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    Haruto9000

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    Haruto9000

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    「クー・フーリンが女性だったら」妄想。
    ※FGO第1部のみの情報で書いていたので、設定ズレなどはご容赦ください。

    ここから書きかけになるので、キリがいいところまで書いたら順次アップします。
    「◯◯編」としてまとまったら、丸ごと1本として、ピクシブとポイピクにアップします。

    #女体化
    feminization
    #クー・フーリン
    kooHooLin

    ミラーリング #15-9「戦いの終わり」「撤退、撤退だ!」
     兵士たちの悲鳴が飛び交い、壊れかけの戦車が走る耳障りな音が響く。
     メイヴは、苦々しげな顔で荒れ果てた野を睨みつけていた。
     いまや、形勢はすっかり逆転してしまった。
     コノート兵を中心とする連合軍は総崩れとなり、戦場に残っているのは、メイヴが率いるわずかな手勢だけだった。
     敗北の色が濃くなったとたん、アリル王は真っ先に逃げていった。
     連れ合いの情けなさにメイヴは激しい苛立ちを覚えたが、それでも、となんとか気持ちをなだめようとする。
     赤牛ドン・クアルンゲは手に入れた。略奪した他の牛たちと共にすでにコノートに送っているから、取り戻されることはない。
     ここが潮時だろう。
     メイヴは、残り少ない兵たちに戦車を守られながら、退却の足を早める。
    「ギャアッ!」
     背後で兵士の悲鳴が聞こえた。はっと振り向くと、そばに付いていた兵の背中に、深々と槍が突き刺さっていた。
     驚く間もなく、無数の槍が怒涛の勢いで降ってきた。兵たちが次々と貫かれ、絶叫と共に倒れていく。
     飛んできた一本の大ぶりの槍が、戦車の車輪に刺さった。メイヴは、槍の柄に文字が刻まれた石がくくりつけられているのに気づき、目を見張る。
    「しまった、魔術石──」
     石が光を放つ。次の瞬間、槍が爆発し、戦車の車輪が粉々に吹き飛んだ。
    「きゃああっ!」
     がくんと大きく戦車が揺れ、メイヴは身体が投げ出されるのを感じた。
    「ぐっ!」
     地面に叩きつけられ、メイヴはうめき声をあげた。
     痛みをこらえ、身体を起こそうとすると、足音が近づいてきた。
     メイヴは弾かれたように顔をあげる。逆光に目がくらみ、一瞬まぶたを閉じる。
     手をかざして再び目を開ければ、冷たい瞳がひたとこちらを見据えていた。
    「よう、メイヴ女王」
    「クー・フーリン……!」
     メイヴは、ぎり、と歯を噛み締めた。
     いまいましい小娘は、片手を腰に当て、地に這いつくばる自分を見下ろしている。
     風になびく髪をうるさそうにかきあげ、クー・フーリンは一歩こちらへ近づいた。
    「散々アルスターを蹂躙してくれたな、女王? この落とし前、どうつけてもらうか──」
    「母上に近づくな!」
     メイヴの前に、息子のメインが飛び出してきた。クー・フーリンが眉をひそめる。
     メインは剣を構え、敵の女を睨んだ。
    「俺が相手だ、クー・フーリン。よくも仲間たちを──」
     クー・フーリンはすばやく腰の剣を引き抜いた。刃が白く閃いた瞬間、王子の右腕が宙に舞った。
    「ッ!」
     パッと飛び散った血がメイヴの顔にかかり、白い頬を汚す。剣を握ったままの腕が、ぼとりと地面に転がった。
    「ぎゃ、ああああッ!」
     メインはよろめき、腕を押さえて絶叫した。クー・フーリンはくるくると剣を回し、苦悶する王子を冷ややかに見つめる。
    「人が話してるときに割り込んでくるたぁ、無粋な野郎だ。──ああ」
     クー・フーリンの額に、うっすらと細い青筋が浮かぶ。
    「フェルディアとの戦いに水を刺したのも、おまえだったか?」
     そのまま、クー・フーリンは勢いよくメインの横顔に蹴りを叩き込んだ。
    「ぐあっ!」
     王子の身体が吹っ飛び、地面に倒れ込んだ。うめき声をあげ、動かなくなる。
    「メイン!」
     メイヴは腰を浮かしかけたが、ぴたりと顔の前に切先を突き付けられ、動きを止める。
    「さて、メイヴ。おまえを守る者はもういない」
    「く……」
     怒りで全身が火照るのに、メイヴの額からは冷たい汗が滑り落ちる。
     コノート女王の矜持として、断じてこの小娘に降参するわけにはいかなかった。だが、この状況では──。
    「そこまでにしておけ、猛犬」
     低い男の声が響いた。
    「彼女を殺してもらっては困るな。協定がやりづらくなる」
     クー・フーリンのまとっていた殺気が消え、表情がぱっと華やいだ。
    「王!」
    「……!」
     コノート女王は息を飲んだ。クー・フーリンが一歩脇へ退く。若者の陰から、端正な顔をした背の高い男が、姿を現した。
    「会いたかったぞ、メイヴ」
    「コンホヴォル……!」
     メイヴの頭がカッと熱くなる。アルスター王は、ゆったりと目を細めた。
