちゃえよ」

     忘れちゃえ、とぽつりと零すと青宗の長くなった髪に指を絡ませて言う。それには答えずその手を取ると繋ぐように握れば弱々しく握り返された。

    「あんたは、恋人いんのか?」

    「…まだ恋人って思ってて良いんなら居る。」

    「どんな奴だ、あんたに選ばれるその金髪の男は」

    「金髪の男って言ったか?ふは、そうだな。見た目は凄い美人なんだけど、性格はぶっ飛んでて何するかわかんねぇし心配で目が離せねぇって感じかな」

    「じゃ、今も見てんのか。そいつの事」

    「見てるっつーか、その、ほら、彼氏だし知る権利はある?みたいな…」

    「ストーカーしてんのか」

    「彼氏だからストーカーじゃねぇし!」

     ムキになる口調に青宗は声を上げて笑えば、拗ねたのか膝の上でごろんと寝返りを打った。形の良い後頭部ばかりが目に入る。

    「俺、耳かきしに来たんだろ?耳かき寄越せ。すっげぇ綺麗に風穴開けてやるから」

    「イヌピー絶対鼓膜破ると思うから耳かきなんかさせるわけがねぇ」

    「いや、やる。耳かき屋さんとしてデビューする。そんで超人気の耳かき屋さんとして有名になる」

    「…鼓膜破壊屋さんにしかなれないだろ」

     これでも精密機器やエンジンのパーツを解体して組み立てたりしてるのだから手先はそれなりに器用なつもりだ。それを耳かき一つ出来ないと思われてはと心外だと、抗議すれば何故か耳を守るように指で塞がれてしまいムッとする。

    「じゃあ耳かき屋さんで募集するな!」

    「膝枕屋さんだとなんかいやらしい感じになんだろ!」

    「耳かき屋も膝枕屋も変わんねぇよ!」

     なんなんだ、その拘りはと思ったが耳かき屋としてやって来たのに断られては手持ち無沙汰だ。何をしていいものかまるでわからない。

    「大体見るからに怪しいチラシに飛びつく程金に困ってんのか?もうちょっと疑う気持ちとか持った方がいいぜ。イヌピー無防備過ぎて心配になるわ」

    「測ったようなタイミングでポストに突っ込まれたチラシ見てココだろうな、とは思ったけど。万が一を考えて一応これは持ってきた」

     ポケットを漁り取り出したのは、10代の頃から愛用しているバタフライナイフ。慣れた手付きで刃を見せると、ヒッと小さな悲鳴が聞こえたから、ちょっと面白かった。

    「い、イヌピー相変わらずぶっ飛んでんなぁ…」

     使う気は勿論無い、とナイフの刃を再び戻しポケットにしまいこんだ。ほぼこの美味すぎる話の相手は幼馴染であろうと見当はついていたが、万が一幼馴染を語る怪しい輩だった時は刺し違えてでも逃げようと思ってはいた。
     青宗が目を放した隙に膝の上に転がる雇い主がさわさわとこれ見よがしに、膝や太ももを怪しく触って来るから拳骨を落としておく。

    「そういや、ヒール履くと時給アップなんだったけ?」

    「…履いてくれんの?」

    「雇い主に言われたら履くしかねぇな」

    「…それ履いて、えっちしてくれんなら言い値であげる」

    「いいよ」

     あっさり承諾した青宗に驚いて、いいの!?とこちらを見てくるのが可笑しくて思わず笑ってしまう。自分から言い出した癖になんなんだ、と問えばだって!と身を起こして至近距離で見つめてくる。

    「ついでに、住み込みとかしてみない?」

    「嫌だ、ここは職場から遠すぎる」

    「大丈夫、バイク屋から近い所にも部屋あるから!」

    「なんで、バイク屋の場所知ってんの?」

    「そ、それは…ほら、そのあの…」

     歯切れが悪くなる雇い主に青宗は仕方ないな、と言わんばかりに笑ってやれば目の前の男は如何してか頬を薄っすらと染めてこちらを見つめて来る。

    「い、イヌピー、永久就職とかしてみない?」

    「バイク屋の片手間に出来るならいいけど?」

    「指輪買ってくる!!」



    その日から、青宗のプロフィールには本業バイク屋。副業に『ココの耳かき屋さん兼お嫁さん』が加わる事となった。
    尚、耳かき屋さんとして活躍する日はその後一度も訪れない。






