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    syk_1529

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    syk_1529

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    🥷🎍後半戦(前半の続き)

    ※セックスしてます ベッド脇に置いてあった潤滑剤を手に取り、その場所に触れてみる。「ん…」と彼の体が気持ちよさそうにもぞもぞと動くのと同時に、するりと招かれたように指が一本入り込んでいった。
     挿れられるなど慣れたものなのだと感触で伝わる。力むこともせずされるがままに任せているのは、こうやって普段からも受け入れているからなのだろう。
    「こういうこと、したことあるの?一氏くん」
     予想もしなかったことを二つ同時に言われ、不意に指を奥へと挿し入れてしまった。急にはマズかったか?と反省したものの、彼は気にしていない様子だ。
    「したことあるように見えますか?」
    「だって、手慣れてるし…」
     まずは先の質問からだ。そんなに慣れているように見えたのか?と指を引き抜き己の手を眺めてみる。もちろん男の中に挿れるのは初めてだし、そのための潤滑剤を使うのも初めてだ。ふと、ぬるりとした感触を纏う指先で彼の胸を弄ってしまった。彼が気持ち良さそうに吐息を漏らす。「やだ…やめてよ」と言われても、あまり意識せずにしてしまったことだ、すみませんと言うしかない。やめてと言うくせに拒む仕草は見せないので、更につねってみた。指を少し滑らすだけでピクリと跳ねる体に「好きなんですね」と投げかけてみると、眉間に皺を寄せて照れ臭そうな顔をされた。つまり、好きなのだろう。つい先程胸は弄るまいと思ったばかりなのに自分も大概だな…と、彼の感度の良い乳首を撫でながら質問に答えた。
    「里のダチにそういう奴がいましてね…」
    「う、うん…」
    「そいつが、聞いてもないのにやり方を言ってきて」
    「…っ、あのさ、」
    「聞いたことがあるだけですよ」
    「ねぇ、ちょっと…」
     触るか喋るかどっちかにしてくれない?!と彼が手を払い除けてきた。気が散って頭に入らないよ、と苛立つ素振りを見せるくせに、気持ち良がっていたのはどこの誰なのか。
    「では触りません」
    「…触りたかったのなら、別に構わないけど…」
     どちらかにしろと言ったんじゃなかったのか。
     仕方なく、腕を下方へと滑り込ませる。潤滑剤の残る入口はすんなりと侵入者を受け入れる。さっきから触るなだの触っていいだの煮え切らない態度を取られたことに若干腹が立ち、ぐいと三本無理矢理押し込んでみた。
    「……っ!!」
     さすがに三本いきなりはキツかったか、と引き抜いて彼の顔を見ると、涙目で睨みつけてきた。僕のことも考えてくれる?と怒っているようだが、それはこちらのセリフだ。すでに直接挿れてしまいたい欲求にかられているところを耐えて優しくしているというのに、そんなこと全く考えてくれていやしない。覆い被さっている男の股の間で元気に頭をもたげているものが目に入らないのだろうか。
    「丁寧にするって言ってたくせに…っ」
    「丁寧ですよ」
     いきなり挿れないだけマシでしょう?と返すと、何か言いたそうにしながら黙られた。「まぁ、そうだけど…」と口を尖らせてぼやく彼の頭では、いつもの夜の流れが思い出されているに違いない。思い出したくないことを思い出したからなのか口元の傷を爪で引っ掻き始めたので、腕を掴んでやめさせた。開いた傷口からじわりと滲み出た血が気になり舐め取ると、目を丸くして驚かれた。本当に、柄にもない。柄にもないついでに指先についた血も舐めると、「そういうことするんだ…」と心底意外そうな顔をされた。それもそうだ、俺自身意外なのだから。
    「で、あんた、どうして俺の名前を知ってるんです?」