    「猛犬」
    「はい」
     そばに寄ってきたクー・フーリンを見て、コンホヴォルは幼子を諭すように言った。
    「いくらおまえでも、女王に手をかけるのは感心せんな」
     王の言葉に、クー・フーリンは拗ねたように唇をとがらせる。
    「オレは女と子どもは殺しませんよ。ちょっと脅しただけです。あなたも知ってるくせに」
    「ああ、すまない。そうだったな」
     クー・フーリンは膨れっ面をしたが、コンホヴォルが軽く頭をなでると、ほのかに頬を染め、嬉しそうに破顔した。
     メイヴは黙ったまま、戦場には似つかわしくないほど和やかなコンホヴォルとクー・フーリンのやりとりを眺めていた。
    「さて、彼女はコノートの女王だ。丁重にお見送りする必要がある」
     王は振り向いた。
    「クー・フーリン。おまえには、メイヴ女王が無事にシャノン川を渡るまでの護衛を命じる。コナルの戦車を使わせてやるといい。向こうにコナルがいるから、呼んでこい」
    「でも」
     クー・フーリンはちらりとメイヴを見た。コンホヴォルはにこりと笑った。
    「もうこの女は無力だ。私は大丈夫だから、行ってこい」
    「はあい」
     しぶしぶ、といったように、クー・フーリンは仲間のほうへ走っていく。
     コンホヴォルは、遠ざかる背中を見送った。メイヴもついつられてクー・フーリンの背を見つめていたが、不意に手を差し出され、ぴくりと肩を跳ねさせた。
    「さあ、メイヴ。──どうぞ、お手を」
     目の前の手のひらを叩き落としたい衝動にかられたが、メイヴはぐっと唇を引き結び、自分の手を乗せた。自分より一回り大きな手に包まれ、顔をしかめる。
    「こんなことになって残念だ」
     コンホヴォルはささやくように言った。
    「私もよ」
     メイヴはつんと胸をそらした。
    「まだまだ頂戴しきれていないものがたくさんあるのにね。美しいものは私のもとでこそ輝くのに。宝があなたのもとで腐るだなんて耐えられないわ」
    「ひどいことを言う。私に可愛らしく愛を囁いてくれた小鳥はどこに行ったのだ」
    「自由な小鳥は羽ばたいて飛んでいったわ。早く離してちょうだい」
     メイヴはコンホヴォルの手を振り払おうとしたが、逆に痛いほど強く握り込まれた。
    「ちょっと、なにを」
    「メイヴ」
     ぐっと王の顔が寄せられて、メイヴは表情を歪めた。
    「ッ、いい加減に──」
    「あれは私の“犬”だ」
    「──!」
     耳元でささやかれた言葉に、メイヴは目を見開く。
    「おまえには渡さない。私のものだ」
     強い力で引っぱられて立ち上がるも、ぱっと手を離されて、メイヴの足はよろめいた。呆然と見上げると、コンホヴォルは薄い笑みを浮かべている。
    「あなた……」
     仄暗い瞳に、かつて自分に背を向けた姿がよみがえって、メイヴはコンホヴォルを睨みつけた。
     激情のままに女王は口を開きかけたが、言葉は声になる前に失われた。
    「我が王ー!」
     コナルを連れて、クー・フーリンが戻ってきたのだ。
    「残りの始末は、あの者たちに任せる。協定については、また馬を送ろう」
     立ち尽くすメイヴを一瞥し、コンホヴォルはふいと踵を返した。クー・フーリンたちと二言三言、言葉を交わすと、アルスター王は去っていった。
    「おい、メイヴ。オレたちがあんたを送り届けるぜ。この戦車に乗りな」
    「…………」
     メイヴは、じっとクー・フーリンを見つめた。
    「なんだよ?」
    「クー・フーリン、あなた」
     女王は、不思議そうに首を傾げている娘を見つめた。
     あれだけ辛酸を舐めさせたのに、苦しめたのに、娘の瞳は信じられないほど透き通ったままだった。
    「あなた、やっぱり、私のものにならない?」
    「気でも違ったのか?」
     何言ってるんだ、とクー・フーリンは呆れ果てた顔をした。
    「ここまできてそんなこと言えるの、ある意味大したもんだぜ、メイヴ。いいからさっさと戦車に乗れよ」
    「どうしても、あの男の元にいると?」
    「くどい。騎士の忠義を安く見るんじゃねぇぞ」
     メイヴは、この娘の中で、アルスター王の影が深く根を張っているのを感じた。 
    「それならいっそ、今ここであなたを殺したほうがいいかしら」
    「今のおまえにできるならな」
     クー・フーリンは鼻を鳴らした。
    「言ったろ。オレは女を殺さないって」
    「あなたも女でしょう」
     メイヴが戦車に乗り込むと、クー・フーリンは自分の馬に飛び乗った。
    「オレにはオレの信条があるからな」
    「信条ですって?」
    「いくらあんたがオレにブチ殺されて当然だったとしても、今のあんたは男たちに見捨てられた、哀れで無力な女にすぎない」
    「!」
     メイヴの顔が怒りで紅潮する。
    「そんな奴を殺しても、オレにはなんの名誉にもならない」
    「おい、しゃべりすぎだ、クー」
     コナルの叱責に、クー・フーリンは肩をすくめた。
    「……覚えてらっしゃい」
     ぼろぼろになった服の裾を握りしめ、メイヴはクー・フーリンを睨みつけた。
    「どいつもこいつも。絶対に許さないわ」
    「そうかい」
     涼しげな顔で、クー・フーリンは答えた。
     
