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    2002_kami_yuki

    ゆうきのかみさんのいろいろ(別名花美-kami-)

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    2002_kami_yuki

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    2023.11.07

    萩松

    萩原視点。
    松田は出てこない。
    萩原が勝手に松田をおもっているだけ。
    告白すらしてない。
    でもきっと両想い。

    【霜月の彼岸花】――ただ、もう一度
      少し
      ほんの一言
      ソレを伝えるために
      会いたい。
      
      それも叶わない……。


      ……自分はもう
               死人なのだから。。。


         【霜月の彼岸花】


    むせ返るような紅(あか)
    足持ちに広がるのは、悲しい思い出ばかり蘇らせる、深紅の華。
    この華畑にたどりついて一体どれほどの時間が過ぎたのか
    ……この場所には時を示す物が存在しない。
    何時間
    何日
    何週間……
    またはもう何百年……
    自分でも感じ取ることができない、時が流れないこの場所。
    自分自身、いつから此処にいるのかも定かではない。

    華畑の中には仄暗い河がある。
    浅そうに見える河だが、近づくと底が全く見透かせない程の漆黒色が顔を覗かせて、足元をすくませる。
    華に囲まれながら、何もかわらない時を過ごし、何も変わらない漆黒の水底をただ、オレは見つめていた。
    見つめる理由は、なぜかそこに懐かし顔がずっと映っているからだった……
    最初は自分だけが見えて居ることに気づかず、水面に向かって叫んだりもした。
    しかし、叫べと手を伸ばせど水底に映る人物には何も届かないどころか、叫び声などで水面が揺らめき
    映っていた自分がみえなくなってしまう……
    それに気づいたオレは、人物が消えることのほうが怖くなって何もせず、ただ…ただ……
    水面を見つめるだけの日々を送っている。

    水面に映っているのは
    自分のヘマで一人に、たったひとりぼっちにしてしまった、大切な相棒。
    もう二度と会うことは叶わない。
    オレの短い生涯、身を焦がす想いで…ずっと隣に、一緒に……過ごしていた……。
    でも、きっと……そんな気持ちを隠しとおした結果、大切にし過ぎたんだ。




    「お前、こないだの合コンの娘から告白されてただろう」

    自分より少しばかり背の低い松田が口元を悪そうに歪めつつも何故か鋭い眼差しでオレを見つめていた。
    ……こんな会話をするのは、もう何度目だろうか
    目の前で自分をからかっていた松田が急に背を向けて、

    「いいじゃん付き合ってやれよお前、今フリーだろモテる男は大変だなー」

    そういって、背を向けたままオレから離れていってしまう……

    {コレハイツノキオク}


    ――違う
      ちがうよ、じんぺーちゃん。
      本当はね、ズルイ男なんだ……
      本当に好きなヤツには
      本当の事を隠して
      本当の事を言えない……
      ただの、臆病者だよ
      こうやって、
      じんぺーちゃんを
      オレから
      離れないようなしてる……
      最低なヤツだよ…………


    …結局、松田には本心を伝えられないまま
    最低なヤツことオレは
    木っ端みじんに
                 ……ふっとんじまった。

       松田への、想いもすべて……



    ――ねぇ、松田……
      いや……じんぺーちゃん。

      話したい事
      言いたい事
      伝えたい事

      たくさん
      たくさん
      むっちゃ
        本当は、あるんだ……


    伸ばした指先に触れるのは、知っている人のぬくもりではなく
    真っ黒い、自分の感情にそっくりな
    河の水。
    こんな醜い想い、、、願いは……

    水面になっても……伝わらない……。
    もう、いっそ会えないのならば
    諦めたい
    でも
          あきらめたくない……


    誰もいないはずの河岸に白髪の老婆が座っていた。
    今まで自分が気づかなかっただけなのか
    老婆はジッとオレの足元を見つめて無言である。
    なんだか、視線が妙に気味悪くなってしまい、オレは老婆に対して背を向けた。
    すると、老婆の声が河から水面に響いてパシャパシャとオレの耳に響いた。

    「青年よ、其方の足元に広がる華は其方の想いだ……。」

    前が見えなくなるほどの風が舞う。
    紅い花が目の前に舞う
    視界が
    最期にみた光景のように真っ赤に染まった。
    気づくと息ができなかった。
    額から大量の汗をかきながらもオレは華の中心に立っていた……。

    気づけば、老婆の姿はどこにもなかった。
    舞い上がった華のうちの一輪がオレの肩に舞い降りる。
    そっとそれを手にし、眺める。

    「ああ、……この華畑は、オレの…想いか……」

    足元に広がる紅い華。
    死者のために咲く華だと、ずっと勘違いをしていたオレはバカかもしれない……。
    でも、コレはそうじゃない……。
    コレは、オレが……
    松田への……。

    ――情熱

      悲しい思い出


            諦め……   の、華  だ。



    「はっ、こんなんじゃ会っても松田にぶん殴られるなぁ」

    ポケットに手を突っ込むと今まで存在していなかった
    自分がスキだった銘柄のタバコが一本だけそこに存在した。
    迷わず口に含むと、自然と火がともる。
    ここは、死者の国。
    何が起きてもおかしくはないのだ。




    「お前は、まだこっちへくんなよ。

       会いたい気持ちで

       松田、
       お前を

           殺すワケには……」







    足元には……
          一輪の、黒い彼岸花が咲いていた。





    2023.11.07/萩松献花
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