Recent Search
    Create an account to bookmark works.
    Sign Up, Sign In

    アメチャヌ

    ガムリチャか捏造家族かガムリチャ前提の何か。
    たまに外伝じじちち(バ祖父×若父上)

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 65

    アメチャヌ

    ☆quiet follow

    診断メお題140字×10
    ガムリチャ、捏造家族、現パロごちゃ混ぜ。

    『もしかして誘ってる?』(現パロ)

    「不要だと伝えたが押し付けられた」と言ってバッキンガムが差し出したのは、円形のギフトボックスだった。箱の蓋はリボンで装飾され、側面にはバスボムと書かれている。中にはテニスボール大の入浴剤が七つ。それぞれ違う色の包装紙を纏っていた。節くれだった指が赤い球体を掴み、鼻に寄せる。においが強すぎる、と顔を顰めるわりには手にしたバスボムをもてあそび、箱に戻そうとしない。
    「一緒に風呂に入りたいのか?」
     もしや、と口にすると、男はリチャードから視線をそらす。言葉はないが何処となく気恥しげな顔がその通りだと語っていた。



    『恋の病』(捏造家族)

     小さな小さな我が子がため息をつくたびに、バッキンガムの胸は痛んだ。この世に生を享けてからまだほんの数年しか経っていないのに、何があの子を悩ませ苦しめるのか。
     幾つも違わぬ上の子は訳知り顔で「知らないほうがいいぜ」と言う。
     もう一人の親である半身は「あの歳でもかかる不治の病だ」と肩をすくめる。
    「不治の病だと? 恋でもしているというのか? 誰に?」
    「誰だっていいだろう。放っておいてやれ」
    「そうはいくまい。あんなにも思い悩んでいるんだぞ?」
     はぁ、とも、ふぅ、ともつかない幼いため息が耳に届く。
    「見ろ、あんな小さな体で」
    「けいつび……」
     次いで聞こえた名に、バッキンガムは口を開いたままぴたりと動きを止めた。



    『照れている時の変な癖』(現パロ)

     口付けたあとや、頬を撫でたあと。愛しさを込めて見つめたときもそうだし、ささいな事に感謝を示したときもそうだ。ほんの僅かな時間だが、バッキンガムはリチャードのうしろにぴったりと張り付く。動き回れば付いてくるし、立ち止まれば半歩斜め後ろに立つ。ソファに掛けるとしばらく背もたれの後ろにいてから隣に腰を下ろす。照れをみせた直後の半身のおかしな癖を理解できず、リチャードは背後の気配を感じながらそっと微苦笑を浮かべた。



    『「ばーか」』(現パロ)

     薄い薔薇色の唇から零れ落ちたものならば、どんな言葉であれ心地よく鼓膜を揺らす。見下ろす柳眉が形を崩していようが、目付きが鋭くなっていようが、関係ない。リチャードが自分だけに語りかける。それが重要なのだ。口角が下がっていても、声色がいつもより低くても、耳に届くものは全てが愛の囁きになる。
    「ばーか……」
     呆れ果てた末の子供じみた悪口でさえ、バッキンガムの胸を幸福で満たす。



    『こうするしか、なかった』(捏造家族)

    「そんな顔をするな……仕方がないだろう? こうするしか、なかったんだ」
     いつになく悲しげな目で見つめられ、慰めを込めてバッキンガムの頬に触れる。つい数分前まで全てにイヤイヤと駄々をこねていた小さな我が子は、もうリチャードのことなどどうでもいいようで、上の子と家の中を走り回っている。リビングに残されたのは、子の我儘を聞いて前髪を束ねたリチャードと、パイナップルのヘタのようにあちこちに広がる髪を見て嘆く半身の二人だけ。自己主張が強くなり始めた幼子だけでなく、助け合えるはずの男にも手を焼くことになるとは思わず、リチャードはもう一度「仕方がないだろう?」と言って笑った。



    『どうして黙っているの?』(10歳バ×21,2歳リチャ)

     まだ丸みの残る子どもの手がリチャードの手を引く。二人きりになりたいと望まれ、大広間を抜け出した足は書斎へと向かった。こう騒がしくては落ち着いて話もできないと不満げに零していたわりに、ソファに腰を下ろしても引き結んだ唇は閉ざされたまま開こうとしない。
    「バッキンガム?」
     リチャードだけを座らせて傍らに立つ少年の綽名を呼ぶが、言葉を忘れてしまったかのようで返事はない。見下ろす黄金色の瞳が、ただじっとリチャードを映していた。