     その後、メイヴは負傷した息子や兵たちとともにコノート国に帰り着いたが、先に退却していたアリル王は出迎えもしなかった。
     フェルグスを突き従えたメイヴは夫を罵ったが、いつもは黙っているアリルも、今回ばかりは眉を吊り上げて怒鳴った。
    「それもこれも、すべてはおまえのくだらぬ虚栄心が原因だろう」
     多くの掠奪品を獲得したとはいえ、戦力を大幅に失い、兵を出した氏族たちからの恨みも抱えることになったアリルは、苛立ちをたぎらせていた。
    「コンホヴォル王からは、7年の和平協定の申し出が来ている。私はそれを受けようと思う」
    「なんですって?」
     メイヴがなおも言い募ろうとするのを、アリルは手で制した。
    「いいか。いくらおまえが生まれついての王だとしてもだ。私もこの国の王であることを忘れてもらっては困る」
    「私と結婚したから王座につけたくせに、ずいぶんと偉そうだこと」
     メイヴのあざけるような声音に、コノート王の瞳に怒りが閃く。 
    「覚えておけ。おまえの言うことをなんでも聞く奴隷男が、他にいくらいたとしても」
     アリルは、メイヴの後ろに控えていたフェルグスに鋭い一瞥を投げかける。
    「おまえの夫である王は、名実ともにこの私だけなのだということをな」
    「ふん」
     女王は、いまいましげに舌打ちをする。
    「とにかくだ。アルスターとの和平協定は、王である私と、妻であるおまえの名で結ぶ。いいな?」
    「わかったわ」
     苦々しげな顔で吐き捨てると、メイヴはフェルグスを連れ、荒々しい足取りでその場から去った。
    「おい、メイヴ……」
    「今は黙っていてちょうだい、フェルグス」
     ぴしゃりと言葉を遮る女王に、フェルグスは嘆息して黙り込んだ。
     憤然と歩きながらも、賢い女王は大きく息を吸って、吐く。
     ──待つのよ、メイヴ。
     そう、時を待つのだ。この戦いで、自分に油断や慢心がなかったといえば嘘になる。この屈辱を忘れてはならない。
    「アリル……」
     今は国力の回復に努め、自らの力をも鍛え直すのだ。
    「コンホヴォル……」
     そして時が来たら、今度こそ。
    「クー・フーリン……!」
     支配者の名にかけて、今度こそ屈服させてやる!


