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    Haruto9000

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    Haruto9000

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    「クー・フーリンが女性だったら」妄想。
    ※FGO第1部のみの情報で書いていたので、設定ズレなどはご容赦ください。

    ここから書きかけになるので、キリがいいところまで書いたら順次アップします。
    「◯◯編」としてまとまったら、丸ごと1本として、ピクシブとポイピクにアップします。

    #女体化
    feminization
    #クー・フーリン
    kooHooLin

    ミラーリング #15-7「因縁の行方」 コンホヴォルは腕を組み、目の前に広がる敵の軍勢を眺めていた。
     松明が星のようにきらめいていたが、丘の上から見下ろす敵兵たちの数は、想像していたよりも少なかった。
     これも、あの子犬のおかげなのだろう。
    「我が軍の準備は整いました」
     そばに控えたコナルの声に、コンホヴォルはうなずいた。
     平原から吹く風が、王の髪をなびかせる。伯父の落ち着いた表情の下に、熱く重い感情がめぐっているのを、コナルは感じた。
    「敵の軍勢は大きく二つに分かれ、それぞれメイヴとフェルグス様が率いるようです」
    「裏切り者に敬称は不要だ」
     平坦な声に、コナルは慌てて顔を伏せた。
    「は、はい。申し訳ございません」
    「それにしても、アリルめ。あの腰抜け、決戦の時ですら、女の尻に敷かれているようだな」
     コンホヴォルは、くっと喉の奥で笑い声を漏らし、ゆっくりと空を見上げた。
     とうに日没を過ぎた空には闇が迫り、細い月が刺すような眼差しを向けてくる。
    「いい夜だ。戦女神モルガンの祝福と呪いが聞こえてきそうだな」
    「王……?」
     コナルの戸惑った声には答えず、コンホヴォルは再び連合軍を眺め下ろした。
    「長きに渡って、我が国を蹂躙してくれた狼ども」
     偉大な戦士と讃えられてきた王は、すうっと目を細めた。
    「次の夜明けが貴様らの最期だ。赤枝の騎士団が立ち上がったからには、容赦はしない。アルスターの怒りを思い知らせてくれる」

     太陽が昇るとともに、コンホヴォル率いる東の軍勢と、メイヴ率いる西の軍勢は激突した。
     アルスター軍の勢いは凄まじかった。コンホヴォルは自ら先頭で戦い、赤枝の騎士たちは王に続けと奮戦した。
     だが、コノートの女傑も負けてはいなかった。メイヴも自らの戦車を駆り立て、剣と槍で猛攻を仕掛けた。女王の勢いは兵士たちを鼓舞し、勢いを取り戻した。
     両軍のぶつかり合いは凄惨を極め、平原を赤黒い血で染めた。
    「メイヴはどこだ!」
     コンホヴォルは怒鳴った。瞳に怒りをたぎらせて戦場を振り仰ぐ。
    「アリルはどこだ。目に物見せてくれる!」
     王が大太刀を振るうたびに、敵の首がばさばさと飛んでいく。小物に用はない。狙うは敵将の首だ。コンホヴォルの戦車は勢いを増し、血煙の中を突き進む。
    「王!」
     警告するようなコナルの声に振り向く。
     そこでアルスター王は、砂塵を巻き上げながらこちらに向かってくる一台の戦車に気づいた。戦車の上では、大柄な男が剣を構えている。
     コンホヴォルの目が、すうと冷たく細められた。

     クー・フーリンとロイグは、木立の中を戦車でひた走っていた。
     傷が癒えると、すぐに最後の戦場へ駆けつけてきたのだ。クー・フーリンの耳元で、びゅんびゅんと風がうなっている。
     ひときわ高い丘にたどり着くと、ふもとの平原でアルスター軍と連合軍がぶつかっているのが見えた。
     二人は戦車を止め、両軍の様子を見ようとした。
    「あれはクースクリズ王子の軍だな。ガレーイン族と戦ってるのか。そっちはどうだ? ロイグ」
    「ああ、こっちではコナルと、あれは……あのマントと戦車。コンホヴォル王だ!」
     ロイグの叫びに、クー・フーリンは御者に駆け寄った。
    「王はどんな様子だ?」
    「見事な戦いっぷりだ。さすが、勇猛と讃えられるだけのことは……待てよ。コンホヴォル王に誰かが向かっていくぞ。あれは」
     目をこらしたロイグは息を飲んだ。
    「フェルグス様だ!」
     それを聞くやいなや、クー・フーリンは叫んだ。
    「王の元へ向かうぞ。急げ、ロイグ!」
     忠実な御者はすばやく戦車に飛び込み、手綱を握った。マハとセングレンは、すさまじい勢いで丘を下り始めた。