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    ギギ@coinupippi

    DONEココイヌだけどココは出て来ない。
    またモブが出張ってる。
    パフェに釣られてイヌピーがJKからココの恋愛相談を受ける話。
    逞しく生きる女の子が好き。
    特大パフェはちょっとだけしょっぱい。乾青宗はその日の夕方、ファミレスで大きなパフェを頬張っていた。地域密着型のローカルチェーンファミレスの限定メニュー。マロンとチョコのモンブランパフェは見た目のゴージャス感と、程良い甘さが若者を中心に人気だった。
     そのパフェの特大サイズは3人前程あり、いつかそれを1人で食べるのが小学生からの夢だった。しかし値段も3倍なので、中々簡単には手が出せない。もし青宗がそれを食べたいと口にすれば、幼馴染はポンと頼んでくれたかもしれない。そうなるのが嫌だったから青宗はそれを幼馴染の前では口にしなかった。
     幼馴染の九井一は、青宗が何気なく口にした些細な事も覚えているしそれを叶えてやろうとする。そうされると何だか青宗は微妙な気持ちになった。嬉しく無いわけでは無いのだが、そんなに与えられても返しきれない。積み重なって関係性が対等じゃなくなってしまう。恐らく九井自身はそんな事まるで気にして無いだろうが、一方的な行為は受け取る側をどんどん傲慢に駄目にしてしまうんじゃ無いかと思うのだ。
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    somakusanao

    DONEパラレルです。タケミっちがイヌピのお嫁さんになるパラレルですが、ココイヌです。パラレルなので、書きたい放題です。たぶんバジさんをはじめて書きました。たのしいです。
    思った以上にタケミっちの話になってしまった。
    かみさまのくに 川端康成の有名な小説の書き出しに「国境の長いトンネルを抜けると雪国だった」とある。オレが鳥居をくぐり抜けたら、そこは神様の国だった。
     オレもね、おかしいなと思ったんだよ。こんなところに鳥居なんてあったっけ?って。
     そのときオレはバイトに遅刻しそうになって、携帯片手に走っていた。30分にタイムカードを押さなきゃいけないのに、携帯が示す時刻は27分。ちなみに職場まではバスに乗って20分。バス停にすら辿り着いていない。どうやったって無理だ。どこでもドアでもない限り無理だ。そんなオレの目の前に飛び込んできたのが鳥居だった。こんなところに鳥居なんてあったっけ?

    「あ、しまった」

     鳥居に気を取られたせいか、オレの手から携帯がすっぽ抜けて、鳥居の奥に飛んでいった。今日日、携帯がないとなにもできない。遅刻の連絡さえできない。オレは慌てて携帯を取りに行った。携帯しか見ていなかったから、鳥居をくぐり抜けたことに無自覚だった。
    7810

    somakusanao

    DONEみんな生きている平和軸D&Dでマイキーとココが働くことになった都合のいい設定です。そうなったらいいのにな!!!!!
    ドラケン視点なのでマイキーの評価が低いですが、マイキーはカリスマ店員です
    口の悪い男 D&Dモーターズに従業員が増えた。佐野万次郎と九井一である。気分にムラのある佐野はさておき、経理に強い九井の加入は心強い。じっさい仕事をはじめて一週間と経たぬが、九井には何度も助けられている。
     龍宮寺が礼を言うと九井は舌を出して「こんなこともできないで、よく営業できたな」とのたまわった。九井がまとめてくれることで、経理はだいぶ簡略化された。たしかに九井の言うとおりである。
     九井はたびたびそういう言い方をした。「なんでいらねー書類をとってあるんだよ。バカかよ」「整理整頓できないやつは、仕事ができないんだぜ」「あんな客は無駄なだけだ。さっさと切っちまえ」等々。 
     なるほど九井は口が悪いんだな。龍宮寺は納得した。なにしろ全員がヤンキー上がりである。いまさら仲間内で取り繕う必要はないし、むしろ清々しい。九井は口は悪いし、態度もでかいが、頭が切れて仕事のできる男だというだけの話だ。嫌っているわけではない。外面を取り繕われるよっぽどいい。そういう奴なんだな、と思っただけのことだ。
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