ムズムズ=私は、水心子正秀。
刀剣は基本男士で顕現するが。
私は、女士として顕現した。
顕現した時に、今までに女士で顕現した刀剣がいるか。を調べたらいた。
数振しか顕現していない。
そこで、女士が希少な刀剣だと知る。
どうしようどうしよう‥戸惑い考えに考えた結果。
『男士』として振る舞う事にした。
親友は男士、私が女士。
その違いで、迷惑かけたくないんだ。
ムズムズ=
「水心子ちゃん」
「何、主?」主の執務室で2人の時は、フランクに話をしている。
主は女性で、同じ女性である水心子の事を気にかける。
「他の子達に、女士って言ったら?」
「主が理解しているから、必要ないと思うけど」
友達みたいな会話ができ、仲良しで水心子は気楽に接する事が出来る。
近侍の時、現世でお伴する時は女子を楽しみ。
主に、ちゃん付けで呼ぶのをOKしているから。
「いつかバレるよ〜」
「その時はその時だよ」心がイケメンっ‥!と主は男前な彼女に感嘆する。
「水心子ちゃんの相談って何?」
ごくりと喉を鳴らし、話を切り出す。
「清麿といると‥ムズムズするんだ」
「ムズムズ?」
うん。と、戸惑い気味に話を始める。
一緒にいると、落ち着かなくなる。
何も考えてない時に、清麿の顔が出てくる。
自然と姿を目で、追っている。
ずっと隣にいたい。
顔を見ると、胸が締め付けられて、苦しくなる。
他の仲間といる時が、1番苦しくなる。
原因が分からなくて、困っていることを。
首を縦に振りながら、水心子の話を聞く。
(清麿君といると、か)
(水心子ちゃん無自覚可愛すぎるっ!)
「私、分かったよ」
にっこり笑い、自信満々に水心子に話をする。
「本当にっ」
主の答えに、期待と心がドキドキしている。
「清麿君が、大好きなんだね」
「好きだけど‥?」主の言ってる意味が理解できなくて、疑問符が頭の中でぐるぐる回る。
混乱し始める、水心子を見てやっぱりと感じた。
好き。でも違う意味を、知らないのだ。
親友としての好き。と異性としての好き。
主は補足する。
「水心子ちゃんは、清麿君を異性として好き。って
事だよ」
好き、好きって‥好きって‼
少しずつ意味を理解して、顔が赤くなって行く。
ふと思った、彼の気持はどうなのか?
男士と振舞っている、私の気持を知ったら?
考えたら、すうっと顔の熱が引いた。
「主ごめんね」
謝る水心子に、どうしたの?と問いかける。
「清麿は、私にそんな気持持ってないよ」
「水心子ちゃん」
「清麿は、私を男士だと思ってる」
知ったら、親友で無くなるかもしれない。
ギクシャクしたくない。お互いにどう接すればいいかも。
主が気づかせた恋は、一瞬で散った。
「諦めるの、早いと思うな〜」
何で?と水心子は、首を傾げる。
主は執務室の天井を見上げ、座っている回転椅子をぐるぐる回す。
水心子ちゃんには言えないけど。
清麿君から相談受けて、女士なのを最初から知っているんだもーん!
2人とも両片想いだし。
主は数日前の、出来事を思いだす。
数日前。
遠征終わった後、戦装束を着たまま。
清麿が主に相談しに、主の執務室にいる。
「主、いいかい?」
何〜?と煎茶飲みながら、気が抜けた返事をする。
「水心子、女士を隠す理由あるかな?」
ぶっ!と飲んでいる、煎茶を吹き出す。
激しく咽ながら、知っていたの‥?と問う。
「うん、顕現した時から」清麿は、にっこり笑う。
「はじめから?」
「他の仲間も、知ってるよ」
水心子ちゃん、バレバレだったんだ‥。
隠す理由無くなった、言うしかないよね。
ごめん、水心子ちゃん。
と心の中で、謝る。
「水心子ちゃん、自分以外が男士でしょ」
「そうだね」
「仲間に気使わせたくない、迷惑かけたくない」
って言ってたの。と告げる。
女士は希少な刀剣、これを気にしている事も付け足す。
「水心子らしい」気にする事ないのに〜。とクスクス笑う。
「あとね」
「?どうしたの」
「人の好意に鈍すぎだよね」今度は困り顔だ。
主は、ぽかんとする。もしかして。
「水心子ちゃん、好き‥?」
言われた瞬間、清麿は少し顔が赤くなり。
慌てて帽子を取り、顔を隠す。
少し俯き、うん。と首を縦に振る。
「恋っていいねぇ」と主は、にんまりと笑った顔で清麿に言った。
「茶化さないで」と帽子で顔隠したまま言う。
両片想いで、水心子は清麿の気持に気づかない。
あぁ、この恋はどーなるの。と主は心の中で叫んだ。
水心子の自室。1人、呻きながら悩んでいる。
「清麿‥」
畳の上で、ゴロゴロしながら天井を見る。
私は『親友』以上の関係望んでいたなんて。
知られたら‥毎日どう顔合わせたらいいの。
今まで、親友として接して。気持を知られたら。
恥ずかしすぎて。
「〜‥!折れたいっ!」と言った瞬間。
