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    rikaryouka

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    rikaryouka

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    先日の大雪の際の出来事を花怜ちゃんに、出会ったことにしました。転んでも、ただじゃ起きないんだから!!
    本当に親切な人たちが、神様かと思ったので、神様鬼王様にしちゃいましたw

    ギリギリ2月ノルマクリア!

    #天官賜福
    Heaven Official’s Blessing
    #tgcf
    #TGCF

    白い神様その日は何もかもが最悪だった。
    雨予報の天気は突然大雪になった。仕事では客先の都合で残業。そんなこんなで、仕事場を出たら一目は雪景色。大都市の交通網はシャットダウンし、人も歩いていない。耳がツーンとするほどの静寂が襲ってくる。
    季節柄薄着ではないが、雪対策などしていない。悴む手でスマホを操作して、電車の運行状況を調べると、どこも全線運休やら大遅延。
    あぁ、と思わず天を仰ぐ。

    神様、どうか私を助けて下さい!

    しかし、いつまでも上を向いていても仕方ない。足を止めていても家に着くわけではないのだ。私はベソをかきながらも、コードレスイヤホンで音楽を掛けながら駅に向かった。
    先程までが嘘のように駅には人がごった返している。
    いつもは空いている電車も今日ばかりは乗車率が200%はありそうなほど、ぎゅうぎゅうだ。グェっと変な声を出しながら、その頭がおかしくなるほど混雑した電車に身を捩じ込む。
    揺られること30分、蒸し風呂地獄のような場所から解放されたら、今度は雪山地獄だった。
    家路に着くためバスを待つ人が列を成している。
    私も例外なくその列の最後尾に回り、大人しく順番を待っていた。
    尻ポケットにしまったスマホからは、大好きなラジオドラマが掛かっている。
    このラジオドラマの題材は、最近流行りの神様の物語だ。仙楽太子と呼ばれる武神の栄光と挫折と救済の物語で、謎の作家が書き上げたというマイナーだけど、知る人ぞ知るドラマなのだ。
    私は何の気無しにこのラジオドラマを聴いてからというもの、すっかりハマってしまい、今では仙楽太子殿下を信仰している。太子殿下は誰よりも心優しく、強く、美しい。三界一の美しさだ。
    そして、私の心をとらえて離さないのが、この太子殿下、何と妻がいるのだ。その妻は鬼の王、花城。何と恋愛要素まであるドラマティックなストーリーに、のめり込まずにはいられない。
    ニヤニヤとする顔をマフラーに隠して、悴むつま先を動かす。
    もう30分はこの吹雪の中を待っているのだが・・・一向にバスは来ない。
    周りの何人かは諦めて歩き出したり、電話口で怒鳴り散らしたりしている。
    怒っても仕方ないのにと、呆れながら降った雪で重くなった傘を斜めにする。ズルッと音がして雪は足元に落ちた。その雪で靴が濡れ、思わず顔を顰めた。
    するとしばらくして、遠くからバスらしき灯りが見えた。周囲が一気に色めき立つ。
    バスはチェーンの音をさせつつ、私たちの列より少しズレた場所に留まり、扉が開く。その瞬間、人が後ろから追い越すようにバスに乗り込み始めた。
    先程までの整列は何だったのか。押し合いへし合いバスに乗り、あっという間に定員オーバーだ。バスに乗れなかった人たちは口々にバスの中の乗客たちを罵倒する。
    私はあまりの出来事に驚いて、口を開けたまま無情にも発車したバスを見送った。
    異変はそこからだった。
    次のバスまでまた30分は待たなければならないだろうと、一度止めていたラジオドラマを再度流そうとした時、尻ポケットに入れていたはずのスマホが無いことに気づいた。
    「え、、、えぇ??」
    ポケットやカバンをすぐに探すが見つからない。まさか、落とした??
    落としたとしたら、先ほどのバスの乗り込みの時だ。
    足元を見るがスマホは落ちていない。
    降り積もる雪のように真っ白になる私の脳内と顔面。スマホが無ければ家族と連絡を取ることもできないし、定期もスマホだ。
    慌てて周囲にスマホが落ちていないか聞くが、首を横に振るばかり。

    う、うそだ。神様ー!!

