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    Haruto9000

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    Haruto9000

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    「クー・フーリンが女性だったら」妄想。
    ※FGO第1部のみの情報で書いていたので、設定ズレなどはご容赦ください。

    ここから書きかけになるので、キリがいいところまで書いたら順次アップします。
    「◯◯編」としてまとまったら、丸ごと1本として、ピクシブとポイピクにアップします。

    #女体化
    feminization
    #クー・フーリン
    kooHooLin

    ミラーリング #15-5「目覚めたアルスター軍」 ゆらゆらとたゆたう感覚に、クー・フーリンはぼんやりと目を開けた。
     目の前で、透明な黄金の光が遊ぶように揺れている。
     ひんやりと全身を包む冷たさに身じろぎしたとき、クー・フーリンは後ろから誰かに支えられていることに気づいた。
    「……クー?」
     ささやき声に、クー・フーリンは息を飲んだ。
     妙に重い身体をなんとか動かし、振り返ろうともがく。光を紡いだような髪が、鼻先をかすめる。
    「エメル?」
     喉から絞り出した声は、ひどくかすれていた。
    「よかった、気がついたのね」
     エメルは微笑んだが、その両目には涙が浮かんでいた。
     唇を噛み、嗚咽をこらえる妻の顔を、クー・フーリンは声もなく見上げていた。
    「エメル……なんで……?」
     そこでクー・フーリンは、自分がエメルに抱きかかえられて、川につかっていることに気づいた。
     ゆらゆらと揺れていた光は、水面が反射する太陽の光だったのだ。
    「ロイグがぼろぼろになったあなたを運んできたの。本当によかったわ、目が覚めて」
    「ここは……?」
    「フィングラス川よ。私たちの前に、不思議な女性が現れてね。あなたをいくつかの川で水浴させるようにっておっしゃったの。そうすれば、元気になるからって」
    「不思議な女性……?」
     クー・フーリンの脳裏に、一羽のワタリガラスが浮かぶ。
     ふと、自分の身体を見下ろした。薄い衣に包まれた肌には、無数の傷跡が縦横無尽に走っていた。だが、痛みはだいぶ薄らいでいる。
     クー・フーリンはため息をつき、身体の力を抜いてエメルにもたれかかった。
     戯れに川の水をすくい上げれば、ぱしゃぱしゃと音を立てて水滴がこぼれた。
     エメルはしばらく黙ってクー・フーリンの頭をなでていたが、やがて、ためらいがちに口を開いた。
    「ロイグから聞いたわ。……あなた、お兄様と戦ったのね」
     その瞬間、クー・フーリンの胸を冷たい刃が貫いた。ふわふわとした空気が一気に砕け散る。
     まぶたの裏で、青い水底にたゆたう銀髪がよみがえった。
     穏やかな白い顔を、流れ出す紅が無慈悲になでていく。
    「あ……」
     とっさに口を手で覆うが、こみ上げてくるものを抑え切れない。
     喉の奥がふさがって、聞き苦しい声が漏れた。両目が燃えるように熱くなる。
    「……つらかったわね」
     エメルは、そっとクー・フーリンを包み込む。
     思わず、クー・フーリンは白い腕にすがりついた。エメルは何も言わず抱きしめ返してくれる。
     自分を包む穏やかな温かさに、涙が湧き上がるのを止められない。
     クー・フーリンは、顔を覆ってすすり泣いた。
     エメルは、ずっと自分を抱いてくれていた。
     
