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    meemeemeekodayo

    基本かくか受けで文章を書いている者です。たまに別ジャンル

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    ハスラーかくかちゃん来ません記念(ぐちゃぐちゃの笑顔で泣いている絵文字)
    現パロ遼嘉、け~さつ遼とハスラー嘉、バーのマスターなかくおじもいます

    #遼嘉
    khiau

    羅紗のニュンペー知り合いがやっているバーがある。駅から比較的近いのにわかり辛い場所にあるため、いつ行っても混んでいないところが良い。階段を数段降りたところにある扉は大きく重厚な印象で、けれども前に立てば横に自動でスライドするものだからそのギャップが面白かった。
    本来であれば夕方から深夜までが営業時間なのだが知り合いということもあり行くのが確定した日には早めに開けてもらえることになっていた。仕事柄、自由に飲酒が出来ないからそういった融通が利くのは有難い。申し訳ない気持ちも多少ある。そのため張遼はそのバーに行けばなるべく高い酒を飲むと決めていた。微々たるものだが知人のためになるのはそれくらいだ。
    夕暮れ、遠くで居酒屋のキャッチが活発になるのを聞きながら目当ての扉へ向かう。ゆっくりと静かに動く様子を見送って中へ一歩入り、さらにある扉を開けば暗くて落ち着いた店内が目の前に広がる、はずであった。
    「あっ」
    洒落た照明は穏やかにカウンターを照らしている。普段ならその向こう側にマスターが、つまり知り合いがそこにいるのだが偶々今日はその姿が見えなかった。
    代わりにカウンター席側に座らず立ったままテーブルへ寄りかかっている人物がいた。黒いスラックスとベスト、ブルーのラインが入った七分袖のワイシャツに飾りが特徴的なネクタイ。最も印象的なのはその髪色で、染めているのか天然なのか随分と綺麗な金色をしていた。まるでウイスキーやブランデーの一種のようだ。人に抱く印象としてその表現はどうかとも思うが場所が場所なだけに自然とそう感じてしまった。
    声を出したのはその人物の方で、まさか人が来るとは思ってもみなかったという顔をしている。かと思いきやすぐに柔らかく微笑んで「こんばんは」と挨拶をされた。倣って張遼も返せば彼はカウンターへ振り返ってから一旦息を大きく吸い込む。
    「賈詡っ!お客様だよ!」
    大声で知り合いの名を呼んだ彼は張遼へ向き直ると「お好きな席にどうぞ」と愛想良く笑ってからその場を離れていった。
    呆気に取られ返事もまともに出来ない。どうしたものか。彼は一体誰なのかそして何処に行くのかと尋ねるよりも先に奥からマスターが現れた。
    「うるさっ!こんな狭い店であんな大声……ああこれはこれは、張遼殿!思ったよりお早いお出でで」
    「賈詡殿。準備中でしたか」
    「いんや?ま、座りなよ。何にする?おまかせ?」
    促されるまま慣れた席へ座る。鞄とコートを隣へ置いて頷き飲み物が出てくるのを待った。
    向かいでそんなに音が立たないのに対し、背後からは物音が聞こえてきた。他に客は一切いない。気になった張遼が振り向けば店の奥、照明のあまり当たらない場所に先ほどの彼が立っていた。何かを手に持ち体勢を低く構え、次の瞬間にはまた音が店中に響く。
    「あれは……ビリヤード台ですか」
    ぽつりとひとり言のように尋ねれば賈詡がうん、と返事をくれる。
    「あのような大きなもの、ここにあったのですな。何度も来ているのに知りませんでした」
    「つい最近、あの人が持ち込んできたんだよ」
    答える賈詡の口調はうんざりしていた。気配を感じて姿勢を戻せばコースターの上にグラスがあり、丁度そこへ酒が注がれていくタイミングだった。海外のビールだというその瓶をグラスの隣へ置かれる。
    「御覧の通りうちは狭いからね。あんな台、邪魔でしかない」
    「許可されたのではないのですか」
    「言っても聞かないんだよあの人はさ……あ、張遼殿は初めてか。念のため言っておくけど関わらない方がいいよ、人生めちゃくちゃにされるから」
    「……それは、」
    「どういう意味かな?」
    まさに言おうとした瞬間、別の声がやってきた。いつの間にか戻ってきたらしく笑顔で賈詡へ顔を近づけている。対して賈詡は思い切り口をへの字に曲げて適当にあしらってこちらへ背を向けた。
