君が神様になるまで いつかあなたを超えるのだと告げた声があまりに眩しくて目を細めれば笑われたと勘違いしたのだろう、分かりやすくむすっと唇を尖らせるから今度こそ本当に声を出し笑ってしまった。
「なんだよ」
こちらへ言ったつもりのなさげな砕け過ぎている言葉遣いをいつから聞けるようになったか覚えていない。それ程の時間を共にした。時に食べ、時に踊る。けれど大抵は板の上だ。交わした会話より競った回数の方が余程多いだろう二人はしかし互いの瞬きを、呼吸を、上がる心拍数をどこかで感じ、不思議と通じ合えるようになっていた……と思っていたのだが。
「すまない。面白くて」
「……余裕だね」
「まさか」
そうやって子供のようにむきになる姿を誰も見られなくなる瞬間はいつかなんて話でなくすぐそこにまで迫っているのだとどうして本人だけいつまでも気付かないのだろう。自身の可能性にも。それを見続けた自分の内で芽吹きつつある感情にも。
しかし彼がそう思い込んでいるうちは簡単に醜態を晒してあげる訳にはいかなそうだ。強くて格好良くて一度も負けないラスボスなんて今時物語にも出て来ないが、もう少し。彼が気付いてしまうまでは。それくらいのご都合展開はスケートの神も許すに違いない。