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    Haruto9000

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    Haruto9000

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    「クー・フーリンが女性だったら」妄想。
    ※FGO第1部のみの情報で書いていたので、設定ズレなどはご容赦ください。

    ここから書きかけになるので、キリがいいところまで書いたら順次アップします。
    「◯◯編」としてまとまったら、丸ごと1本として、ピクシブとポイピクにアップします。

    #女体化
    feminization
    #クー・フーリン
    kooHooLin

    ミラーリング #15-3「兄と妹」「あれ、フェルグス様の戦車じゃないか?」
     遠くを見張っていたロイグの言葉に、クー・フーリンは不思議そうな顔で近寄ってきた。
    「叔父貴が? なんでまた」
    「俺が知るか。でも戦うって雰囲気じゃないな。一体何が──」
     二人が話している間に、巨大な戦車は泥を跳ね上げながら迫ってきた。
     フェルグスは戦車が止まりきる前に飛び降りると、鬼気迫る表情でやってきた。
    「叔父貴、どうしたんだよ?」
     フェルグスの勢いに気圧されながら、クー・フーリンが尋ねる。
    「おまえにどうしても伝えなければと思ってな」
    「伝える? 何を」
    「次のおまえの対戦相手だ」
    「おいおい、叔父貴。これがあんたじゃなけりゃ、舐められたと思ってブッ殺してるぜ」
     クー・フーリンは唇をとがらせ、肩をすくめた。
    「で、どこのどいつだ? そんなに強いのか?」
     フェルグスは厳しい表情のまま言った。
    「ダマン王の息子、フェルディアだ」
     その瞬間、幼なじみの表情が凍りついたことに、ロイグは気づいた。


    「なんですって?」
     メイヴはイライラと前髪をかきあげた。
    「その、ダマンの息子は『陛下の元に参上することはできない』と──」
     ガシャン、と床に勢いよく酒杯を投げつけられて、使者は怯えたように身を竦ませた。
    「何様なの? 地方領主の小せがれごときが!」
     女王は憤然と立ち上がり、激しい口調で命じた。
    「このメイヴの元にこないと、詩人たちに命じて、おまえの不名誉を永劫にわたって歌い続けてやると言ってやりなさい。フェルディア・マック・ダマンは、とてもコノートの勇士とは呼べない、戦士の風上にも置けない男だってね!」
    「は、はい」
     使者は震えながら顔を伏せると、逃げるように天幕から出ていった。
     メイヴは荒々しく息を吐き、クッションに身をもたせかける。
    「なに?」
     じろりとした母の視線に、メインは静かに首を振った。
    「いいえ、何も」
    「そう」
     メイヴは侍女が注いだワインの杯を持ち上げながら、息子に命じた。
    「フィンダウィルをここへ。あの子にも、一役買ってもらわなければね」

     フェルディアが女王の天幕にやってきたころには、すでに月は天高く昇り、焚き火が赤々と燃えていた。
    「ダマンの息子フェルディア、参上いたしました」
     銀髪の青年が最敬礼をすると、メイヴは優雅に微笑み、ゆったりと腕を広げた。
    「よく来てくれたわね、フェルディア。さ、こちらへ」
     勧められるままに女王のそばに座ると、メイヴはすまなそうに眉を下げた。
    「強引な真似をしてごめんなさいね。これはせめてものお詫びよ。さあ、おまえたち! 持っていらっしゃい!」
     メイヴが手を叩くと、湯気を立てる豪華なごちそうが次々と運ばれてきた。楽師が音楽を奏で始める。
     牛捕りの最中とは思われぬほど、陽気な空気があたりを包んだ。王女フィンダウィルがやってきて、フェルディアに酌をした。
    「どうぞ、もっとお飲みになって」
     耳元でフィンダウィルがささやき、フェルディアの日に焼けた太い腕や胸板をゆっくりとさすった。
     その白い指先のなまめかしさに、注がれた酒をごくりと飲みくだす。
     フェルディアは驚いていた。
     王女に会ったのは久しぶりだったが、以前の彼女はもっと幼く、あどけない少女だったと記憶している。
     間近で見る長いまつ毛や濡れた唇にメイヴに似たものを感じて、フェルディアは動揺した。
    「ふふ、さすがはコノートで一番の戦士と讃えられるだけあるわ」
     頰に触れた冷たい指の感触に、思わずフェルディアはびくりと震えた。
     振り向けば、メイヴが妖艶な笑みを浮かべて、こちらを見下ろしている。
    「修行の成果かしら。本当に立派になったわ。惚れぼれするような勇士だこと」
     メイヴの声は、フィンダウィルよりさらに甘美だった。
     蜂蜜のように甘くまとわりつき、脳髄を溶かされていくような気がした。
    「ねえ、フェルディア。私にだって心はあるの。だからこそ、ここまであなたを呼び出さずにおいた。けれど、コノートの戦士たちは、みんな〈猛犬〉に殺されてしまった」
    「私、は……」
     なぜか、ひどく酩酊している。頭がぐらぐらする。
    「コノートの最強の戦士、フェルディア。どうか、我々の敵と──クー・フーリンと戦って」
    「メイヴ、様……」
     ねばつくような倦怠感から逃れるように、フェルディアは強く頭を振った。
    「できません。我が妹と、戦うなど」
    「気持ちはわかるわ。でも、私たちには、もうあなたしかいないのです」
     細い指が、節くれだった手に絡みつく。
    「あなたには、命運を背負った勇士にふさわしい報酬を与えるわ。戦車、土地、財宝。租税も免除します。それに」
     メイヴの声とともに、フィンダウィルがフェルディアにすり寄った。
     少女の吐息はかぐわしく、やわらかな温かさが肌に触れる。
    「我が娘、フィンダウィルをあなたに差し上げるわ。この子は、いずれ私の跡を引き継いで、コノートの女王となる。そしてあなたには、王の座につく未来が与えられるのよ」
     兵士たちがざわめき、大きな喝采に包まれる。
     フィンダウィルはとろけるような笑みを浮かべ、肩に頭をもたせかけてきた。
     ああ、素晴らしい。なんて素晴らしい贈り物だ。

