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    yowailobster

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    20220911 ここにいたい 気付きたくない
    月見えてないとき書いた

    ##暗い
    ##全年齢

    月影さえ厭わしい どこにも見えないならどこにも居ないのと同じだと思えないのは知っているからだ。思ってしまえばその瞬間が最後。ようやく手に収めた小さな世界は終わりのときを迎えるだろう。
    「愛抱夢」
     声に振り返る。慌てたように階段の手すりを掴んだランガは物音が他の者の目を覚ますことを危惧したようで爪先だけ使い静かにかつ一息にこちらまで駆け降りてきた。ぽつぽつ点いた灯りが彼の顔を曖昧に照らす。起きたばかりらしく頭頂部から数本あらぬ方向へ跳ねた毛をなんだか可愛いなと思ったが口にはしない。それは彼の知る己では無いから。今は嬉しそうにそして出来る限り力なく微笑むべきときだ。
     案の定こちらにつられるように表情を変え、最近よく見せるようになった璃々しく寂しげな笑みでこちらへ近付き、こちらが丁度良さそうなところでふらつかせておいた手を取った。
     引きずるほど強くなくその場に留まらせるほど弱くない力加減でこちらを寝室へ連れて行く手は温かい。かすかな、強く握り締めたい欲求をそっと抑え込む。このじわりじわりと沁みる温度こそ今の自分が望める最上。不幸を装い、傷を偽り、誠実な彼の良心に訴え受け入れさせた距離だ。
     共にベッドに入った彼が眠れないようなら照明を点けていようかと提案するのにゆっくりと首を振る。無意識じみた手つきで体を擦れば体近くの空白が埋まった。触れ過ぎず、触れなさ過ぎないように、そうしていることを決して悟られないように注意して彼の熱だけ抱きしめる。深夜こちらがベッドから抜けだしていることに気付き探してくれる、このひどく優しい関係の先を望むことはそれを崩壊させることだった。だからこの部屋に光は要らない。光があれば気付き、気付いてしまったらきっと思ってしまう。寒くないかと問うてくる彼。その目に映っているかわいそうな誰かのどこにも自分は。
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