    『浮気性』(現パロ)

     ふわふわと捉えどころのない男からの電話を切り、バッキンガムは疲労感を振り払うように大きく息を吐いた。これで三度目だ。起きてから既に三回も電話がかかってきた。せっかくの休日だというのに。隣に最愛の半身がいるというのに。苛立ちを抑えながら、端末の電源を切ってしまおうかと画面に目を落とした途端、また着信を知らせる表示が映し出された。半身から漂う気配が変わる。顔を見ることが出来ず、浮気性になったかのような気分で「……すまん」と謝罪の言葉を口にした。



    『なでなで』(現パロ)

     リチャードと共に暮らすようになって、キッチンに立つ回数が増えた。自分の作ったものが半身の血肉になるのだと思うと料理も苦ではない。後ろからそっと抱き着かれることにも慣れ、手元も狂わなくなった。しかし最近の半身は片腕を腹に回して抱きながら、臀部を手のひらで撫で回してくる。なにか不満があって意趣返しのつもりかたずねると、「可愛がってやりたいだけだ」と言う。
    「可愛……なら俺があんたの尻を撫でるのも許されるわけだな?」
    「いいや、お前はだめだ」
     撫でるだけでなく揉むような手の動きに擽ったさと言葉にしようのない感覚を覚え、心を無にしてスープを混ぜた。



    『はじめてだったのに。』(10歳バ×21,2歳リチャ)

     くだらないサイコロゲームの命令で『はじめて』の口付けを捧げてしまった。バッキンガムにとって不本意極まりない事態だった。口に出せば年上の婚約者はくだらないと笑うだろう。いや、呆れるかもしれない。バッキンガムの唇が触れても顔色ひとつ変えなかった。二人がはじめて交わす口付けだったのだから、せめて微笑くらいは見せてほしかった。不満げに鼻を鳴らし、婚約者の涼しい顔を思い出す。白く滑らかな頬は柔らかく、少し冷たかった。感触までよみがえり、バッキンガムの小さい体はカッと熱を帯びた。



    『秘め事』(モブ下人)

    密談をするなら体を寄せ合うのは当然のことだ。声が漏れぬように顔を近付け、唇が触れそうなほどの距離で囁きあうのも、決しておかしなことではないだろう。とはいえ、想像でしかない。下人の自分にとって、高貴な御方の言動は度々理解の範疇を超える。
    人目につかぬ屋敷の裏手で、主人の姿を見かけた。頻繁に屋敷を訪れる公爵が寄り添っている。またいつもの密談かと思いながらも、何故かその時は目がそらせなかった。早く立ち去りたいのに、足が動かない。
    私に気付いた黄金色の瞳が、鋭く光り、睨めつける。主人に巻き付く腕は、黒い荊棘のようだった。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    👏👏👏👏👏👏💖👏👏👏💖👏😍👍👏👏💘💖❤❤
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    recommended works

    アメチャヌ

    DONE*最終巻特典の詳細が出る前に書いたものです、ご承知おきください。

    69話の扉絵がバッキンガムが65話で言ってた「美しい場所」だったらいいな〜、地獄へ落ちたバッキンガムがリチャードのお腹にいた(かもしれない)子とリチャードを待ってたらいいなぁ〜……という妄想。
    最終話までのアレコレ含みます。
    逍遥地獄でそぞろ待ち、 この場所に辿り着いてから、ずっと夢を見ているような心地だった。
     
     薄暗い地の底に落ちたはずが、空は明るく、草木は青々と生い茂り、湖は清く澄んでいる。遠くの木陰では鹿のつがいが草を食み、丸々と太った猪が鼻で地面を探っていた。数羽の鳥が天高く舞い、水面を泳ぐ白鳥はくちばしで己の羽根を繕う。

     いつか、あの人に見せたいと思っていた景色があった。

     まだ乗馬の練習をしていた頃。勝手に走り出した馬が森を駆け、さまよった末に見つけたその場所は、生まれた時から常に血と陰鬱な争いが傍にあったバッキンガムに、初めて安らぎというものを教えた。
     静謐な空気に包まれたそこには、あからさまな媚びも、浮かれた顔に隠れた謀略も打算もない。煩わしさからはかけ離れた、ほかの誰も知らない、誰もこない、自分だけの特別な場所だった。
    11648