     目の前に立ち塞がった男を、コンホヴォルはひたと見据えた。
    「ほう」
     アルスター王の口元に冷笑が浮かんだ。
    「かつての勇士も、コノートの売女の手にかかれば簡単に籠絡されると見えるな」
     フェルグスは、ハ、と息を吐く。
    「なに、俺は何も昔から変わっておらん。柔肌に包まれるのは別格の悦びよ。女の愛を知らぬ者にはわからんだろうがな」
    「……黙れ」
     コンホヴォルの端正が歪む。
    「王の前に頭が高いな。かつての誉れも無くし、一度は王座についた国すら見捨て、女に擦り寄るまで落ちぶれた男が!」
     フェルグスの顔から笑みの仮面がはがれた。顔を紅潮させ、怒りで身体がひとまわり大きくなったように見えた。
     次の瞬間、いきり立った大太刀が、王めがけて打ち下ろされた。コンホヴォルはとっさに盾をかかげて刃を弾いたが、衝撃の重さに思わずよろめく。
     フェルグスはすぐにまた剣を振りかぶった。コンホヴォルは戦車から飛び降り、二撃目をかろうじて避けた。いきり立つ剣は王の戦車を砕き、粉々にした。
    「フェルグス、貴様……!」
     再び振り下ろされた刃を、コンホヴォルは自分の剣で受けた。殴りかかられたような強打に身体中がしびれたが、地を踏みしめて耐える。
     戦う二人の周りに他の戦士たちも集まってきたが、王たちの鬼気迫る姿に、誰も近づくことができない。
    「ディアドラとノイシュの仇!」
     フェルグスは怒鳴った。
    「ノイシュと弟たちの仇。そして、俺の息子たちの仇だ!」
     ギィン、と耳を貫くような音を立て、両者の刃がぎりぎりとせめぎ合う。
    「おまえは俺に嘘をつき、俺の名誉を貶めた。俺の信頼を裏切ったおまえだけは決して許さんぞ、コンホヴォル!!」
    「……!」
     コンホヴォルは歯を食いしばり、勢いよくフェルグスの剣を振り払った。
    「どの口が言う」
     乱れた髪の合間から、甥はぎらぎらする目で叔父を見上げた。
    「あんたが先に俺の信頼を裏切ったんだろう」
    「なに?」
     フェルグスは眉をひそめた。コンホヴォルは吐き捨てるように言った。
    「もう忘れたか? 裏切り者は頭もイノシシ並みらしいな」
    「なんだと?」
    「俺に王位を譲ったとき」
     切先をフェルグスに向け、コンホヴォルは怒鳴った。
    「おまえは『俺が支える』と言ったな。今でもよく覚えている。『この少年は自分よりずっと良き王になるだろうから、そばで支え、見守っていく』と」
    「それは……」
    「マハ神の呪いを受けたときもそうだ。あんたは言ったな、『何が起きても、自分がいる』と!」
     フェルグスが押し黙る。コンホヴォルは唇を歪めた。
    「だが、実際はどうだ。あんたは俺に背を向けた。俺を裏切った女に肩入れしてな」
    「いい加減にしろ。あの頃のおまえはどこへ行ったのだ。『誰よりも良き王になる』と笑っていた少年のおまえは」
    「良き王? なったじゃないか」
     コンホヴォルは大仰に腕を広げた。ブローチで留められたマントが、ばさりと広がる。
    「アルスター中の民が俺を讃え、歌に歌っているぞ。『騎士団を率い、荒々しき族長たちを束ねる強き王。知恵で土地を富ます賢き王。過去のどんな王よりも、国に幸いをもたらす偉大な王』だと!」
     フェルグスは黙ったままだ。コンホヴォルは左手で額を覆い、くつくつと笑い声を漏らした。
    「『アルスター王』! 母上の妄執が、まさか現実になるとはなぁ。つくづく、うまくあんたをたらし込んだものだ、我が母は!」
     可笑しいとばかりに、コンホヴォルは声をあげて笑った。
    「コンホヴォル、おまえは……」
    「だが」
     ぴたりと笑い声が止む。
    「皮肉だが、俺を見ていたのはあんただけだ」
     指の間から、昏い瞳がひたとフェルグスを見据えた。
    「王座にいようが、幼い俺はあの女の傀儡だった。だが、母の道具に過ぎなかった俺に、あんたは『良き王になる』と言った。だから、俺はそうあろうとした」
     まるで酔ったかのように、コンホヴォルは滔々と言葉をつむいだ。
    「母上亡きあと、俺は必死にやってきた。つまらん意地で臨月のマハ神と馬を競走させたのは、今でも馬鹿なことをしたと思うが。だが、過ちを埋め合わせようと、俺はアルスターのために必死にやってきたぞ」
     唐突に、ぎらついていたコンホヴォルの眼光がやわらぐ。男は、フェルグスに手を差し出した。
    「俺は『良き王』だろう? 叔父上。あんたはいつだって俺の味方をしてくれた。今からでも遅くない。メイヴの元を離れ、俺のところへ戻ってこないか?」
     フェルグスは目の前の手を一瞥した。ふしくれだった男の手は、いくつもの美しい指輪に彩られていた。
