花屋さんと警察官パロ熱く火照った頬を抑えながら急いでパトカーに乗り込み、勢いよくドアを閉めた。頬に触れた感触と熱が、キスをされたという事実を突きつけてくる。
(違う、これは外が暑いからなのっ!別にき、ききキスされたからなんてそんな…!)と邪念を打ち払うかのように顔をブンブンと横に振って、運転席の先輩に視線を向ける。
「夏彦先輩!早く行きましょ!」
真っ赤な顔でミニブーケを手にしながら、車に乗り込んできてドアを思い切り閉めた寧々に、運転席にいる夏彦は驚いて目をぱちくりとさせたあとニヤリと笑みを浮かべていた。
「……な、なんですか?」
「へえ〜、あれが寧々ちゃんの彼氏か〜」
「ち、違いますっ!」
「ふーん、お似合いだったと思うけどなあ」
「そういうのセクハラっていうんですよ!?」
「怖っ!?セクハラって言われちゃうと困っちゃうよな〜」
夏彦はククッと笑いながら、ギアを入れ換えて発進させる。
意外と運転の上手い彼は、面倒見のいい優しいイケメンだ──過去に犯人に人質に取られていた、などなにかと残念なところもあるが。
「は、花子くんは…そういうんじゃ……」
「……さっきの人、花子って言うの?」
「はい」
「なんで花子?」
「お花屋さんだからか、そう呼ばれてるみたいです」
「へぇ〜不思議な理由だね」
サイドミラーに映るFlower Shop Kamomeにちらりと視線を向ければ、先程の出来事と花子の頬の感触を思い出してしまう。彼から手渡されたミニブーケに視線を落とす。
「花束もオシャレだねぇ、さすが花屋」
「?」
「寧々ちゃん花言葉知らないの?」
「……少しだけ知ってます。あなただけ…見つめ………あっ…」
「そうそう。ヒマワリは七本で密かな愛、って花言葉もあるらしいよ」
それを聞いた瞬間、燃えてしまっているかのように顔が再び熱くなっていく。
「寧々ちゃん、顔真っ赤だよ」
必死に顔を隠している寧々を見ながら、夏彦は青春だねぇと楽しそうに笑っていた。
頬が熱いのは、きっと夏の暑さのせい。