~後宮御用聞き、迅と朱雀の君メジロと月に咲く花
「嵐山、こんなとこにいた」
「じん」
継宮の梨園の端っこで木を見上げていたらしい若君に、迅はほっと息をついた。
「何を見てたの? 珍しい鳥でもいた?」
隣に並んで同じように見上げたメジロは首を傾げる。
継宮の庭園らしく整えられた庭木以外に目立ったものはないと思うのだが。
「あの黄色の花はなんだろう、と思って」
嵐山は精一杯腕を伸ばしてこんもりとした緑の枝先を指した。
「なんだかとても良い匂いがするのも、あの花だろうか?」
「ああ、そうだね。あれは金木犀だよ。確かに良い匂いのする花だよね」
「きんもくせい……あんなに小さな花なのに。すごいな」
感心したように言うこの若君は、高地の赤の国の元王子だ。確かに金木犀は寒さや乾燥にやや弱いから国元では見たことがないのかもしれない、と思い至る。
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