    彼の相手を任された、ということなのだろうか。ちらりと横の様子を窺えばしっかりと目が合う。逸らす訳にも行かず曖昧に会釈をすると空いている方の隣へと彼がしなやかに座った。
    「貴方が張遼殿だね。私は……ああ、そう、こういう者だよ」
    言葉を挟む隙がない。色々尋ねたいことがあるのにすっかり彼のペースに乗せられているようだ。助け船がある訳もなく再びどうしたものかと考えた矢先に一冊の本を差し出される。
    「雑誌、ですか」
    受け取って表紙をめくり1枚、2枚とページをめくっていけば巻頭特集に大きく隣の彼が載っていた。ビリヤードの世界では相当の有名人らしくインタビュー記事が何ページにも渡って続き写真もアイドルよろしく沢山掲載されている。ローアングルが多いのは競技の性質的なものなのか、それとも別の意味があるのか。とにかくルックスの良さが全面に出されているが流し読みした文章もなかなか興味深い。
    つい黙読してしまったが我に返って張遼は顔を上げた。
    「郭嘉殿、とおっしゃるのですな」
    「うん。よろしくね。あ、よければその雑誌はあげるよ。バックナンバーだしこんな場所に置きっぱなしにしておいても意味ないからね」
    「あっははぁ、どういう意味かな郭嘉殿」
    片付けを済ませた賈詡が郭嘉へ嫌味を飛ばす。しかしそれで怯むような男ではないようで郭嘉の視線は張遼から外れなかった。
    「それでは、有難く頂戴致します。自宅でゆっくり拝読します故」
    「ふふ、噂通り真面目なんだね張遼殿。警察の人なんでしょう?」
    噂、とは。返答に困って賈詡を見ても肩をすくめられてしまった。
    「曹操殿とは昔から……知り合いで、ね」
    「はぁ」
    貰った雑誌を鞄に仕舞いながら上司の名前が出た驚きを隠して相槌を返す。とても危険人物には見えないし賈詡が言うほど警戒をする必要もなさそうではあるが何でも知っているような瞳は妙に張遼の心から冷静さを奪うのだった。陳腐な言葉だが妖しい魅力がある。ビリヤードのプロプレイヤーであることは間違いないはずだがどちらかと言えば夜の仕事の方がイメージに合った。年齢も、張遼と大差ないのかもしれないが艶があるようで、でも本当は予想よりもっと若いのかもしれない。
    礼に欠けたことは聞けないが気になる部分が多く、張遼は上手く言葉に出来なかった。
    「ねぇ賈詡、私も何か飲みたいのだけれど。甘いのがいいかな」
    「はいはい……いちごミルクでいいかな」
    「嫌。せめてリキュールにして」
    「駄目、あんたに酒は絶対駄目だからね」
    郭嘉は頬杖をついて口を尖らせた。子供っぽい仕草に思わずぽろりと張遼の口から純粋な疑問が零れてしまった。
    「まさか……未成年なのですか?」
    言った途端、店内は水を打ったように静まる。それから一拍置いて隣から笑い声があふれ出す。肩を震わせ先程賈詡を呼んだくらいの大きな声が店中に響き渡った。
    「わ、私、たぶん、貴方と、そんなっ変わらないはず、だよ!」
    「そ、そうでしたか。それは……とんだ失礼を」
    「い、いや!ふ、ふふっ、う、嬉しい、かな」
    治まらない笑いに張遼は詫びるしかなかった。郭嘉はまだ震えながらも張遼の肩へ手を伸ばし幾度か軽く叩く。
    「貴方って……うん、張遼殿って、楽しい人なんだね」
    「そうでしょうか。同僚からはつまらないと、よく言われるのですが」
    「あ、ははっ!それはそれで分かる、かも」
    笑って郭嘉が体を揺らす度に金色の髪がきらきらと光る。いい具合に照明が彼を照らしていてそれこそ見ていて楽しかった。
    落ち着くと今度は連絡先を交換したい、と強請られる。抵抗はなかったから二つ返事で了承しスマートフォンを取り出せば生暖かい視線がカウンターから飛んで来た。
    「……あーあ、運の尽きだよ、張遼殿」
    「どういう意味ですかな」
    「別に?ま、俺は知りませんからね」
    ふと張遼は賈詡の言葉を思い出した。人生めちゃくちゃにされる、確かそう言っていた。
    「はぁ、張遼殿、今度良ければ食事なんてどうかな。ふたりだけで、ね?」
    ぞくりとした。笑い過ぎて郭嘉の目には涙が溜まっている。それがひどく張遼の心臓を揺らして、何となく賈詡の話の意味が分かった気がした。
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