【忘羨】クリスマスの夜に本編にはまるで出てこない現パロ設定 ~忘羨編~
(※読まなくてもそう問題ないですが、前提程度に)
★藍忘機(20代後半)
高校で初めて魏無羨に出会い心惹かれるものの、想いを告げぬまま卒業と同時に疎遠になる。
大学卒業後は実家の経営する大企業に就職、持ち前の有能さでエリートコースをひた走る。
それから数年後、突然魏無羨からヘルプコールをもらい(何故自分に?)と思いつつも高熱で苦しんでいた魏無羨を救出、快癒するまで甲斐甲斐しく看病をする。
快癒後、一人暮らしをする魏無羨の荒れた暮らしぶりを見かね半ば無理矢理自分のマンションでの同居を承諾させる。その後は紆余曲折の末、想いを通じ合わせる。
今は在宅で仕事をしている嫁の毎日の出迎えが何よりの楽しみで、最近雰囲気が柔らかくなったと目下の評判。
ところで天天の方は? もちろん現パロだろうと「天天就是天天」。
★魏無羨(20代後半/藍忘機と同い年)
フリーランスの在宅エンジニア。高校時代は藍忘機とそこまで親しくなかった(避けられていた)。
大学卒業後はお世話になっていた江家を出て一人暮らしをしていたが、ある日インフルエンザに罹患し死にそうになる。ふらふらの状態で電話をかけ江家に助けを求めたつもりが、間違えて藍忘機の番号を押してしまい彼に救出された。
その後、普段の荒れた生活ぶりがばれて強引に藍忘機のマンションに連れていかれる。最初はこんな真面目な奴と同居なんてめんどくさいと思ったものの、家は綺麗だし家事はやってくれるし顔はいいし意外と優しいし「あれ、この生活結構快適じゃないか?」と気付き居座る。
紆余曲折の末、昔から好意を持たれていたことが分かりその後はラブラブバカップルとなり果てる。
藍忘機を(性的に)煽るのが大好き。その結果毎回酷い目にあうが学習はしないしする気もない。
酷くされるのも藍忘機相手ならやぶさかではないどころか結構好き。毎日幸せ。
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コートの裾から寒気が入り込む。寒さには比較的強いはずの藍湛ですら今日の冷え込みはなかなかに厳しいものがあるのだから、今朝の天気予報で言っていた“今季最強寒波襲来”の言葉は嘘ではなかったということだろう。
自宅で帰りを待ってくれているはずの恋人は昔から寒いのが苦手だったはずだから、どう過ごしているだろうかと不安になる。もちろん、室内にはエアコンもあるし同棲を始める際に彼のため設置した床暖房だってあるのだから寒さで震えていることなどあるはずはないのだが、数年来の片想いの末にようやく手に入れた想い人のこととなると普段の冷静さなどなくなってしまうのが藍忘機という男である。足早にマンションまでの帰路を急ぎ、自宅玄関のドアノブに手をかける。しかし鍵を開けようとしたところで、既にそこが開いていることに気付いた。不用心な状況に不安が胸をよぎり慌てて中へ入ると、その瞬間愛おしい声と共に勢いよく温もりが胸に飛び込んできた。
「へへへ、藍湛お帰りー! 今日も仕事お疲れ様っ!」
「ただいま、魏嬰」
ぎゅう、と抱きつき魏嬰は満面の笑みで藍湛を見上げる。いつもと同じく熱烈な出迎えと愛らしい笑顔、しかし今日の彼は普段と少し違っているところがあった。
「……うさぎの耳?」
魏嬰の頭の上でぴょんと立っている赤色の長い耳を見て目を瞬かせると、よくぞ気付いてくれたと言わんばかりのきらきらしたまなざしが返ってくる。
「そう! でもそれだけじゃないぞ、ほら見て見て」
悪戯を仕掛けた子どものように笑い、魏嬰は抱きついていた腕をほどく。それから改めて藍湛の前に立つと軽やかな動きでくるりと一回転した。
魏嬰が身につけていたのはノースリーブの赤いミニワンピースと、襟元と裾を白いファーで飾られた同じく赤色のケープ。この時期、量販店のパーティーグッズコーナーでよく見る類の衣装だ。身長百八十センチオーバーの成人男性が着るには少々厳しい衣装のはずだが、不思議と見事に着こなしている。残念なところを上げるとすれば、布地が安っぽいこととややサイズが合っていないことだろう。魏嬰の腰が細すぎるのか、布が余っていささかシルエットが崩れている。
「せっかくのクリスマスだしさ、面白いかなーと思ってそれっぽくサンタコスしてみた! 後ろにはしっぽもついてるんだぞ~」
ほらここ、とスカートに取り付けられたもふもふの白いしっぽが藍湛に向けられる。その動きに合わせてケープと同じように白いファーで飾られた短い丈のスカートがひらりと翻り、裾から昨夜の情交の痕跡を色濃く残した白い太ももが覗く。どうやらこの格好をするための準備は万端にしていたようで、ただでさえ薄いすね毛まで完璧に処理しているという念の入れようだ。
「魏嬰、サンタクロースにうさぎの耳は生えていないと思う」