     しばしの間を経て、フェルグスは口を開いた。
    「おまえが『良き王』であり続けたなら、俺はおまえから離れたりなどしなかった」
    「──なんだと?」
     思いがけぬ言葉に、コンホヴォルがにわかに殺気立つ。
    「おまえはたった一人の女を許さなかった」
     フェルグスは静かな声で続けた。
    「ディアドラ──か弱き女を貶め、辱め、死に追いやった。良き王がそんなことをすると思うか?」
    「女、女だと!!」
     コンホヴォルは激高した。
    「母、メイヴ、ムギン、ディアドラ。女は信用ならん。女はいつだって俺を裏切る!」
     血走った目で王は叫んだ。
    「俺は王だ。何も知らぬ子どもの頃とは違う。俺に楯突くのはアルスターに楯突くも同じ。仲間もろとも粛清するまでだ!!」
    「もういい、コンホヴォル」
     フェルグスは甥の声を遮った。
    「おまえに王位を譲ったのは、俺の誤りだった」
     コンホヴォルの目が見開かれる。フェルグスはすう、と息を吐き、剣を両手で握り直した。
    「誤りは正さねばならん。俺は、ここでおまえを殺す」
     偉丈夫を包む空気が変わった。立ち昇るような闘気が男の身体を包む。
    「終わりだ。虹霓剣(カラドボルグ)──!!」
     光を放つような大太刀が、勢いよく天に振り上げられた。
    「フェルグス様!!」
    「!」
     不意に飛び出してきた青年が、フェルグスを後ろから抑えた。
    「コルマク……!」
     それは、コンホヴォルの息子、コルマク王子だった。
     父である王の横暴に反発し、フェルグスに付いて国を離れた王子だったが、目の前で2人が殺し合うのを見ていられず、捨て身で止めに入ったのだ。
     コルマクは、必死でフェルグスを抑える腕に力をこめた。
    「離せ、コルマク!」
    「駄目です、フェルグス様、おやめください!」
    「落ち着かれよ、フェルグス殿。王も離れてください」
     同時に駆け込んできたコナルも、フェルグスとコンホヴォルの間に割って入った。
    「我が王、あなたはこんなところで死んではならない。そして、フェルグス殿」
     コンホヴォルを背後にかばいながら、コナルはかつての友に向かい合った。
    「あなたも、自分が誰に剣を向けているのかわかっているのか?」
    「いくらおまえだろうと、この虹霓剣を止めることは許さんぞ、コナル」
    「ならば、その虹で俺も殺すか?」
     コナルは、鋭い眼光でフェルグスを射抜いた。
    「そんなに腕が高ぶるなら、後ろの丘でもなんでも切り裂けばいい。だが、かつての仲間を切るような真似は、俺が決して許さん」
    「…………」
     フェルグスは、唇を引き結んでコナルを睨みつけた。
     両者の間に一陣の風が吹く。睨み合いは膠着し、まるで永遠に続くかのようにも思えた。
     そのときだ。
    「おい」
     この場に似つかわしくない涼やかな声に、男たちははっと振り向いた。
     土煙の向こうから、二頭の堂々たる馬に引かれた戦車が、ゆっくりと現れた。戦車の上には、槍を携えた一人の若者が立っている。
    「クー」
     コナルが驚いたような声をあげた。
     クー・フーリンはさっとその場に目を走らせた。戦車から飛び降りると、つかつかと男たちに歩み寄り、フェルグスの前に立ちはだかった。
    「いつかの約束を果たすときだぜ、叔父貴」
     腰に手をあて、クー・フーリンは不敵に笑う。
    「浅瀬の戦いでは俺が退いてやった。だから、今度はあんたが退く番だ」
    「クー・フーリン」
     フェルグスは、強い眼差しを向けてくる娘を見た。一瞬の間ののち、剣を下ろす。
    「わかった。約束だからな」
     落ち着いた声でフェルグスは言った。クー・フーリンが満足そうにうなずく。コルマク王子は、ほっとしたようにフェルグスから手を離した。
     フェルグスはクー・フーリンたちに背を向け、自分の戦車に乗り込んだ。
    「フェルグス」
     思わず、といったように、コンホヴォルが一歩前に出る。
     だが、フェルグスは何も言わず、すぐにその場から走り去った。コルマクはちらりと父の顔を見たが、やはり黙ったまま前を向くと、フェルグスを追って消えていった。
    「もう大丈夫なのか?」
     コナルがクー・フーリンに声をかける。「うん」とうなずき、クー・フーリンは王に向かい合う。
    「我が王」
     コンホヴォルは、ゆっくりと振り向いた。顔は返り血とほこりに汚れ、目は落ちくぼみ、ひどく疲れ切っているように見えた。
    「叔父貴たちが撤退したから、敵の戦力は大きく削がれたはずです。決着をつけにいきましょう」
     沈んでいた王の瞳に、光が浮かんだ。


