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    20220314 欲負け初夜は最高

    ##微妙
    ##全年齢

    必然の晩餐 彼と過ごす日常はまあこの世にこれほど暢気で心穏やかな時間が存在していたのかと驚くばかり。慣れない分手間取ることもあるがしかしそれもまた愛おしい。日常もその中心に居る彼もたとえばポルボロンへするように扱いたいものだと思う。我慢できず口に入れてしまう瞬間までは壊さず崩さず大切に。そう思っていた筈。いや絶対思っていた。
     だから彼が新たな一歩を踏み出すまであと数日。ちょっとしたお祝いとして贈ったこの小旅行が天候の関係で急遽泊まりに変更になろうとあからさまに喜んでみせたりはしなかったし、用意させたのはツイン、触れるのだって悪夢よけのまじないを額と頬にひとつずつ。それだけで満足するつもりだった、のに。
     あれ、みたいな顔を彼がしたところでおかしいとは思っていたのだ。なのに眠気より早く潜り込んできた侵入者へ自分がしたのは馬鹿みたくどうしたのなんて問うことで。だからそれを喰らってしまった。
    「するの?」
     そこはせめてしないの?にして欲しかった。何でする寄りなんだ。
     しない、しない。外はうるさくここには自分達しか居らず何が起きようと誰にも知られないとしてもそれは決してしてはいけないことだ。体躯の内にある芯の強さを知っている。けれどそれでも自分の目は変わらず彼をやわくて脆そうなものとして見ていたし、明らか胃は期待していた。一口かじればどうなることやら。想像しただけで喉が鳴る。色々な意味で。
     だから今夜君に何もするつもりはないよと一言返し彼をベッドまで送り届けて必要とあらば寝かしつけ。それが自分のすべきことだっただろう。わざとらしいほど子供扱いすれば彼だって諦めた筈だ。多少機嫌を損ねてもどうにか出来る。解っていた。
     しかしその、正当化するつもりはないがおかしな問いをもろに受ければ少々のよくない影響は出るものだ。自分の場合は行動だった。どうかなとはぐらかす素振りで彼をより内へ招き肯定はしないにしても触れるのはやぶさかではないとうっかり示してしまった。己の思慮に欠けた行動が最後の一押しとなり彼を断崖へと飛び込ませたのは間違いないだろう。
     暗くとも触れたのが唇であることなど分かった。それが偶然でないことも。
     一応は驚いた。してくるよりねだることの方が余程多い彼から、了承さえ取らずいきなりとは珍しかったので。しかしその程度。ませた子供がするような押し付けるだけのキスが頬と口を行き来しても沸き立つものは庇護欲ばかり。微笑ましく見守る余裕すらあった。呼気と違う生温さが唇を掠めるまでは。
     一度顔を離し様子を伺うようにじっと動かなくなった彼はこちらの何を読み取ったのか、また当たり前のように唇で、そして舌であろう温いそれで触れてきた。 泣けるほど下手では無いが慣れてもいないのかやはり伝わる愛はさほどではないのに閉じた唇を開くよう催促さえされないことを救いのようだと、そう感じた己に力が抜けた。情けない。そんなのもし求められたら断れなかったと自白するのと何が違う。
     触れる唇も服越しに肌をなでる手も彼のもの。けぶった空気は彼の願望彼の欲。解っているから幼稚なそれから逃げられない。ひとまず飲み込んだところで愛は愛だ、程度がどうであれ絶えず注がれれば酔うには充分。もういいのでは。彼が望んで自分も望んでいるのだし。脳が霞む度わっと押し寄せる悪魔の囁きを一蹴出来ず嘆いたとき、闇に慣れた目がほんのり濡れた瞳を、鋭敏になりつつある耳が微かな囁きを捉えた。
    「……あってる?」
     合ってる、だろうか。どちらかと言うと大間違いだがそう一言で切り捨てるのも薄情に感じられるし問いでなく確認ならば何かしら言葉で応じるべきだろう。冴えた頭で冷静かつ的確な判断を下し片方閉じたままでするものでもないだろうと答えれば「そっか」と手が口元へ。こじあけろとは言っていないが。
     いくら彼に甘くしてきたとはいえここまで雑な扱いも受け入れると思われているなら少々遺憾だ、そうでない事を教えなければならない。わずかに入れた舌をあんまりのたのた動かしてくるのもわるかった。待っていられずこちらから触れて、それでびくついたのもどうかと思う。今まで散々好きにしていたことを忘れたかのように吸うだけで声をもらして、簡単に顔を真っ赤にして。そんないかにもうぶなふりなんてされたら止め時が解らなくなる。触れていた手を真似て、けれど彼がそうしたよりかずっと煽るようにその肌を撫でてやりたくなるじゃないか。
     望み通り弄くられるうちに随分喋るのが下手になった彼が上擦った声でわかったと繰り返すので放してやればやめるかと思いきや今度は向こうからきゅうと絡み付かれた。どうやら本当に解ってしまったらしい。まいったなあと吐いた溜め息は言い訳の余地なく熱を帯びていた。
     外は静かになりそうもなく部屋へ近付く者は居ない。
     はだけた裾から染まった肌を見せつけて、二人以外知らない表情で食べあおうよと彼が誘う。
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