    「え?」と彼がキョトンとした声と顔を向けてくる。ごく自然に名前を呼ばれたが、名前は伝えてないはずだった。なのにどうして彼が俺の名を知っているのか。
    「そのこと…?だって、名札」
     胸元を指差される。なるほど名札か、と納得した。ラーメン屋では下の名前で名札をつけることが義務付けられている。名字にしてくれと頼んだが、ここでは全員名前の方だから、と却下された。一緒に面接に行き一緒に採用されたみつきは名字より名前の方が嬉しいのか、「みつき」とひらがなで書かれた名札を得意げに見せてきていた。
    「俺はあんたの名前を知らないのに、俺の名前だけ知られてるのはあまり良い気がしませんね」
     名前などどうでもよかった。ただ、お互いの名を明かさない聞かないという、示し合わせたわけでもない暗黙のルールをしれっと破られたようで、若干の失望感を覚えた。そういうことを平然とするから、彼氏に殴られるのだろう。自覚のないままに他人を苛立たせていると、本人が気付く時は来るのだろうか。来るならとっくに来ていそうだが。
    「…ごめん、もう呼ばない。きみの名前のことは忘れる」
     申し訳無さそうに、彼は顔を横に向けた。頬の青痣が部屋の照明に照らされ目立つ。手酷く殴られ、今と同じように謝り「もうしないから」と許しを乞うたのだろう。話でしか知らないが自分がその彼氏なら、更にもう一度殴り付けていてもおかしくはない。そうやって出来た痣なのだろうな…と想像すると、どうしようもなく嗜虐心をそそられた。そんな趣味は自分に無いはずだが、彼を見ていると感情を狂わされる。
     冷静になれ一氏、と頭の中で自ら名を呼び、もう一度指を押し入れた。
     ぐちぐちと音が鳴るまで何度も引き抜いては挿れ、ならしていく。彼は大きな声を出すのを我慢しているようだが、耐えきれずだんだんと喘ぎも大きくなってきた。「もう、いいから…挿れてよ…っ」と懇願してくるが、そう簡単には挿れてやらない。
    「あんた、相当エロいな」
    「……っ!」
     見下ろして意地悪く笑いかけると、ぎゅっと目を細めて睨みつけてきた。すかさず指を奥まで思い切り挿れると、びくりと体が跳ねた。
    「奥は、やだ…っ!いきそうに、なるから…」
     ビクビクと捩らせる体を強引に押さえつけ、指の動きを速くしていく。気持ち良いのか痛いのか、真っ赤になって泣いている顔にこちらまでおかしな気分になってしまいそうになる。
    「……っ、望み通り挿れてやるよ」
     ずぽ、と音を立てながら思い切り指を引き抜き、すかさず太腿を開かせて彼の欲しがるものを押し挿れてやった。「あう」と苦しそうな声を出したのが聞こえたが、欲しいと言ったのはそちらなのだから配慮をしてやるつもりはない。
    「本当に、男の人とやるの、初めてなの?」
     激しく突き上げられながらも、これだ。喋っている余裕があるのなら…とこちらもムキになってしまう。
    「うるさいですね…初めてですけど」
    「…そっか」
     それなりに乱雑に抱いているつもりなのに、彼に感じられる余裕が腹立たしい。物足りないのか?と気付くと、複雑な気持ちになった。彼の恋人はかなりの巨躯だというのだから、当然そこも大きいのだろう。
     すんなりと入り込める穴、挿入されてなおの余裕、彼にとって自分のものでは到底満足出来ないのか、と思い当たると、衝動的に彼を殴り付けたくなった。そちらから誘っておいて…!とこの憤りをぶつけたかったが、彼自身に罪は無い。彼は彼でこの状況に満足しているようだし、何より表情から険しさが取れている。
     いつものラーメン屋を訪れる時の思い詰めた表情が消えて安心しているのだから、このまま彼の気がすむままに付き合ってやるのが己の役目だろう。彼を苦しめることは本意ではない。
     物足りないのならじっくりやるまでだ、と思い直し、ゆっくりと奥まで突き上げてみる。彼は気持ち良いのか、首に手を回して抱きしめてきた。「このまま続けてよ」と柔らかな声で囁くが、こちらがどこまで保つかは保証出来ない。