     クー・フーリンとエメルが自分たちの館に戻ると、そこには、フェデルマとレンダウィルが待っていた。
    「クー!」
     帰ってきた二人を見るやいなや、目にいっぱい涙をためたレンダウィルが、勢いよくクー・フーリンに飛びつこうとした。
    「こら、相手は怪我人よ」
     フェデルマがぴしりとたしなめると、レンダウィルは慌てて足を止めた。
     少し恥ずかしそうにクー・フーリンを見上げると、傷だらけになった友の手を握った。
    「よかった。あなたが生きてて」
    「……ああ」
     クー・フーリンは胸に温かいものが広がるのを感じながら、友に微笑みかけた。そして、歩み寄ってきたもう一人の友に目を移す。
    「フェデルマ、それ……」
     そこでクー・フーリンは、彼女の腕に分厚い包帯が巻かれていることに気づいた。
    「なに、かすり傷よ。私が戦士なら勲章ってところね」
     美しいドルイダスは勝ち気に微笑む。クー・フーリンも破顔した。
    「ありがとな。おまえのおかげで、時間が稼げたぜ」
    「あなたこそ、一人でよく持ちこたえてくれたわ。ありがとう。もう大丈夫よ」
    「え?」
     クー・フーリンは瞬きをした。レンダウィルが目を輝かせ、興奮した様子で叫んだ。
    「いい知らせよ、クー。とうとうマハの呪いが解けたのよ!」
     その言葉に、今度こそクー・フーリンは目を丸くした。
     慌てて妻を振り返る。エメルは、どこか曖昧な微笑みを見せた。
    「コンホヴォル王も、夫のコナルも、赤枝の騎士団たちもみんな立ち上がったのよ!」
     レンダウィルははしゃいだ声で続けた。
    「王たちはスレモンの丘に向かったわ! これでもう、メイヴ女王なんて目じゃないわ。それもこれも、あなたが戦ってくれたおかげよ、クー! それに、スアルダウ様が命をかけてくれたから――」
    「レンダウィル!」
     鋭いフェデルマの一喝に、レンダウィルははっとしたように言葉を切った。
     だが、クー・フーリンは聞き逃さなかった。
    「父さまがなんだって?」
     レンダウィルは、しまったという表情を浮かべている。
     クー・フーリンは勢いよくエメルの顔を見た。美しい妻の顔が青ざめている。ざらりとした嫌な予感が胸を覆う。
    「おい、答えろ。父さまがどうした?」
     焦りに突き動かされ、クー・フーリンはレンダウィルの肩を掴んだ。
     その力の強さに、レンダウィルが小さく悲鳴をあげる。エメルが慌てて止めに入った。
    「クー、落ち着いて! スアルダウ様はね、その――」
    「俺が話しますよ、エメル様」
     クー・フーリンたちは弾かれたように顔をあげた。
     見れば、戸口にはロイグが立っていた。ロイグは主人の顔を見て、わずかに表情をほころばせた。
    「元気になったみたいだな。よかった」
    「ロイグ。おまえ、今までどこに……」
     レンダウィルから手を離し、クー・フーリンはロイグに詰め寄った。とがめるような口調に、青年は肩をすくめてみせる。
    「おまえのことをエメル様に頼んだあと、俺は俺で走り回ってたのさ」
     エメルは、諫めるようにクー・フーリンの手を掴んだ。
    「ロイグは、あなたのために、本当にいろいろ尽くしてくれたのよ」
     妻の言葉に、クー・フーリンは我に返った。気まずげに御者を見上げる。ロイグは自嘲的な笑みを浮かべた。
    「いいんですよ、エメル様。俺は結局、大して役に立ちゃしなかったんですから。マハの呪いを解いたのだって、俺じゃない」
    「そ、そうだ。父さまとマハの呪い、どう関係があるんだ」
     ロイグは、真面目な顔でクー・フーリンを見据えた。
    「エヴァン・マハに着いたとき、フルヴィデ様から聞いたんだ」
    「フルヴィデが?」
     クー・フーリンは眉をひそめた。意外な名前だったからだ。
     フルヴィデ・フェルヴェン王子は、コンホヴォル王の息子の一人だ。
     もっとも、長男のコルマク王子や、幼くして散った末息子のフォラマン王子とは腹違いだ。
     将来を期待された一人だったが、実母を喪ってからは人が変わり、ほとんど城の外に出ることがなかった。あのコンホヴォルも手を焼いていたと聞いている。
    「おまえをここに連れ帰ったあと、俺はスアルダウ様に会おうと思った。というのも、スアルダウ様が味方を探してくれていると思ったからだ」
     ロイグは、淡々とした口調で続けた。
    「赤枝の館に着いたとき、庭で戦士たちは戦支度を始めていた。驚いたよ。呪いは完全に解けたんだと思った。俺は召使いを捕まえて、スアルダウ様がいないか聞いた。そこに、フルヴィデ様がやってきたんだ」
     ロイグの脳裏に、痩せた王子の落ちくぼんだ暗い目が思い出される。用向きを聞かれて答えると、フルヴィデの瞳の影が増した。
    「フルヴィデ様がおっしゃるには、スアルダウ様はずっとおまえの味方を探し続け、戦士たちを叱咤し続けてくれたらしい。王も含めてな」
     そこで言葉を切ると、ロイグは深く息を吸い、クー・フーリンの瞳を見つめた。
    「けれど、それだけではどうしても女神の呪いは解けない。そこで……スアルダウ様は、『自らの血をもって呪いを祓う』とおっしゃって、首をはねたんだ」
     クー・フーリンは息を飲んだ。エメルが自分の腕に触れるのを感じる。
     ロイグは続けた。
    「スアルダウ様の呼びかけと血の犠牲で、マハの呪いは解けた。男たちは、再び戦えるようになったんだ」
     言葉を失った主人の目の前に、ロイグはこぶしを突き出した。
    「これは、フルヴィデ様から託されたものだ。残念だが、スアルダウ様の首はもう埋葬されて、これだけ残ったらしい」
     開かれた手のひらの上には、一揃いの耳飾りが乗っていた。
     クー・フーリンは、黙ったまま耳飾りを見つめた。間違いない。養父のものだ。
     まぶたの裏に、弟であるフェルグスとは似ても似つかぬ男の姿が浮かぶ。控えめでおとなしく、戦いが苦手だった男。
     ひょっとして、自分は養父のことを見誤っていたのだろうか。
     養父は、自分が考えていたよりもずっと、勇猛な人物だったのだろうか。
     