「ん? まあそりゃそうだけどさ、可愛いじゃんうさ耳」
「それにこの時期にそんな格好でいては体が冷えて風邪を引いてしまう。これを着て」
藍湛は自分の着ていたコートを脱ぐとすぐさま魏嬰に掛けてやる。体温を吸ってぬくぬくと温かなそれで包むようにしてやると、魏嬰は気持ちよさそうに瞳を細めた。
「ありがと。でも部屋ん中はあったかいんだから大丈夫だって。藍二哥哥は本当心配性だよなあ」
「今日は今季最大の寒波なのだから油断をしてはいけない。そもそも部屋の鍵を開けたままにしていては駄目だ、不用心すぎる。もし誰か不審者が入ってきたらどうする」
「あ、さっきのこと? 大丈夫、開けっ放しにはしてないって。お前が下の入り口に着いたときに“これから帰る”って連絡くれただろ? だからそのときに開けただけ。第一ここはオートロックだし警備も厳重なんだからそんなに心配する必要もないだろ」
「駄目。万が一ということもあるのだから、今後は私が帰ってきて鍵を開けるまでは開けないで」
「はーい。分かったよ、次からはちゃんと守ります」
これが他の誰かから言われたのなら右から左へ受け流してしまうだろうが、藍湛から言われれば魏嬰は素直に聞く。自分にだけ向けられるその従順さに愛おしさと満足感を覚えていると、魏嬰はにやりと笑ってからかうように藍湛に体をすりつけた。
「それはそうと、どうせあっためてくれるならコートよりも持ち主本人の方がいいなあ。っていうかこういう格好、藍湛は嫌いか? お前が嫌ならもうやめるけど」
「……」
わざとコートの前を開きケープを留めていた胸元の紐も緩めて、隠されていた首元や鎖骨を見せつけてくる。そこにもやはり昨夜の痕跡が赤い花のようにあって、藍湛の耳の先が薄赤く染まる。
「こら、目逸らすなって。ほらほら~、正直に言ってみな?」
「……、……嫌い、というわけでは……ない」
「へえ! なるほど、藍二哥哥はこういうのが好きなのか。はは、えっち~」
「そういうわけじゃない。君が着るならなんだっていいというだけだ」
「ふーん? じゃあトナカイの格好でも?」
「うん」
「チキンの被り物でも?」
「うん……うん?」
チキンの被り物とはなんだろう……想像がつかない。
「そういうのも売ってたんだって。さすがにあれはちょっとスベりそうでやめといたけど。んー、じゃあ……裸でも?」
「……うん」
「はははっ、素直だな! ったく、俺の恋人は本っ当に可愛いんだから!」
藍湛の返事の何が気に入ったのか、魏嬰は満足げに頷き笑みを深める。
「よしよし、前の二つは用意してないけど三つ目だけはあとでたっぷり見せてやるよ。でもその前に……」
魏嬰は玄関のシューズボックスの上に置いていた袋に手を伸ばすと、中から取り出したものを有無を言わさず藍湛の頭に被せた。その動きは素早く、被された物の全体ははっきりと見えなかったが、どうやらトナカイの帽子のようだった。
「魏嬰、これは……」
「はは、可愛い! 藍湛、そのトナカイすっごくよく似合ってるぞ」
はしゃいだ声を上げ、魏嬰は藍湛に抱きつくと柔らかな唇を軽く藍湛の唇に寄せた。勢いよく飛びついてきたせいで体を包んでいたコートは落ちてしまったが、魏嬰の体は既にとても温かかった。
いまいち状況が掴めないままキスを返そうとすると、魏嬰は藍湛を押しとどめ代わりに腰を下ろすよう促した。戸惑いながらも玄関先の廊下に座るなり、すぐに魏嬰が向かい合わせの状態でまたがってくる。大きく足を開いているからスカートが余計にまくれ上がり、指の跡と所有の証が幾重にも重なり合った艶めかしい太ももがさらに眩しく晒される。それを意識しているのかいないのか、魏嬰は蠱惑的に弧を描いた唇を舌先で軽く舐め、挑発するように藍湛を見た。
「サンタと言えば、トナカイに乗るものだろ? だから今夜は羨羨サンタがトナカイ藍湛にたーっぷり乗ってあげようと思って」
「……クリスマスに角があるトナカイは雌だというし、サンタが乗るのはトナカイ自体ではなくトナカイが引いているソリでは?」
「お前は本当に真面目だなあ。細かいことは気にしなくていいの、これは俺がしたいだけなんだから。……それとも藍湛はしたくない? もうなんか硬くなってきてるけど?」
「……っ魏嬰、上であまり動かないで……」
「あ、また大きくなった。どうする藍湛、するか? それともしない?」
「…………する」
「ははっ、素直なお返事でよろしい! それじゃ、そんな可愛いトナカイさんはサンタ自らいっぱい労ってやらないとな」
満足そうな笑みを浮かべた唇を、今度こそ止められることなく塞ぐ。聖人が生まれた日には何とも似つかわしくない恥知らずなサンタだが、世界でただ一人、自分のためだけのサンタクロースなのだからこれはこれでいいのだろう。藍湛はひとりそう納得し、最愛の恋人の触れ心地のいい素肌を遠慮ない手つきで愛撫した。