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    Haruto9000

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    Haruto9000

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    「クー・フーリンが女性だったら」妄想。
    ※FGO第1部のみの情報で書いていたので、設定ズレなどはご容赦ください。

    ここから書きかけになるので、キリがいいところまで書いたら順次アップします。
    「◯◯編」としてまとまったら、丸ごと1本として、ピクシブとポイピクにアップします。

    #女体化
    feminization
    #クー・フーリン
    kooHooLin

    ミラーリング #15-6「王女の最期」「メイヴ様! アリル様!」
     天幕に駆け込んできた忠臣マック・ロスの慌てた様子に、メイヴは眉をひそめた。
    「どうしたの? ずいぶんな慌てようね」
    「一大事でございます」
     マック・ロスは、ぜえぜえと肩を弾ませた。
    「アルスターの男たちが、ついに立ち上がったのでございます」
    「なんだと?」
     アリルは上ずった声をあげた。メイヴも舌打ちをする。
     今のアイルランド連合軍は、クー・フーリンによって戦力を大幅に削られていた。
     コノートで一番の勇士だったフェルディアをも失った今、アルスター軍に勝てる見込みは低かった。
    「退却だ!」
     アリルは叫んだ。
    「本来の目的だった赤牛ドン・クアルンゲは手に入れた。多くの家畜や財宝も奪った。もう十分だろう、我が妻よ?」
    「ええ」
     メイヴは苦々しげな顔でうなずいた。
    「仕方ないわね。でも、退却までの時間を稼がないと」
     ふと、メイヴは天幕の隅に座り込んでいる娘に目を留めた。そのとたん、一案がひらめく。
    「フィンダウィル」
     母親の声に、王女はびくりと震えた。
    「は、はい。お母様」
    「おまえ、アルスターの貴族と懇意にしていたわね? 確か、ロハズ、だったかしら」
     フィンダウィルは息を詰めた。母は何を言うつもりなのだろう。
    「今なら、その男の呪いも解けているはず。彼を訪ねて、休戦の交渉をしてくれないかしら」
    「!」
     思いがけない言葉に、フィンダウィルは目を丸くした。
     メイヴは優美に微笑み、フィンダウィルのそばにかがみこむと、娘の顎をなでながらささやいた。
    「どうせなら、一夜を過ごしてきても構わないわよ」
     王女の頬が真っ赤に染まった。信じられないという思いが胸を貫く。だが、同時に高鳴るときめきは抑えられなかった。
     ──まさか、こんな形でチャンスが飛び込んでくるなんて。

     ロハズ・マック・ファセインが野営している場所は、あらかじめメイヴの斥候によって知らされていた。
     深くフードをかぶり、全身をマントで覆ったフィンダウィルが彼の元に到着したのは、夕闇があたりを包み始める頃だった。
    「ロハズ様。使者がお目通りを願っておりますが」
     従者の言葉に、ロハズは訝しげな顔をした。
     だが、しずしずと入ってきた娘の顔を見た瞬間、驚きのあまり立ち上がった。
    「フィンダウィル王女……?」
    「ロハズ様!」
     使者は喜びの声をあげ、ぱっとフードを取り払った。きらめくように美しい娘の顔が現れる。
     フィンダウィルは子どものように瞳を輝かせ、無邪気に男の胸に飛び込んだ。
    「お会いしたかったわ、ロハズ様!」
    「王女、どうして……?」
     戸惑う男の頰に手を当て、フィンダウィルは微笑んだ。
    「母の使いで参ったの。ああ、ああ──」
     少女は瞳を潤ませた。
    「ずっとお会いしたかったわ、ロハズ様」
     衝動のまま、ぶつけるように唇を合わせる。男も、すぐに応えてくれる。
     憧れの男の腕に包まれながら、フィンダウィルはこれ以上ない幸福を感じた。

     翌朝、日の出の赤い光を背に、フィンダウィルは自分の野営地へ戻った。
     馬に揺られながら、別れ際のロハズの言葉を思い出す。
    「あなたの言うことは、よくわかった」
     フィンダウィルの細い手を握りながら、彼は言った。
    「私の力でどこまでできるかわからないが、コンホヴォル王に進言してみよう」
     青年の麗しい笑顔を思い出し、鼓動が高まる。
     これなら、きっと母上たちも喜んでくれるだろう。
     それに、うまくいけば、ロハズと結婚できるかもしれない。
     フィンダウィルは心を弾ませながら、帰路を急いだ。

