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    穂山野

    @hoyamano015

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    金荒 / マッキャリ/ 新中/リョ三

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    穂山野

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    金荒ワンライ 2016.10.17「星空」

    #金荒
    goldenDesert
    #BL

    星空初めて買った車は中古で、昔、憧れていた人が乗っていた車に似ていた。
    それを選んだとき俺の中にあったのはほんの僅かな感傷だったが、荒北は違った。内装、エンジンの状態、塗装なんかをよく確認し、走行距離を見ながら店員としばらく話していた。その店員は最後の最後まで買うのは荒北だと思っていたくらい熱心だった。
    あとでなぜそこまで熱心にと聞いたその答えは「え、ただ好きだから」というそれだけの理由だった。今思えば俺は、静岡の小さな中古車店に感傷とかそういうものは置いてきてしまったのだ。
    「あれでいいんじゃナイ」と車を指差した荒北は、それから何年もその車で一緒にあちらこちらを走った。
    「眠くなったら車で寝ればいい」と言った荒北とはなにもない田舎のパーキングエリアの端で並んで寝転がった。お世辞にも広くないから、もうちょっと詰めろとかそっちが肘を引けとか最初は揉めた。
    いつの間にかどちらが右でどちらが左なのかとか、あいつは寝るときこっちのクッションがいいんだろうとか、わかるようになって、横になればすぐ眠ってしまった荒北も昔の話をポツポツとしてみたり、レースのことを振り返っては「あのカーブイカれてた」などと言って二人で笑った。
    小さいけれどサンルーフからは星空が見えた。
    それは田舎に向かえば向かうほど綺麗に見えたものだった。
    両手にはまだ大したものを抱えていない俺たちは自由で。けれどそれが永遠に続くものではないことを知っていた。
    でもそのときだけはただ二人でぽかんと口を開けて空を見ていた。
    会話が途切れ、虫の声だけになった。
    荒北が「オレ、静岡きて、お前と会ってよかった気がする」と脈絡もなく呟いた。
    その横顔を見ても、相変わらず星空を見上げたままでなにかを思い詰めたような言葉ではなかった。
    それが嬉しくもあり、なぜか惜しくもあった。
    「俺もそう思ってる」
    そう答えると荒北は少し照れたようにハハッと笑った。
    サンルーフから目を逸しこちらを覗き込むようにして暫くあーとかうーとか言っていた荒北が
    「そういう意味じゃないって言ったらお前どうすんの」
    車の中には二人だけで、虫の声しかしないからお互いの呼吸とか心臓の音が聞こえてしまうような気がした。
    星はただ煌々と瞬いていてそれじゃなくても薄暗い月明かりを遮る雲がときどき、お互いの表情を隠してしまう。
    喉が鳴ったのはどっちだった。どっちの心臓の音だかもうわからない。
    いつも心臓の音が聞こえるくらい近くにいたのに今更。
    どうすんのって聞かれたら俺は。
    今、俺を覗き込む目にいつも自分だけが映ればいいと思っていたと。
    星ばかり見ていたその目の中に映るのが俺だけだったらいいともう長く思っていたことをどこから話せばいいんだろう。
    自分の唇が震えていることに気付いた。
    荒北の目は俺を映してる。
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