    頭を抱えながら、バス乗り場の周辺を靴で雪かきしながらスマホを探し続ける。
    しかし、さらに追い討ちを掛けるようにバス会社の人がやってきて、この後のバスは運休だと告げた。口々に文句を言いながら、人々はそれぞれの家路に消えていく。
    残ったのは私と雪景色だけだった。
    呆然としながらも、スマホを探さねばならないとまた捜索を開始するが、雪は止むどころかどんどん積もってゆく。
    雪の中、私はここ最近の自分の行いについて反省していた。
    ラジオドラマを聴き始めてからと言うもの、神様と鬼の王のムフフなことばかり考えていたのだ。神様はラジオドラマの中では男性で、そして、鬼の王も男性。男同士の夫夫・・・妄想を繰り広げるには素晴らし過ぎる題材だ。だからつい魔が刺して、神と鬼王のイチャイチャを垂れ流した妄想を一筆したためてしまったのだ。
    これには神様も鬼の王様もお怒りなのだろう。お仕置きされているとしか思えない。

    諦めようかな・・・
    そう思ったとき、
    「お嬢さん、大丈夫ですか?」
    優しい声がして、後ろを振り返る。
    白いウインドブレーカーを着た青年が膝を折って私に声を掛けてくれた。
    「あ・・・あの、スマホが無くなって・・・」
    「スマホ?いつなくしたの?」
    「わか、らなくて、でも、この辺まで、音楽聴いてて、だから、この辺に、おちてると思って」
    「わかった。私も探すのを手伝うよ」
    「そんな、」
    彼は大丈夫と私の肩を叩くと、後ろにいる赤い傘をさしている人に声を掛けた。
    「三郎、このお嬢さんスマホを落として困ってる。探してあげよう」
    「・・・兄さんがそう言うなら」
    お兄さん?兄弟なのかな?
    弟さん?が近くまで歩いてくると、驚いた。とても背が高い。
    圧倒されながら、頭を下げた。
    「すみません」
    「スマホ、掛けてみるから、番号教えて」
    「え、あ、番号ですね。でも、私、マナーモードにしてて、音が鳴らないんです」
    「振動は?」
    「しません」
    申し訳なくなって声が小さくなる。
    下を向いた私に、お兄さんの方が話しかける。
    「他は?何か手掛かりになりそうなものはないかい?」
    「手掛かり・・・」
    少し考えて、あっ!と声を上げた。
    「手掛かりかは分からないんですけど、イヤホン!Bluetoothなので、音が聞こえるか試してみます」
    寒さで真っ赤になった手に一回息を吐き掛けてから、イヤホンを取り出して、再生を押す。
    すると、イヤホンからあのラジオドラマの音声が流れた。
    「音、します!!!」
    イヤホンを弟さんに渡すと、彼は耳に当て音を拾っているようだ。しかし、流れているドラマを聴いてか眉を跳ね上げる。
    しまった。ラジオドラマ・・・ちょっとだけ・・・そのBLチックなのよね・・・
    「あ、あの・・・」
    「音は入ってるしノイズが少ない。このあたりに親機はあるだろう。向こうからあっちまで歩いて、音が途切れる場所を探せば、位置は絞り込める」
    「は、い」
    私は慌てて、彼の指示通りに一定の距離を歩き往復した。
    その間、弟さんはお兄さんに何かを耳打ちすると、お兄さんはスゴいスピードで私に視線を向ける。
    BL好きの変な女だからこれ以上関わるのはやめようとか言われてるのかな?それは仕方ない。むしろ、私が迷惑を掛けているのだから。
    何回か往復して、音の中心地が分かったが結構広さがある。
    「そういえば、無くした状況を聞いてなかったな」
    「え、えと、バスが来たんですけど、人がわーって団子になってしまって、その時から無くなってしまって」
    ダメだ。うまく説明できない!
    パニックになったままで脳内が整理できず、順序立てて物事を伝えられていないにも関わらず、彼らは成程といったように目線を合わせた。
    「そうか、君はどこに立っていたの?」
    お兄さんの質問に私は少し立ち位置を移動する。
    「この辺・・・かな?」
    「その後は?」
    「こうバスに乗ろうと・・・」
    「わかった、ありがとう」
    お兄さんは雪でドロドロになってしまっている靴を使って、また雪を掻き分ける。
    弟さんもとても素敵な靴を履いているが、その靴を惜しげもなく雪かきに使っている。
    私の靴もカバンも雪だらけだ。寒いを通り越して、痛いけど、この二人が助けてくれてるから、諦めたくない。
    ありがとう。
    私もまた、二人の近くの雪を掻き分けて捜索を続けた。
    かいた汗が雪に飛び散る。