    「どういうことだ! 話が違うだろう!」
     鼓膜を破るような怒声に、フィンダウィルは立ち尽くした。
     天幕に入った彼女の目に飛び込んできたのは、怒り猛る大勢の男たちと、彼らに対峙する両親の姿だった。
    「おい、王女がいるぞ!」
     男の一人が目ざとくフィンダウィルを捕まえた。
     抗う間もなく、メイヴたちの前に引きずり出される。地面にしたたかに身体を打って、フィンダウィルはうめき声をあげた。
    「女王、あなたは言ったはずだ。連合軍に参加すれば、褒美に王女をもらえると」
     怒りの声をあげたのは、マンスター国の氏族長だった。メイヴは、いきり立つ男を冷ややかな目つきで見下ろしている。
    「同じ約束を私にもしたはずだ。あなたの娘と結婚できると」
     別の氏族長が進み出る。他の男たちも、我も我もと声をあげた。
     戦力を集めるため、メイヴとアリルは、七氏族の長たちにまったく同じ約束をしていたのだ。
     フィンダウィルは、震えながら身体を起こそうとした。乱暴に投げ出されたせいで、全身が痛い。
    「フィン、大丈夫か」
     誰かが駆け寄り、肩を支えてくれる。兄のメインだった。王子は、青い顔をした妹を助け起こした。
    「どういうことか、説明してもらおう」
     黙ったままのコノート女王に、氏族長は肩を怒らせた。
    「説明ですって? 一体、何を?」
     メイヴは動じない。
    「この状況をだ。そもそも、あんたは本当に王女を娶らせる気があるのか?」
     氏族長は女王を睨み据えた。
    「実はこっそり手を回して、俺たちに戦争の責任をなすりつけるつもりでは?」
    「何を馬鹿な!」
     メイヴは、呆れたとばかりに鼻を鳴らした。
    「しらを切るか、女王。では、なぜアルスターのロハズ・マック・ファセインと王女が通じている?」
     その名前が出た瞬間、フィンダウィルはざあっと全身の血の気が引くのを感じた。氏族長は続ける。
    「部下が、野営地を出ていく不審な人影を追いかけてな。その正体は、敵国の男と愛を交わすコノート王女ときたものだ」

     氏族長は、メイヴの足元に向かって、ぽいと何かを投げ出した。フィンダウィルは、吸い込まれるように放り出されたものを見る。
     それが何かわかった瞬間、フィンダウィルは悲鳴をあげた。
    「ロハズ様!!」
     氏族長の男が投げたものは、王女が愛を交わした男の首だった。光をうしなった虚ろな目を見て、喉の奥で引きつるような声が漏れる。
    「いや! いやぁ! ロハズ、ロハズ様!」
     髪を振り乱し、男の首にすがりついて泣き叫ぶ王女を、氏族長は侮蔑のまなざしで見下ろした。


     見られていた。
     フィンダウィルは全身が氷のように冷たくなるのを感じた。耐えがたい恥辱に身体が震え出す。
    「落ち着いてくれ!」
     父のアリルが、氏族長たちをなだめようと腕を振った。
    「おまえたちには、ふさわしい褒美を用意する。我が娘に関しては、その、もっとも誉れ高き勇士に向けて──」
    「私たちは、あのクー・フーリンのおかげで多くの同胞を失ったんだぞ!」
     氏族長が叫んだ。そうだそうだと、呼応するように群衆から声があがる。
    「失った以上の報酬がなければ割りに合わない。この無礼、どう落とし前をつけてくれるんだ!」
    「無礼ですって?」
     メイヴの目がきらりと光った。
    「コノートの女王に向かって、その物言いこそ無礼ではなくて?」
     女王が手を上げた瞬間、コノートの兵士たちが次々と氏族長たちに襲いかかった。
     嵐のような怒号が響き渡った。
    「きゃっ!」
     フィンダウィルの顔に何かが降りかかり、反射的に目を閉じる。おそるおそる手で触れると、ぬるりとした赤い液体が指先を汚した。
     はっと身体を固くした王女の目の前に、どさりと氏族長が倒れてきた。白目をむき、口からぽとぽとと血を垂らしている。
     わああ、と一斉に叫び声があがった。メイヴの兵と氏族たちがぶつかり合う。
    「フィン、こっちへ!」
     メインが急かすように妹の肩を押した。フィンダウィルの手から、ロハズの首が転がり落ちる。
    「いや、ロハズ様!」
    「早く!」
     兄は妹を無理やり立たせ、争いの中をかいくぐるようにしてその場から逃げた。
     いまや、味方だった者同士が、あちこちで殺し合っていた。
     罵りわめく声と剣戟が大地を揺るがす。母の怒り猛った叫びが聞こえる。
     王女の目の前で、槍で貫かれた男たちが血しぶきをあげながら、次々と倒れていく。
     フィンダウィルは茫然と、兄に手を引かれるまま走った。
    「!」
     不意に、背後が明るくなった気がして振り返ると、天幕に火がついていた。
     火は徐々に大きくなり、もつれあう男たちを飲み込んでいく。連合軍の秩序が崩れていく。
     フィンダウィルの脳裏に、あの女に言われた言葉がよみがえる。