    「お待ちください、クー・ロイ王!」
     メイン王子の叫び声にも、クー・ロイ王は動じなかった。そばでは、王子のルギーが不安げな表情で、両者の顔を見比べている。
     アイルランド連合軍は、内部からも崩壊が始まっていた。
     ただでさえ一枚岩ではなかったところに、コノート王女をめぐって内輪揉めが起こり、何百人も死んだ。
     さらに悪いことに、ここにきて、マンスター国のクー・ロイ王を筆頭とする一部の勢力が離反したのだ。
     メインは、去ろうとするクー・ロイ王の戦車にすがりつき、必死の形相で王を見上げた。
    「行かないでください。あなたたちに去られたら、我が軍はもちません」
    「あのフェルグス・マック・ロイですら、すでに戦線を離れたそうではないか」
     じろりと冷たい目線を向けられ、メインは唇を噛む。
    「メイン王子。我々は、協定に見合う働きは十分したつもりだ。いや、報酬以上かもしれんな。フィンダウィル姫の一件もある。本当にコノートがこの戦いに見合う報酬をくれるのか、怪しいところだ」
    「それは」
     マンスター王は、王子の声をさえぎった。
    「我が軍も相当な痛手をこうむったからな。これ以上、戦士たちを失うのは王としても耐えがたい。我々の戦いはここまでとさせてもらう。いくぞ、ルギー」
    「クー・ロイ王!!」
     メインの叫びもむなしく、クー・ロイ王は自分の軍勢を率いて去っていった。
     あとに残されたコノート王子は、震えるこぶしを握りしめた。
    「おのれ……おのれ!」
     噴煙がたなびく空に、怒りの叫びがこだました。
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