12/22夜のモクチェズらくがき文「チェーズレイさーん」
ノックを二回。節をつけて歌うように名前を呼んだ。そのまま返事を待つことしばし。
ややあってから「どうぞ」とくぐもった声が返った。
「そんじゃ遠慮なく」
ドアを開けて部屋の中に入ると、部屋の主である相棒はジャケットを脱いでベッドに転がっていた。部屋着に着替えもせずだらしなく伏せるなど、『仮面の詐欺師』らしくもない。
やはり酔い潰れていたかと苦笑しながら、ピッチャーとグラスを載せたトレイをナイトテーブルに置いた。そのままベッドの端に腰掛けて、持ってきたグラスにピッチャーの水を注ぐ。そしてそれを、緩慢な動作で身を起こしたチェズレイの前に差し出した。
「ほい、お届け物だよ。とりあえずそれ飲んで」
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