     だが──。
     
     フェルディアは王女を押しのけ、立ち上がった。
    「身に余る光栄です」
     硬い声で、青年は言った。
    「ですが、私はどうしてもクー・フーリンとは戦えない。どうかお許しください、メイヴ様」
     そのまま、フェルディアは場を去ろうとした。
    「──へえ」
     ぴしり、と空気を砕くような声が響いた。
    「クー・フーリンが言っていたことは、本当だったようね」
    「……は?」
     思わず、フェルディアは振り向いた。
     メイヴは、いまや甘い幻惑の装いを脱ぎ去っていた。そこにいるのは、狡猾な牙をむき出した、圧倒的な支配者だった。
    「あの娘……クー・フーリンは言ってたわ。たとえ自分がフェルディアと戦ったとしても、大した名誉にはならないってね」
    「なっ」
     目の前にさっと暗い影が落ちる。
    「嘘だ。そんなことを彼女が言うわけが」
    「私だって、なんて馬鹿なことを言うんだろうと思ったわ。けれど、今のあなたを見たら、不本意ながら納得ね。あなたは卑怯者で、臆病者。これじゃ、クー・フーリンがあんなことを言うのも無理ないわ」
    「……ッ!」
     フェルディアは、身体を駆けめぐった激情をなんとか押さえ込んだ。
    「……私が卑怯者で臆病者とは、どういうわけです」
     絞り出すような声で言う。メイヴはふっと唇を歪めた。
    「何人もの勇士たちが、あの猛犬と戦って死んだわ。けれど、彼らは忠義と名誉をコノートのために捧げてくれた。そんな彼らが、今のあなたを見たら、なんて言うかしら?」
     メイヴはささやくように続ける。
    「それに、遺された者たちは、どんな歌を歌い継ぐかしら? 仲間を殺した敵の女を、味方より優先した男。命惜しさに国を見捨て、仲間を見捨て、コノートの名誉を地に落とした裏切り者──!」
    「私は裏切りなど! それに、命など惜しくは──!」
    「そう」
     メイヴは頬杖をつき、フェルディアを見上げた。
    「口先だけなら、何とでも言えるわ」
     フェルディアのこぶしが震えた。うつむくと銀色の髪がぱらりと落ち、顔を隠す。
    「……わかりました。戦いましょう」
     ごうと音を立てて夜風が吹き抜け、炎が激しく揺らめいた。メイヴの目が細まる。
    「さあ、称えなさい! 我がコノートの誇り。映えある偉大な勇士の姿を!」
     高らかな声が天を衝く。あちこちから、勇敢な戦士を讃える歓声が次々とあがった。
     身動き一つしない青年の胸に、王女が身を預ける。
     鼓舞と感嘆と称賛の怒号は、止むことなく青年の背中に降り注いだ。


    「嘘だ」
     クー・フーリンの言葉に、フェルグスは痛ましげな顔で首を振った。
    「本当だ。俺もこの目で見、そして聞いた。彼がメイヴの前で、おまえを殺す誓いを立てるのを」
    「嘘だ。嘘だ、うそだ!」
     両手を握り締め、クー・フーリンは叫んだ。髪を振り乱し、激しく身を震わせている。
    「クー、落ち着いて……」
     ロイグがなだめようとしたが、クー・フーリンはその手を激しく振り払った。
     身をひるがえし、そばに生えていた樹木の幹を勢いよく殴りつける。
     それでも収まらなかったのか、口を手で覆ったまま、荒々しく森の奥へ駆け込んでいってしまった。
    「あいつもアルスターの戦士だ。頭ではわかっている。『そういうものだ』と」
     ロイグの肩に手を置き、フェルグスが言った。
    「明日の朝、フェルディアは丘向こうの浅瀬でおまえたちと対峙する。戦士らしく、華やかな装いでやってくるだろうな。──おまえたちもよく休み、戦いに備えて、身だしなみを整えておけ」

