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    Haruto9000

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    Haruto9000

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    「クー・フーリンが女性だったら」妄想。
    ※FGO第1部のみの情報で書いていたので、設定ズレなどはご容赦ください。

    ここから書きかけになるので、キリがいいところまで書いたら順次アップします。
    「◯◯編」としてまとまったら、丸ごと1本として、ピクシブとポイピクにアップします。

    #女体化
    feminization
    #クー・フーリン
    kooHooLin

    ミラーリング #15-2「二十八人の戦士」 クー・フーリンが不気味な気配に気づいたのは、偶然だった。
     肌の表面がざわざわと泡立つような、おぞましい感覚。
     すぐに槍を掴んで飛び起きると、クー・フーリンは口元に指を当て、ロイグに声を出さないように伝えた。
     そっと茂みをかきわけて周りの様子をうかがっていたとき、うごめく巨大な軍団が浅瀬に現れたのが見えた。クー・フーリンは顔を歪めた。
    「カラティンとその息子たちだ」
     ロイグも並んで、幼なじみが見ているものを見ようとした。
     
     クラン・カラティン。「二十八人の戦士」と称され、父のカラティン・ダーナと、彼が率いる二十七人の息子たちから成る戦闘集団だ。
     そして、彼らの後ろをひっつくようにしてついてくる小物がいる。おそらく、孫のグラス・マック・デルガだろう。
     カラティン一族は、かつてアイルランドを支配していた魔族の血を引いていると言われていた。
     メイヴが彼らに目をかけた結果、「怪物」とも呼ばれる集合戦士が生み出された話は、クー・フーリンも耳にしていた。
     クラン・カラティンは毒と呪いの使い手で、彼らの毒槍に貫かれた者は、9日のうちに死に至ると恐れられている。
    「メイヴのやつ、とうとうあの化け物どもを寄こしてきやがったか」
     クー・フーリンは目を細めた。
     ロイグは、心配そうに幼なじみを見上げた。クラン・カラティンは確実に敵を仕留めることで有名だったからだ。
    「クー、大丈夫か?」
    「大丈夫に決まってんだろ。盾をくれ、ロイグ」
     ロイグが硬い盾を投げてよこすと、クー・フーリンは器用にそれを受け止め、重みを確かめた。
    「誰が相手でも関係ねえ。さっさと終わらせてやる」


    「クラン・カラティンだと!?」
     フェルグスの大声に、メイヴはかすかに眉をひそめた。細い指先が、上品に盃のふちをなぞる。
    「耳元で叫ばないでちょうだい、フェルグス」
    「おまえ、正気か? よりにもよって、あの怪物どもに」
    「私だって、できれば彼らは使いたくなかったわ。でも、ここまできてしまったら仕方ないでしょ。あなたには気の毒だと思うけれど」
     表情を曇らせる男を見ながら、メイヴは優雅に足を組み替えた。
    「あなたの姪っ子ちゃんにはだいぶ手を焼かせられたわよ。おとなしく私のもとに下っていれば、可愛い顔が毒で爛れて、無残に死ぬこともなかったでしょうにね」

    「フェルグス様?」
     女王の天幕から戻ってきた男に、フィアハはおそるおそる声をかけた。
     フェルグスは常に豪胆で笑いの絶えない男だったが、このときばかりは、見るからに気落ちした表情を浮かべていた。
    「どうかなさいましたか?」
    「俺の子犬も、ここまでか」
    「え? クー・フーリンに何か?」
    「〈二十八人の戦士〉が放たれた」
     その不吉な言葉に、アルスターの亡命者たちはざわついた。
    「あの毒の魔物にかかれば、クー・フーリンといえども無事では済むまい。たとえ今日生き延びても、槍傷の毒があいつの身体をさいなみ、やがて死に至らしめる」
     フェルグスは深い息を吐いた
    「ああ、わかっていた。こんな日が来ることは、わかっていたはずだったんだがな」
     悲しげな笑みを口元に浮かべ、フェルグスはそのまま歩き去った。
    「…………」
     フィアハは黙りこくっていたが、その目は、じっと何かを考えるかのように地面を見つめていた。