    「あった!!」
    お兄さんの声に振り返ると、お兄さんが雪の中を指差している。
    「あったよ!!」
    私は走ってスマホを拾い上げた。
    電源ボタンを押すと普段通りの壁紙が表示される。
    「よ、よがっだ・・・」
    ボロボロと涙が勝手に溢れてきて、冷たい頬を流れていく。涙ってあったかいんだ。
    「よかったね!」
    「ぼ、んど、あり、がど、ございまじだ!!」
    「そんなに泣かないで」
    ヨシヨシと私の背中を撫でてくれるお兄さんと、それを何だか冷めた目で見てる弟さんにもう一度深く頭を下げた。
    涙を拭いて鼻を啜ると、二人をマジマジと見る。
    うわっ、こんなことって・・・

    雪の中を助けてくれた救世主はとんでもないイケメンだったのだ。
    スマホを探している間は全然意識してなかったけど、落ち着いてみたらこんな美形兄弟?に助けられるとか、何の冗談だろう。
    なんかお兄さんは優しそうで神様みたいだし、弟さんは黒髪に黒い瞳で真紅のコートを羽織っている魔王みたいだ。
    そのとき、なぜかあのラジオドラマの二人が脳内をよぎった。
    「じゃあ、私たちはこれで」
    呆然としていた私は、お兄さんの言葉に我にかえった。
    「待ってください!何かお礼を!」
    雪の中、店もやってはいないが、何かお礼をしないとと、カバンを出す。
    もたもたとしていると、弟さんの方が口を開いた。
    「要らない。むしろ、早く帰れ」
    「三郎」
    「だって、」
    そうだ、私がここでこれ以上引き止めたら二人は帰ることができない。
    「あ、の、お礼はいつか必ず!」
    「うん、いつか」
    お兄さんは柔らかく微笑むと、弟さんを連れて歩き出す。
    まだ滲む視界を、ぐっと手で拭うと私は二人の後ろ姿を焼き付けるように見つめていた。
    すると、弟さんが大股で戻ってくる。
    驚く私に、彼はこう言い残した。
    「俺の分の礼は貰っている。あの話は良かった。今日はその分だ」
    「・・・あ、のはなし?」
    「あぁ、太子殿下と鬼王の・・・」
    「え?ああああ!!」
    狼狽えた様子に、ニィと口角を上げると、次の瞬間には二人の姿はどこにも無かった。

    と、雪の中長時間バスを待ち、雪の中無くしたスマホを探し出し、そのまま雪の中を歩いて帰り、見事に風邪を引き熱を出した。
    この話は高熱に魘された戯言だと言われたが、私は覚えている。
    信徒の窮地を救う神様が、たまに助けてくれることを・・・

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