ピンクのチーク顔を合わせるなり怪訝な目を向けられる。紫色の瞳が見つめる先には一体何が映っているのか、郭嘉には知り尽くせないが相手が何かを感じ取っていることは把握できた。少し忙しないその目の動きに柔らかく微笑む。
「どうかしたのかな。どこか、変?」
紫鸞の頭が僅かに揺れる。肯定でも否定でもない曖昧な返答は彼自身どう表現すればいいのかわかっていないのだろう。口元を煩わしそうに動かしたかと思えば考える素振りを見せて、次の瞬間には郭嘉の手を取った。左右の手が彼の両手の中へと収められる。
「匂い……」
「匂い?」
「いつもと、違う匂いがする」
ぐっと顔を寄せられて絡み合う視線が短くなる。間近で鳴る紫鸞の鼻は遠慮など知らない様子で幾度も郭嘉の纏う香りを嗅いでいた。すんすん、と音を立てて大袈裟に匂いを吸い込まれる。
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