     彼の中はとても熱くて心地よい。しかし突くたびにここを占領している所有者の存在がちらつく。彼がその所有者の行為にどんな反応を示しているのか…と考えてしまうと苛々してしまう。
    「あ…っ!そこ、やめ…っ…!!」
     その苛々が体に伝わったのか、無意識に深部まで侵入させてしまったらしい。涙と汗で顔をぐちゃぐちゃにしながら彼が身を大きく捩らせた。
    「やめません」
     狙いを定めて何度も強く奥へと突く。その度に彼は呻くが、気にしていられない。様々な感情が入り混じったのだろう彼の泣き顔を見て、冷静にいられるはずがない。何度目かわからないがこれ以上したら中に出てしまう、というギリギリのところで無理矢理引き抜いた。
     大きく肩で息をしながら彼を見ると、彼も限界だったようで力無くぐったりとしている。はあはあと荒い息遣いに、やり過ぎたか…と後悔はしたが、そもそも誘ってきて煽ったのも彼なので反省をする気はない。
     仰向けの腹部に溜まり、シーツへと流れ落ちそうになる精液を慌ててティッシュで拭き取る。ふと、彼の恋人はきちんと外に出しているのだろうか…と心配になった。
     その思考を察したのか、途切れ途切れに彼が言ってきた。
    「外に出してくれるんだね、きみは」
     つまり彼の恋人は無責任に彼の中へと出すのだろう。きっと後処理もしないに違いない。華奢で体も強くなさそうなところに中出しされてはたまったものではないだろう。それでも彼は甘んじて受けているのだと思うと、抱きしめたくなった。しかし、せめてこの果てた後の残骸はどうにかしておかないと、抱きしめるに抱きしめられない。
    「中に出したら腹壊すでしょうが」
    「そうなんだよね。いつもそれがキツくって」
     やめてって言っても全然聞いてくれなくて、と諦めた顔で彼が起き上がりティッシュを探る。「いいから寝転んでてください」と制止すると、ありがとうと再び寝転がった。
     しばらくこちらの様子を寝たまま眺めていた彼が、おもむろに起き上がり裸のままベッドから立ち上がった。何をするのかと見ていると、鞄の中からタバコを取り出した。
    「吸っていい?」
    「構いませんが」
    「ありがとう」
     恋人がタバコを吸うことを嫌っている風だったので、少し意外だった。てっきり吸わないのだとばかり思っていたのに、鞄に入れているということは日常的にも吸っているのだろう。
     彼はベッドの上にタバコと灰皿を持ち込み、枕をクッション代わりに壁を背もたれにして吸い始めた。
     確か、恋人がベッドでタバコを吸うから困ると言っていたような気もする。なのに今目の前にいる彼はまさにベッドでタバコを吸っている。
     わざとなのか、無自覚なのか。しかし聞いてはいけない気がした。
     彼が吸うに任せておく方がいいと察した。タバコを吸うという行為は彼にとって、己の境遇を煙と共に受け入れるための日々の儀式のようなものなのだろう。全く美味そうに見えず顔を顰めながら荒っぽく吸う仕草が、性行為中の恥じらいやいじらしさを全て排除した大人の男の仕草に思えた。
     同時に、彼の抱えているものと彼の本来の姿が煙の向こうに透けて見えた気がした。
    「きみ、タバコは?」
     そう問いかける彼の顔は美しかった。このガラス細工のような彼を、守らねばとも思った。
     自分に何が出来るわけでもなく、しょっちゅうラーメンを食べにくる小うるさい少年…青年なのかもしれないが、のように、お節介にあれこれと口を出すことも出来ない。ただ彼の話を何の解決策も提示出来ないままに聞くだけ聞いて、こうして鬱屈した感情の捌け口になることしか、自分には出来ない。
    「俺は吸わないですが、あんたが勧めるのなら吸ってみてもいい」
     それでもいいから、彼との関わりを断ちたくはないと、差し出されたタバコを受け取り火をつけた。
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