放課後、なかなかやってこない寧々を迎えに行こうと、花子と光は校内を探し歩いていた。
「ヤシロ、どこ行っちゃったんだろねえ少年」
「うーん、先輩が行きそうな所って言えば…やっぱり園芸部の実習園か…?」
「部活な時は教えてくれるんだけどネー」
花子と光はうーんと頭を悩ませながら、ひとまず教室に行こうという話になり、高等部に向かう。
絹糸のようにサラサラとした長い髪をなびかせながら、物静かに廊下を歩く彼女の後ろ姿を見つけ、花子は勢いよく寧々に飛びつく。
「あ、ヤシローっ!やーっと見つけた!」
「きゃ!?」
「おいコラ花子!あぶねーだろ!先輩大丈夫っすか?」
「……あら、あなた達。あの子の…」
「「…へ?」」
***
「お嬢!今日もお美しいです」
そう言って夏彦は寧々の手を取ると、手の甲に口付けを落とそうとする。手の甲に柔らかい唇の感触がふれそうになり、寧々は手を振り払う。
「きゃああ!!」と叫んで思わず勢いよく立ち上がれば、座っていた椅子が大きな音を立てて倒れる。美しいとイケメンに言われる日が来るなんて、と動揺した寧々は頬をぎゅっと抓る。
「こッ……ここ……これは、夢?」
「お……お嬢?」
アワアワと手を振り回しながら慌てる寧々の姿を見て、キョトンとした顔をした夏彦が、顔を覗き込む。
(う……やっぱりイケメンね夏彦先輩)
そんなことを思いながら、夏彦の瞳に映る自身の姿に驚いて、目を見開いた。
「な……」
「なんだか、今日はいつものお嬢じゃありませんね。体調悪いですか?」
「な…な……」
「な?」
「なっ…七峰先輩になってる!?」