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    穂山野

    @hoyamano015

    読んでくれてありがとう。
    幻覚を文字で書くタイプのオタク。とうの昔に成人済。

    スタンプ押してくださる方もありがとう。嬉しいです。

    置いてある作品のCP等
    金荒 / マッキャリ/ 新中/リョ三

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    穂山野

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    2015.11.10 金荒ワンドロ「毛布」

    #金荒
    goldenDesert
    #BL

    毛布荒北が今、包まっている毛布はもう随分長いこと使っているような風合いだった。
    うちにも、荒北の家にも静岡に越してきた時に買った新しい毛布があるのだが。

    春先は一緒に過ごしても泊まっていくことは滅多になかった。
    梅雨の時期が始まった頃にぽつりぽつり帰らない日ができて、客用の布団で寝るようになったけれど、もうその頃には毎日が湿気の粒で覆われたみたいな天気が続いた。
    その頃にはうちにある一部のものは荒北のものになっていたし、それが当たり前になっていた。
    荒北がここにいることも。それが当たり前のように。

    夏の暑さを越えて秋の爽涼を感じる頃になると荒北が自宅から一枚の毛布を持ってきた。
    その毛布のタグには『荒北』と小さく書いてあって、ところどころ毛羽立っていた。
    なぜ、それでなければならないのかと聞くことを少し躊躇った。
    でもそこに意味を持たせてしまったら自分が負けるようなそんな気がしたのだった。自分でもくだらないと思う。
    でもそこにある毛布が箱根学園の空気も、寮の中の生活や、思うようにならなかったこと。自分の中の不必要に尖ったものを削り、必要なものを研ぎ続けていた荒北の原点を、仲間とのやり取りもともに部屋で過ごす夜を包んでいたのかと思えば意味がない訳がない。
    自分の知らないことを知っているものがなにもかもなんだか腹立たしく思えた。
    それが嫉妬だ。
    持て余したり、のしかかられて潰れそうになったり本当に厄介でどうしようもない。

    ある日、夕飯が終わると荒北が書類入るくらいの箱を鞄から取り出した。
    ちょいちょいと手招きしてそれをすっかり片付け終わったテーブルの上で開く。
    そこには何枚かの写真、反省文、福富が書いたと思われる練習メニューのメモ。
    レースで勝ったときのゼッケンなんかが詰め込まれていた。
    写真は部で撮ったもの。笑ってる顔なんか一枚もない。少し古い家族のもの。アキちゃん。福富、東堂、新開と一緒に撮ったものは笑っているものもあった。
    反省文はさァ、卒業ンとき担任がまとめて持ってきて「このときのことを忘れるなよ」って真面目な顔で言うから捨てれなかったと写真の中にはない、照れたような穏やかな顔で笑う。
    これはいつで、なんのとき。
    そんな話を聞きながら一緒に笑ったり怒ったりしてふと気づく。
    なんで急にこんなものを見せたのかって。
    それを口にしたら荒北が呆れた顔をして
    「オメーが昨日寝ぼけて俺の毛布取ってさァ、これ嫌いなんだ!とかなんかぶつぶつ言ってたんじゃねえか」
    なんかしばらくぶつぶつ言ってた。昔のことはどうのとか。そう言ってニヤッと笑った。
    「お前アレね、カワイイトコあんだネ」
    勝ち誇ったように荒北が言う。
    自分の口から乾いた笑いが勝手に吐き出されて、これをどうやってやり過ごしたらいいのかと情けない気持ちになった。
    慌てる自分を見ていた荒北が、俺の頭に手を置いて
    「次はお前の話、聞かせろよ」って言った。
    その顔はどこかで見たことがあった。
    知りたい。
    どれだけ些細なことでも知りたい。なにを見てきた、どんなことを感じてたって思ってた自分の顔だ。
    「俺の話はあまり面白いものはないが」
    そういうと
    「お前のする昔話なんでも面白いヨ」って荒北が笑う。
    静岡に来るとき、殆どのものを置いてきた。
    なにも持ってない。寝心地がいいという古い毛布もない。
    「まずは巻島の話から聞かせろヨ」
    そう言った荒北がコーヒーのおかわりを作って、俺は巻島の緑色の髪をゆっくりと思い出す。
    そうやって二人で思い出を噛み砕いて一緒に飲み込む。
    あの毛布をもう、夜中に寝ぼけて引っ張ることもない。
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    🙏🙏🙏
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    穂山野

    DONE【リョ三】Sign

    インターハイが終わり、新学期が始まったころの幻覚です。
    二人がゆっくり距離を詰めていったらいいな、という幻覚をずっと見ていたので。
    二人で幸せを作っていってくれ…
    相変わらず拙い文章ですが、似たような性癖の方に届いたら嬉しいなあと思います…
    Signもう殆ど人がいなくなったロッカールームの小さな机で部誌を書いているとどこからか「宮城ィ」ともうすっかり聞き慣れてしまったデカい声がする。
    「なんすか?!」とこちらもデカい声で応じると「おー、今日一緒帰らね?」と毎回こっちがびっくりするくらいの素直な誘い方をするのが三井寿だ。
    最初はその理由がよくわからなかった。自分が部長になったことでなにか言いたいことがあるとかそういうやつ?と若干の警戒心を持って精神的に距離を取りながら帰った。でも三井にはそんなものまったくなく、ただ部活終わりの帰り道をどうでもいいような話をしたり、それこそバスケットの話なんかをしたいだけだった。
    最初は本当にポツポツとした会話量だった。家に着いてドアを閉め「あの人なにが面白えんだ?」っていうくらいの。そのうち誘わなくなるだろう、と思っていた。しかし三井はまったく気にしていないようで当たり前のように隣を歩いた。
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    穂山野

    REHABILI【リョ三】『ふたりにしかわからない』
    リョ三になる手前くらいのリョ+三。うっかり観に行ったザファで様子がおかしくなり2週間で4回観た結果すごく久しぶりに書きました。薄目で読んでください。誤字脱字あったらすいません。久しぶりに書いていてとても楽しかった。リョ三すごくいいCPだと思っています。大好き。
    木暮先輩誤字本当にごめんなさい。5.29修正しました
    ふたりにしかわからない9月半ばだというのに今日もまだ夏が居座っていて暑い。
    あの夏の日々と同じ匂いの空気が体育館に充ちている。その熱い空気を吸い込むとまだ少し胸苦しかった。いろいろなことがゆっくり変わっていく。
    自分は変わらずここにいるのに季節だけが勝手に進んでいくような変な焦りもある。でもその胸苦しさが今はただ嫌なものではなかった。

    木暮が久しぶりに部に顔を出した。
    後輩たちが先輩、先輩と声をかける。あの宮城ですら木暮に気付くと「あっ」って顔をして5分間の休憩になった。
    部の屋台骨だった人間が誰か皆知っている。誰よりも穏やかで優しくて厳しい木暮は人の話をよく聞いて真摯に答えてくれるヤツだ。
    後輩たちの挨拶がひと段落したあと宮城も木暮に話を聞いている。
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