    「いたぞ、クー・フーリンだ!」
     グラス・マック・デルガが叫ぶ。カラティン・ダーナたちが顔をあげると、浅瀬には槍と盾を持った女が仁王立ちしていた。
    「やれ、やれ!」 
     父親の咆哮とともに、前方の息子たちが毒を塗り込めた槍を投げた。
     クー・フーリンはすばやくそれを避け、自分の槍を振り上げる。空気を切り裂く旋風に、カラティンの息子たちは薙ぎ倒された。
    「ひるむな、やれ!」
     倍以上の槍が雨となり、クー・フーリンに降りかかった。
     クー・フーリンがすばやく盾を掲げると、衝撃とともに、毒槍が盾に突き刺さっていく。
     攻撃はすべて防ぎきったが、大量の槍が刺さった盾は予想以上に重かった。
     思わずよろめいたところで、すかさず息子たちが飛びかかり、彼女に激しい体当たりを食らわせた。
    「ぐっ!」
     クー・フーリンが膝をつく。
     隙を逃さず、敵方は太い剣を振り上げた。無数の白刃が勢いよく振り下ろされる。
    「チッ!」 
     身体を転がし、からくもカラティン・ダーナの一太刀を避けるが、息子たちの腕がクー・フーリンを捉えた。
    「くそ、離せ!」
     逃れようと暴れるが、固いこぶしで顔を殴られた。目の前が明滅し、鼻の奥が鉄臭くなる。
    「がっ!」
     さらに強く殴られ、クー・フーリンはバシャリと水飛沫をあげ、浅瀬に打ち倒された。
     起き上がる間もなく、背に、腹に、顔に、何度もこぶしや蹴りを叩き込まれる。
     クラン・カラティンは容赦というものを知らなかった。
     全員が屈強な戦士たちであり、全員が血に飢えていた。
     クー・フーリンはもがいたが、いくつもの腕に掴まれ、身体を押さえ込まれているせいで、身動きすらまともにとれない。
     胸の奥に、「恐怖」が黒い穴のようにぽっかりと浮かんだ。恐れに飲まれまいと頭を振り、クー・フーリンは必死に叫ぶ。
    「やり方が卑怯だぞ、化け物め!」
    「化け物だと?」
     カラティン・ダーナは、片目をゆっくりと細めた。
    「おまえのほうが、よっぽど化け物よ」
     勢いよく顔を蹴り飛ばされ、クー・フーリンは一瞬意識が飛びかけた。
     頭が朦朧としてくる。身体中が痛いはずなのに、感じるのは、ただ燃えるような熱さだけだ。
     クー・フーリンは、身体が引っ張り上げられるのを感じた。
     目の前で、鈍い色をした穂先がこちらに向けられるのを見る。
    「終わりだ」
     槍を構えるカラティン・ダーナの声が、不思議と遠くから聞こえた。
     クー・フーリンはぼんやりとする頭で考えた。
     ああクソ、抜かったぜ。まさか自分がこんなところで──。

    「なんだぁ!?」
     激しい水しぶきとともに、狼狽した叫びが響いた。
     カラティン・ダーナは驚愕の表情を浮かべ、息子たちに向かって何かを叫んだ。
     不意に自分を支えていた手が離され、クー・フーリンは水底に倒れ込んだ。
     がぼっと水を飲み込み、その苦しさに、慌てて顔を水面にあげようともがく。
    「ぐっ……!」
     全身に激痛が走る。遠のいていた身体中の感覚が一気に戻ってきた。
     あえぎながらなんとか立ち上がった瞬間、そばで激しい水柱があがった。驚いて目を向ければ、おぞましい色をした太い腕が、川底に転がっている。
    「呆けるな、クランの猛犬!」
     若い男の声に、今度こそクー・フーリンは目を見開いた。
     彼女を背にかばうようにして、剣と槍を構えた一人の青年が立っていた。
     青年はちらりとクー・フーリンに目をやると、槍を放って寄こした。クー・フーリンははっと手を伸ばし、槍を掴む。

     彼は、自分の味方だ。

     瞬時に状況を判断し、槍を構える。全身のひどい痛みが、今は頭を澄み渡らせた。
     クラン・カラティンへの怒りと、敗北しかけた自分への怒りが闘志となって燃え上がり、力がみなぎってくる。
    「おまえは、フェルグスの……」
     片腕を失ったカラティン・ダーナが、這うような声でうなった。
     皆まで聞かず、青年は敵に斬りかかる。クー・フーリンも咆哮し、カラティン一族に襲いかかった。


    「はぁ、はっ、はっ……」
     グラス・マック・デルガは走った。戦いの顛末と、家族の仇である裏切り者について、メイヴ女王に報告しなければならない。
     もつれる足を叱咤し、彼は必死に走り続けた。
     不意に彼は、頭上が暗くなるのを感じた。不思議に思って空を見上げ──