     アルスターの王都エヴァン・マハでは、祝宴が催されていた。
     失ったものは多いが、それでも無事に戦いを乗り越えたことを祝うため、民たちに酒と肉が振る舞われ、楽士たちは高らかに歌を歌った。
     クー・フーリンは、コンホヴォル王から直か賞賛の声を賜った。彼女の頭上には人々の称賛と喝采がの声が降り注ぐ。エメルから花輪をかけられたクー・フーリンは、妻の手を握って笑顔を見せた。
    「クー!」
     可愛らしい声とともに、レンダウィルがぱたぱたと駆け寄ってくる。その後ろから、ロイグ、フェデルマ、コナル、ロイガレも歩いてきた。
    「さっきそこで、ドルイドのモランに聞いたんだけど」
     フェデルマが楽しそうに笑う。
    「バード(青衣の詩人)たちが、あなたを讃える詩を作るそうよ。よかったわね」
    「おめでとう、クー」
     エメルの言葉に、クー・フーリンはにっこりする。
    「おう、ありがと」
     若者たちは毛皮の敷物に座り、歓談を楽しんだ。こうして友と心から朗らかな笑顔を交わし、高らかな笑い声を響かせ合うのは、本当に久しぶりだった。
    「そういえば、旅の吟遊詩人から聞いたんだが」
     コナルが、ふと思い出したように言った。
    「赤牛ドン・クアルンゲのことだ。コノートに連れて行かれたあと、白牛フィンヴェナハと戦ったらしい」
    「フィンヴェナハって、アリル王の持っていた牛か?」
    「ああ」
     ワインを一口飲み、コナルはため息を吐いた。
    「激しく争って、二頭とも死んだそうだ」
    「ええっ!?」
     レンダウィルが叫んだ。クー・フーリンとエメルも目を丸くした。
    「相打ちか?」
     ロイガレの言葉に、コナルは肩をすくめる。
    「勝負自体は赤牛が勝ったが、戦いの興奮が冷めやらぬうちに心臓が破れて、そのまま死んだらしい」
    「なにそれ」
     レンダウィルが口をすぼめて言った。
    「強者たちがぶつかったとき、単純な勝ち負けで終わらないのは、よくあることだ」
    「虚しいわよ」
    「それでも、戦わなければいけないこともある」
    「そんなの男の論理じゃない」
     レンダウィルはむすっとしてしまう。コナルは困った顔で、不機嫌になった妻をなだめ始めた。
     クー・フーリンは黙って杯を弄んでいたが、ふと視線を感じて振り向いた。エメルが自分を見つめている。ハヤブサのような艶やかな目が、心配そうな色を浮かべていた。
     目元をやわらげ、クー・フーリンは腕を伸ばすと、妻の細い肩を抱き寄せた。
    「そんな顔するな、エメル」
     エメルは困ったように身じろぎする。
    「いえ。私は、ただ」
    「わかってるって。気にすんなよ」
     あやすように肩をさすってやると、腕の中でエメルは曖昧に微笑んだ。
     視線をめぐらせたクー・フーリンは、ロイグも何か言いたげな顔でこちらを見ていることに気づいた。
    「おい、ロイグ! 酒、もっとついでくれ」
    「あ、ああ」
     おおげさに空の杯を振れば、友は目が覚めたように酒壺を持ち上げた。並々とワインを注いでもらい、礼を言う。
     クー・フーリンは、杯の中でたゆたう臙脂色をじっと見つめた。まだ飲み込んでいない酒の苦味が、じわりと舌に広がる気がした。
    「ま、こういう結末もあるってこった」
     小さな声でつぶやき、クー・フーリンは杯をあおった。
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