努力賞あげます 身体いっぱいそれが溜まった瞬間、楽しいね、って言葉に変えてきた声へ振り向けば何故か黙ったどころか身体まで固まらせていた。何かと尋ねればぽつり。
君が笑っているところを初めて見た。
「うそ」
「嘘ではないよ。ああ、直接この目でと付け足すべきだったか」
足されたところで信じられない。
「本当に?俺、笑ってない?今は?」
取り出された鏡に映る顔は悲しくなるくらい眉も目も口も普通だった。お腹が空いている時や暇を持て余している時と変わらない。もしかして今までずっとこんな感じ?愛抱夢へ訊く。頷かれる。うそだ。
「……そんなに驚く事?」
だって愛抱夢はいつも嬉しそうだとか焦らないでとかその時俺がどう感じているか分かっているみたいに話してきて、だからてっきり彼の前だけ自分が特別わかりやすくなるのだと。
「それは無いな。君は僕の前でもずっとこんな顔だ」
「じゃあ何で?」
「頑張っている」
即答された答えが胸を優しく一回打って、心がじわっとあたたかい色の光に包まれる。
この人こんなこと言うんだ。俺のために頑張ったりするんだ。知らなかったな。へえ、そう。ふーん。 「え?今は笑ってる?どうして?……知らない、全然知らない」
俺は全く知らないし分からないけどもしかしたら愛抱夢は分かっているのかも。でもそれって不公平に思える。俺には笑った理由を訊いたんだから、そっちも教えてくれなきゃ。