     ずがり。

     何が起きたのかもわからぬまま、彼の意識は闇に飲まれた。


    「──ふう」
     血と脳漿にまみれた穂先を引き抜き、クー・フーリンは息をついた。
    「これで、もうあんたのことをメイヴに報告するやつはいないな」
     クー・フーリンはくるりと振り向いた。
     そこには、戦いに加わった青年が、なんとも言えない表情を浮かべて立っている。
    「ありがとな。おかげで助かったよ」
     にっこりと笑いかけると、青年はわずかに頰を赤くした。だが、すぐに顔を背け、小さな声でぼそぼそと言った。
    「クラン・カラティンのやり方は、さすがに見ていられなかっただけだ」
    「うん。それでも、礼を言うよ」
     クー・フーリンは微笑む。
    「他のやつらの身体も切り刻んでやったし、もうあんたがオレを助けてくれた証拠はどこにもないよ、フィアハ」
     青年は、驚いたようにクー・フーリンの顔を見た。
    「おまえ、俺のこと、知ってたのか」
    「そりゃそうさ。赤枝の仲間のことは、みんな知ってる」
     フィアハは虚を突かれたような表情を浮かべた。その瞳に一瞬苦いものが浮かぶが、青年はすぐに顔を伏せてしまう。
    「……偉大なクランの猛犬殿に、自分なんかを知っていてもらえたとはな」
    「?」
     クー・フーリンは不思議そうにフィアハの顔を覗き込もうとしたが、すぐに自分の鼻から滴るものに気づいて、ごしごしと手でこすった。
    「お、おい」
     鼻血を流すクー・フーリンに、フィアハは慌てて自分のマントの裾を引きちぎると、彼女に差し出した。
    「ひどい顔だ。とても年頃の娘とは思えん」
    「しょーがねえだろ。オレは戦士なんだから」
     頰をふくらませながらも、クー・フーリンはマントの切れ端をありがたく受け取り、それで血をぬぐった。
    「ほら、おまえも早くメイヴのところに戻れよ。ずっとここにいたらまずいだろ」
     クー・フーリンは急かすように手を振るが、フィアハは暗い顔のままで立ち尽くしていた。
    「さっさと行けよ。ほら──」
    「俺は、裏切り者だ」
     絞り出すような声で、フィアハは言った。クー・フーリンは瞬きをする。
    「俺は二度も裏切った。最初はアルスター、次は連合軍だ。信念を持って赤枝の館を離れたのに、俺はもう、戻る資格は」
    「あーもう、ごちゃごちゃうるせえな!」
     ドン、とクー・フーリンはフィアハを突き飛ばした。完全に不意を突かれた青年は「うわっ!?」と叫び、尻もちをついた。
    「な、何するんだ!」
     フィアハは慌てて立ち上がり、真っ赤になって女を睨んだ。クー・フーリンは腕組みをし、フンと鼻を鳴らした。
    「面倒くせえ男だな。オレが一番嫌いな輩だ」
    「め、面倒……!?」
    「いいか、フィアハ。勘違いするなよ」
     ずいと身を乗り出し、クー・フーリンはフィアハを睨みつけた。
     少女と呼んでもいいくらいの女なのに、圧をかけてくる視線には凄みがあり、フィアハは息を飲む。
    「おまえが戻らなきゃ、それこそメイヴは何かあったと思って、叔父貴たちが殺される。さすがにオレも、かつての仲間たちがあの女にみすみす殺されるのは我慢ならねえ」
    「あ……」
     青年が瞬きをした。その表情から曇りが消えたのを見て、クー・フーリンは一歩離れた。
    「ま、本当なら裏切りには倍返しなんだがな。命の恩人を殺すほど、オレも堕ちちゃいねえさ。わかったら、さっさと戻れよな」
     フィアハはクー・フーリンの顔を見つめていたが、やがて彼女に背を向けると、そのまま去っていった。
     クー・フーリンは詰めていた息をゆっくりと吐き出し、フィアハとは逆の方向へ向かって歩き出した。


    「私も、まだまだ甘かったようね」
     焚き火を見つめるメイヴの瞳には、燃える炎が赤々と踊っていた。
    「母上……」
     息子のメインが一歩踏み出すが、鋭い視線に射抜かれて、足を止める。
    「私だって、鬼ではないわ。あの小娘のことも多少は認めているから、少しは情を注いでやっていたの。でも、もはやそれも不要だわ」
     メイヴがすっくと立ち上がる。女王の大きな影が天幕に映り、蜘蛛のように揺らめいた。
    「母上、まさか」
     メインは焦った声をあげたが、メイヴは声高に命じた。
    「フェルディア・マック・ダマンを呼びなさい。今すぐに!」
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