     ──婚約してる男どもが暴動を起こすかもしれないだろ。

     メリメリと何かが引き裂かれるような音がした。次の瞬間、天幕が崩れ落ちた。つんざくような悲鳴があちこちから上がった。
    「王女はどこだ!」
     誰かの怒鳴り声が聞こえる。フィンダウィルは走り続けた。
     男たちの怨嗟の声は呪いとなって、どこまでも自分を追ってくるような気がした。

    「大丈夫か?」
     メインが、真っ青な顔でささやいた。二人は森の奥に駆け込み、岩陰に隠れていた。
     フィンダウィルは、放心した顔でうずくまっていた。遠くからは、まだ戦士たちの争う音が聞こえてくる。
    「くそ、あの蛮族ども。だから、俺はあんな奴らと組むのは嫌だったんだ」
     兄の舌打ちを聞きながら、フィンダウィルはぼんやりと自分の両手を見下ろした。
     よく褒められた白い手は、赤黒い血でべっとりと濡れている。お気に入りのガウンにも、血しぶきが模様のようにこびりついていた。
    「…………」
     ぱたりと手を下ろしたところで、指が固いものに触れた。
     取り出してみると、それは一振りの短剣だった。その瞬間、心臓を掴まれたように胸が苦しくなる。
     メインはそっと岩陰から抜け出すと、野営地の方向を睨んだ。
    「とにかく落ち着くまで、おまえはここに隠れてろ、フィン。俺は様子を見てくるから……」
    「……じゃないわ」
    「は?」
     そこで、メインは妹の様子がおかしいことに気がついた。
     どこから持ってきたのか、短剣を眺めながら、ぶつぶつとつぶやいている。
    「私のせいじゃない。私は悪くないわ。だって、だって私は」
    「おい、フィン?」
     明らかに様子がおかしい。王子の胸に不吉な予感がよぎる。
    「……そうよ、あいつのせいよ。あいつが言うことを聞いてくれないから」
     メインは冷たいものが背筋を這うのを感じながら、そっと妹に歩み寄った。
    「なあ、どうした? あいつって何だ、何の話だ?」
    「クー・フーリンよ」
     唐突にフィンダウィルが振り向いた。メインは息を飲んだ。
     妹は何かに取り憑かれたような表情を浮かべていた。目を爛々と光らせ、口を大きく歪めている。
    「クー・フーリンだと?」
    「そうよ。クー・フーリンが全部悪いの。いえ、違う、違う。クー様は私を……私はただ……」
     フィンダウィルは短剣を握ったまま、ぶんぶんと首を振った。その異様さに、メインは戸惑っていた。
     妹は一体どうしたんだ? もともと繊細な性格だ。内輪もめに巻き込まれて、気がおかしくなってしまったのか?
    「いいえ。あいつは私を貶めた。辱めた。あいつがあんなことしなきゃ、こんなことには」
     フィンダウィルは、呪詛を吐き続けている。
     メインは覚悟を決め、フィンダウィルに向かって一歩を踏み出した。否、踏み出そうとした。
    「こんなことになったのも、全部クー・フーリンが悪いのよ」
     不意に、フィンダウィルは妙にきっぱりとした口調で言った。色を失った瞳には、奇妙な熱が浮かんでいた。
    「あはっ! そうよ。母上を邪魔したあいつが悪い。コノートの戦士をたくさん殺した。フェルディアだって殺したじゃない」
    「フィン? おまえ……」
     メインが手を伸ばす。突然、フィンダウィルはけたたましく笑い始めた。
    「そうよ、あいつが母上の邪魔をしなければ、ロハズ様だって死ななかったわ! あいつさえいなければ、私は幸せになれたのよ!」
    「おい、フィン……」
    「あいつのせいよ!!」
     一声叫ぶと、フィンダウィルは短剣を自分の胸に突き立てた。
    「フィンダウィル!!」
     メインは絶叫した。
     王女の細い身体はゆらゆらと揺れたかと思うと、そのままばったりと倒れた。
     メインは妹の身体を抱き起こし、狂ったように名前を呼んだ。何度も揺さぶるが、力の抜けた身体はぐらぐらと揺れるだけだった。
     愛しい妹の命は、手が届かないところへ飛び去ってしまった。
     赤い染みが広がっていく胸元に顔をうずめ、メインはうめいた。頭がひどく混乱していた。

     ──あいつのせい。

     不意に、妹が呪っていた人間の名前がよみがえってくる。
    「クー・フーリン……」
     コノート王子は、かすれた声でつぶやいた。
     遠くから、メイヴの高笑いとともに、戦士たちが勝ち鬨をあげる声が聞こえていた。
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