尻尾がある竜の幻覚見てる その2鹿尻尾な竜もまた大変いいものだ。
ピョッと立った尻尾はかっこいいよりは可愛いと捉えられるもので、それを隠すためにあえてハイウェストなズボンの上から赤いコルセットを巻いてるとかだとかっこつけな恵くんみ感じてしんじゃうな・・・。
んで、夏だから涼し気な衣装を選んできたのってベルが何も知らずに思いっきり尻尾が出そうな服をプレゼントされたとかだとめっさかわいい。
好きな人からのプレゼントを無下にしたくない気持ちVS好きな人にはカッコいい自分を見てほしい気持ちのバトル開始。
まぁ、結局ベルの選んでくれた服を着ないという選択肢はきっとないので、着るんでしょうね・・・。そうして着替えたら、まさかの鹿尻尾にベルはキョトン。扉を開ける前に何故か小さな声で「・・・笑わないでね」と言っていた理由がそこで判明。ベルは笑うなんてとんでもないと口で言いながら、視界の端でピコピコと動くそれに釘づけにされる。ベルに笑われなかったと安心する竜だけど、明らかにベルの視線が顔ではなくもっと下、何なら腰当たりを注視していることに気づく。「ベル?」と声を掛ければ「な、なんでもないわ!」と慌てて顔を上げるベルだが、その視線もふよふよと左右を見渡して、やはりというかなんなのか、また腰のあたりまで落ちていく。
「・・・・触ってみる?」
「!!いいのっ!?」
前のめりになりながら身を乗り出してくるベルに若干腰を引きながら、こくりと首を縦に振ればパァッと花が零れそうな笑みを浮かべて「是非!」と声を上げる。そういえば彼女の家には犬がいるといっていた。そういったモフモフしたものが好きなのだろうと当たりをつけて、ぼすりと猫足のソファに腰を落ち着ける。「ん」と後ろにいるベルに視線を投げれば、彼女は嬉々としてそのすぐ後ろにちょんと腰を落としてふわぁと小さく声を漏らしながら恐る恐る、それでいて好奇心を抑えきれないようにゆっくりとなでていく。人間に本来ない器官ながら、Uは謎に技術に凝ってしまったのか細い指先が毛をすくように撫でる感覚を鋭利に拾ってしまう。毛の流れに沿ったように上からなでつけて、時折毛先をつまむようにスリスリと指先をこすりつける。意外なことに、不思議と違和感や不快感を覚えないことにUの技術力の高さを体感する。楽し気に尻尾を触るベルの気配を背後に感じながら、いつしか撫でられるその優しい手つきに心が落ち着いていく。昼近い時間だからだろうか、無性に瞼も重くなってきた。折角ベルが城に遊びに来ているのだ、眠ってはいけないと考えれば考えるほど睡魔は竜の意識を覆っていく。遠のく意識のなかで、ベルが小さく鼻歌でメロディーを奏でているのが聞こえた気がした
「・・・竜?」
実家にいる愛犬を思い出すような毛並みに集中していれば、聞こえてきたのは穏やかな寝息の音。見ればその大きな背中を小さく縮めて、ソファーの背に肩を預けるようにして眠る竜の姿。スースーと気持ちよさげに眠るその姿は、かつての傷だらけで世界を拒絶したあの竜とは全く別物のように思える。ようやく、彼が息を抜けるようになったのだと分かれば胸に駆けるのは喜びと愛おしさだけだ。不意に視線を外にやれば、そこには柱の陰でこちらをうかがう小さな人魚たち。ベルはその顔に笑顔を浮かべ、指でちょいちょいとその小さな守護者たちを呼び寄せる。『オ呼ビデスカ?』とウミウシのような姿の人魚が口を開く。
「彼が眠ってしまったの、何か掛けるものはある?」
『掛ケルモノ?』
『毛布ガ棚ニ入ッテル?』
『空色ノ綺麗ナ毛布ガアルワ!』
口々に口を開く人魚たちに、指を立ててシィと小さく息を吐く。人魚たちはハッとしたような表情を上げて慌ててそれぞれが口をその小さな手で覆う。
そんな行動にベルは小さく笑いながら小声で語り掛ける。
「出来ればそれを持ってきてもらえない?ないよりは、あったほうが心境的に安心できるから」
ここは"Uの世界"。仮想の世界だ。現実で寝落ちてしまった彼に毛布を掛けてあげることはできず、ここにいる彼に掛けたところで意味はない。それでも、やはり彼が凍える姿は見たくないと思った。
そんな気持ちが通じたのだろうか、人魚たちは小さく頷いて大きな扉の隙間からするりと出ていく。そう時間もたたないうちに彼女たちが持ってきたのは、まるで夏の空を閉じ込めたような覚めるような青い色の薄い布。
それを受け取ったベルはいつの間にかソファに崩れるようにして眠る竜の背中にふわりと毛布を掛ける。すると、布が体に触れた感触を感じたのだろうもぞもぞと居心地の良い場所を探すように竜が体を動かす。起こしてしまったかと硬直していたベルだったが、不意に竜がベルの膝にその大きな頭をのせてきた。ピャッと肩を震わせてさらに固まるベルに、人魚たちがキャラキャラと笑っている。頬を膨らませながら彼女たちを見れば、白いリボンを付けた黒髪の子がベルの頬にすりつくように体をくねらせる。突然のことに先ほどとは違った意味で固まったベルだったが、人魚たちは小さな声で『ゴ主人様カワイイ』『寝テル』『カワイイ~』と竜の側を数回ふよふよと浮かぶとそのまま踵を返して部屋から出ていく。最後に出ていったのは白いリボンの彼女だ。出ていく寸前、こちらを振り返ってニコリと笑うと『綺麗、オ似合イ、素敵』と耳障りの良い高い声を上げながら姿を消した。残されたのは膝の上で控えめな寝息を立てる竜と、そんな彼を膝の上に乗せて固まる歌姫だけ。
「ど、どうしよう・・・」
困惑の滲んだ歌姫の声が静かな部屋で響いた。
って幻覚を突然見たので共有していく。
描いてor書いてもいいんですよ…(囁き)