「折れたいって?」清麿が甲高い音を立て、障子を開け部屋に入って来た。
びっくりした水心子は、飛び起きる。
「いやいやいや、違くて‥」
変な事を聞かれてしまい、目がすごく泳ぐ。
「違うの?」僕の名前言ってたの、聞こえてたんだよね。とは清麿は言わない。
ひねりだした答えは‥。
「主が好きな恋愛ドラマ見てっ、思わず‥」
「思わず?」
「キュンとした。の言い間違い!」
苦しい嘘をついてしまった事に、心の中で清麿に必死に謝る。
「折れたいっ!って言うから‥」びっくりしたよ。と乾いた笑いが出る。
「紛らわしくてごめん」
いいよ。と清麿は言い、水心子を試す事を言う。
「主しか相談できない事あるの」
「僕を頼ってよ」
少し強い口調で言ってしまい、しまった。と思ったが遅い。
「‥‥‥」長い沈黙が空気を一気に重くする。
目が点になりつつ水心子は、ただごめん。としか言えなかった。
無言で清麿は、水心子の自室を出て行く。
それ以降、出陣は内番でも顔合わせる様な事がなく、すれ違いになっていった。
気を使いすぎて顔が曇っている事を、お互い知らない。
「現世に行ってほしい?」
「そうなのっ、水心子ちゃんしか頼める子いなくて」
私に。響きに感動し、分かったよ!と目をキラキラさせながら答えた。
「1人で現世初めて‥」
今まで、私と行ってたしね〜。と主も言う。
「清麿君に、プレゼント選ぶ?」
言葉に反応し、少し悩む。
(どんなの喜んでくれるかな‥)
「手入に必要な物‥」
(本体の方かいっー!)心の中で盛大なツッコミを入れた主。
気をとり直して、他は?と聞いてみる。
「部屋に飾る花‥とか」
いいね。と主は相槌を打つ。
「他に買ってきてほしいのは‥」水心子に買ってきて欲しい物を書いた、メモを渡す。
書いてある物は、現世に行かないとない物ばかり。
「私も後で現世行くから、先によろしくね」
待ち合わせはここで〜。と水心子に伝える。
「うん、先に行くね」
水心子は転送装置がある部屋に向かい、一足先に現世へ旅立つ。
現世。
ガヤガヤと催し物が開催されてないのに、人間が多すぎる。
いつも酔いそうになり、薬を持って行く程である。
現代遠征はいつも主と一緒だが、今回は1人。
緊張から、気分が悪くなりそうになる。
(ドキドキする‥)
だが、私がしっかりしないと!と言う思いもある。
主はあとで行くから。と言ってくれ、待ち合わせ場所の公園に移動する。
某所の人気ない公園。
ベンチで休憩を取り、主を待つ。
ピロン♪と水心子のスマホから、通知音が鳴る。
「主だ」
LINEを開き、主からのメッセージを読む。
ごめんね(-_-;)急な予定で行けなくなっちゃった‥。
水心子は目を見張る。
(えっ嘘!僕1人なの??)
急な予定は仕方ないのは分かるが、不安だ。
その次に、主から送られたメッセージは。
代わりに、清麿君が向かってるから(。•̀ᴗ-)✧
見た瞬間、ひゅっと息を飲み凍りつく。
「清麿??」
1人でいい、1人でいい女士だってバレる
受け入れたくない現実が近づいている。
水心子が着ている服は、ギンガムチェックの丈が短いワンピース。
肌を出すのが恥ずかしいので、パーカーを羽織り、薄手だが黒ストッキングはく徹底ぶり。
「移動しよう」
清麿を‥!ベンチから立ち上がった瞬間。
「撒ければ。と思ってない?」
親友が、目の前にいた。
「とりあえず、座ろう?」
詰んだ。
水心子は、現実を受け入れるしかなかった。
2人で公園のベンチに座り、どれくらい時間が経っただろう。
互いに気まずく、何も話す事が出来ない。
油汗が吹き出し、困っていた。
先に話かけたのは、清麿だった。
「実は‥」
(何)と心臓が飛び出そうになる水心子。
「水心子が女士なの、最初から知ってた」
「あぁ‥」自分でカミングアウトする必要がなくなった。
「皆も知ってる」
聞いて、更に衝撃を受けてしまう。
「そうだったんだ‥」全員知っていて、隠す必要なかったとは魂が抜けそうになる。
(水心子‥目が)伝えたはいいが、衝撃が大きすぎた様だ。
「水心子、主から頼まれた物買わないと」
即座に反応し、そっそうだな。と返す。
「メモに書いてある物、頼まれたんだ」
早くしないと!と立ち上がり、買い物に繰り出す水心子。
清麿も後に続く。
『好きって言えるかな』簡単なのに、2人には勇気が要る言葉だった。
清麿の持っている、スマホに通知が入る。
主からのLINEで、終わったらデートしておいで。と入る。
ドキッとしたが、平静を装う。
(チャンスかもしれない)
そんな思いを持ちながら、出かけた。
空が朱色も水色のグラデーションに染まる。
空気が冷えて、軽く寒い。
買物が終了したが、物が多くて帰るに一苦労だ。
「多かったね〜」と笑う清麿。
「私もこんなになるとは」と苦笑する。