     ──だが、今となってはもう、養父と話すことはできない。

     クー・フーリンは、ロイグの手から耳飾りを取り上げた。
     自分がつけていた耳飾りを外し、養父のそれをつける。白い華奢な耳元で、銀の耳飾りが静かに揺れた。
    「アルスターの戦士たちが立ち上がったなら、オレも行かなきゃな」
     静かに告げると、クー・フーリンはエメルを振り返り、白い歯を見せた。
    「最終決戦だ」

     盛り上がる女たちの声を聞きながら、ロイグはそっと柱の陰に控えた。
    「父上も、取り巻きのドルイドたちも、どうしようもない馬鹿どもだ」
     吐き捨てるようなフルヴィデ王子の言葉を思い出す。
     コンホヴォルに何度も訴えかけたスアルダウを、「王の心を煩わせる」としてドルイドや側近たちは痛めつけた。
     スアルダウは盾の上に倒れ込み、運悪く、硬い縁に首を打ち付けて絶命した。
     だが、結果としてその事故がコンホヴォルの目を覚まさせ、男たちに力を取り戻させるきっかけとなった。
    「王も女王も、どいつもこいつも、みんな醜いやつらばかりだ」
     フルヴィデは身を震わせると、ロイグの手に血濡れた耳飾りを押しつけ、荒々しく去ってしまった。ロイグは呆然として、王子の痩せた背中を見送るしかなかった。
    「おい、ロイグ!」
     はっと我に返る。きらきらとした力強い瞳が、自分を覗き込んでいる。
    「何ぼーっとしてんだよ? ほら早く、セングレンたちを戦車につないでくれよ!」
    「あ、ああ。任せてくれ」 
     ロイグは笑みを作り、もたれていた柱から身を起こした。
     これでいいのだ。語るべきことは、もう語った。
     この短期間で、彼女は人の死を見過ぎている。
     養父の凄惨な最期など──言う必要はなかった。
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