『ケートスはもう歌わない』サンプル白い扉が幾重も続く廊下を歩く。
床も壁も同じく白い。自分の着ている赤服はここでは余計に目立つだろう。
しかし通りがかる者は誰もいない。
「ここ、どこだ……」
何度目かの曲がり道、使用済みの備品が詰まった段ボール箱を抱えたシンは途方に暮れていた。
今回避難及び救護場所として選ばれたこの施設『メンカル』と呼ばれ、元はどこかの研究所だったらしい。
閉鎖されていたが、ブルーコスモスの襲撃で文字通り火の粉が降りかかり、戦闘停止後はしばらく鎮火作業に追われていた。
それも先ほど終わり、空いたスペースをちょうど良いからと救護場として使うことになったのだ。
戦闘の停止と人々の避難誘導も終えたミレニアムは、整備が終わるまでまだ時間があった。
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