     翌朝、ロイグに起こされたクー・フーリンは、泥を飲み込んだような気持ちで戦車に乗った。
     太陽はすでに燦々と照り輝いていた。
     地上の暗がりを全て暴くような日差しの中、槍を抱きしめ、無言で戦車に揺られていく。
     浅瀬に着いて地面に降り、顔を上げる。対岸に、一人の影を見る。
     目頭が熱くなる。身体が震え、口元が歪む。
     見覚えのある緋色のマントが、冷たい風に揺れている。
    「……嘘つき」
     泣き笑いのような表情を浮かべ、クー・フーリンはつぶやいた。

    「おい、フィン!」
     兄の声にも、妹は振り向かない。
     メインはフィンダウィルの肩を掴むと、無理やりこちらを向かせた。妹は嫌がるようにその手を払い、兄の顔を睨みつけた。
    「なあに? お兄様」
    「おまえ、どういうつもりだ」
     いつになく反抗的な妹の態度に、メインは内心驚いていた。
    「フェルディアの妻になるだと? おまえ、あれだけアルスターのロハズ・マック・ファセインに惚れてたくせに」
    「お兄様には関係ないでしょ」
    「関係ないわけあるか。おまえ、一体どうしちまったんだ。あのフェルディアへの態度。まるで母上のような──」
    「うるさいわね! ほっといてよ!」
     フィンダウィルが怒鳴った。妹の激しい拒絶に、メインは唖然とする。
     クー・フーリンとの交渉から戻ってきてから、ずっとフィンダウィルの様子はおかしかった。
     ふさぎこみ、一人で天幕に引きこもっていた。何があったのか聞き出そうとしても、まともに口を聞こうとしない。
     妹の顔つきがどんどん変わっていくのには気づいていたが、それは長らく快適な城暮らしから離れていることや、牛捕りに飽きあきしたせいだと思っていた。
     ──否、思い込もうとしていた。
    「なあ、フィン。クー・フーリンと何があったんだ」
    「!」
     水を向ければ、フィンダウィルは素直すぎるほどに反応した。真っ赤な顔で、唇を噛み締める。
    「おまえ、おかしいぞ。あれだけクー・フーリンのことを好いてたじゃないか。かっこいい、憧れの女性だって、ずっと言ってただろう」
    「…………」
    「なのに、今のおまえはどうだ。フェルディアとクー・フーリンの仲だって知ってるのに、戦いをけしかけるような真似をして。わかってるのか? あいつらが戦えばどちらかが、あるいは二人とも死ぬんだぞ?」
    「フェルディアが勝つわよ」
    「おい、フィン」
    「お兄様はフェルディアと仲がいいものね。彼のことが心配なんでしょ? 平気よ。フェルディアなら、あのクー・フーリンにだって勝てるわよ」
     メインは戸惑った。妹のことがわからなかった。
    「まるで、クー・フーリンが死ねばいいと思ってるみたいな言い方だな」
    「ええ、思ってるわ」
    「!」
     フィンダウィルの言葉に、今度こそメインは絶句した。
     信じられない。これは、本当に自分の妹なのだろうか。
     気弱で優しくて、無邪気にあの女戦士を慕っていた彼女なのだろうか。
    「おまえ、一体何が……」
    「私はクー・フーリンを許さない」
     吐き捨てるように、フィンダウィルは言った。
    「あいつは私を辱めた。私の名誉を傷つけた。絶対に許さない、そうよ、許さないわ!」
     メインは、熱に浮かされたように憎しみの言葉を吐き続ける妹の姿を、呆然と見つめた。
    「あんな奴、死ぬほど苦しめばいいんだわ。クー・フーリンが目の前から消えてくれるなら、私はお母様にも喜んで従うわ!」
     一息に叫び、フィンダウィルは荒々しく肩を弾ませた。
     だが、自分を見つめる兄の目線に気づくと、ぎくりと身体をこわばらせる。そしてそのまま、逃げるように走り去ってしまった。
    「……なんだよ」
     メインはぽつりとつぶやいた。片手で額を抑える。足元がひどくおぼつかない。

     ──メイン。おまえはフェルディアを見張りなさい。

     母の声が脳裏によみがえる。
     万一、フェルディアがクー・フーリンとの戦いを放棄して逃げる、あるいは裏切るような真似をしたときは、迷わず殺せ。
     母は、そう自分に命じた。逆らえばどうなるか、彼女の息子であるメインにはよくわかっていた。
    「なんなんだよ。どいつも、こいつも」
     青年の消え入るようなつぶやきは誰にも聞かれることはなく、夜のしじまに吸い込まれていった。
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